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トピックス:阿部 典史

世界への架け橋 2007年6月25日

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世界レベルの戦い方がある


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 先行車に詰め寄ると、ズバッという音が聞こえてきそうな激しさで、相手のイン側に自分のマシンをねじ込む。抜かれても食らいつき、隙があろうものならすぐさま抜き返す。自分が前に出たら厳しいブロックラインで相手を封じ込める。  阿部典史が決勝レースで見せるバトルは他のライダーと比べてもひときわシビアだ。レース中、彼が走らせるYZF-R1のまわりだけは、他とは少し違う張り詰めた空気感がある。
 「勝ってもいない僕が言うのはおこがましいけど…」と前置きして、阿部はこう言う。
 「日本人同士だからか、『あまり強引に仕掛けたらまずいかな』という遠慮が見えるんです。でも、世界のバトルはもっとギリギリ。接触だってある。もちろん接触がいいことだなんて思わないけど、日本で最高峰のレースなんだからそれぐらいの厳しさがあってもいい」。
 4戦中2戦で予選2位という好順位についても、「僕は本来、予選が得意なライダーではないんですけどね」と笑いながらこう分析する。
 「それでも僕が上位につけてしまうのは、レースウィーク中の踏ん張りどころを見極められていないライダーが多いからだと思うんです。自分は走ることだけに集中して、後のことはチームスタッフ任せにしているのかな。もっと積極的にミーティングして、ウィーク全体を通しての組み立て方を考えないと」。

全日本のレベルアップに貢献したい


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 阿部は全日本参戦にあたり、「チャンピオン獲得」というレーシングライダーとしての本能に従った目標の他に、「全日本のレベルアップに貢献できれば」と考えている。グランプリ、そしてスーパーバイクと2つの世界選手権を戦って得た経験を積極的にフィードバックしようとしているのだ。
 自分が他の全日本ライダーとは違うレースキャリアを持ち、そのことで注目されていることも十分に自覚している。それは阿部にとって健全なプレッシャーとなって作用している。
 「みんな僕には負けたくないだろうし、僕にだって世界で戦ってきたというプライドがある。そうやってみんなが高い目標に向かって刺激し合うのは、日本のレース界全体にとってすごくいいことだと思う」と言う。競技者としての立ち位置が、今までとは微妙に変化してきている。
 「世界と全日本のレベルが少しでも近付いて、よりハイレベルなレースが見られるようになれば、全日本のファンも増えるんじゃないかって期待してるんです。さらに僕が勝てれば言うことなしなんですが(笑)」。
 10代から世界で戦い続けてきた阿部は、現在31歳とまだ若いが、より大きな視野で物事を考えるようになっていた。

プレッシャーさえ楽しみながら


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 全日本での4戦を終え、「ふがいなかったのは第2戦の鈴鹿」と振り返る。結果は予選8位、決勝8位だった。
 「日本人ライダーのレベルが高いことは、もともと知ってました。日本で世界選手権が行われるたびに、ワイルドカード参戦する日本人ライダーたちがいい成績を残してますから。鈴鹿では、そのことを改めて実感させられたんです」。
 第3戦筑波では3位表彰台に立った。「頑張りと結果がようやく結びついて、やっとスタートラインに立てたかな、と思えました」。
 第4戦オートポリスは、阿部にとって初めて経験するサーキットだ。かなりの苦戦を予想していたが、結果は予選6位、決勝4位。「満足はしていません。でもまったく初めてのコースでトップ争いができたから、まぁ、よしとしようかな」と笑う。
 「僕なんか、レーシングライダーとしてはまだまだ未熟。テストひとつとってもたくさんのことを学んでる。もっともっと高いレベルで走れるライダーになりたい」。
 阿部の口調は明るい。それには理由がある。
 「今年は楽しくレースをしようと心がけてるんです。うまく行かない時でも自分を追い詰めたりしないで、レースを楽しみたい」。

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 世界を転戦している時には、調子が悪いとモーターホームから出てこないことがあった。しかし今年は、そういう時でもあえて人前に出て行こうとしている。
 「ライディングに関しては今まで以上に集中してるし、スタッフとのミーティングも真剣です。でも、その後はできるだけ多くのファンの方たちと触れ合いたいし、自分にできることがあるなら何でもしたい」。
 その前向きさが明るさとなって、ますます人を惹きつける。
 現在のランキングは4番手。トップとのポイント差は7。
 「あと3戦、十分に挽回できる位置にいると思う。調子も上がってきてるし…、残りのレースは全部勝ちたいですね」。
 日本のレース界を背負っての戦いが続く。


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