WMX MX1シーズンレビュー
WMX MX1の2013年シーズンをご紹介します。
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TOP PAGEに戻る苦闘の2013シーズンに光明をもたらした
新鋭・ローランツがランキング12位
2013年、モンスターエナジー・ヤマハ・チームはFIMモトクロス世界選手権MX1に2名の選手を送り込んだ。2011年MX1ランキング2位に入ったスティーブン・フロサードと初めてMX1にフル参戦するベルギーの若手ライダー、ジョエル・ローランツである。前方ストレート吸気・後傾シリンダーという独自のエンジンレイアウト、フューエルインジェクション、アルミ製バイラテラルビームフレーム採用のYZ450Fをベースにモディファイされたファクトリーマシン「YZ450FM」を駆り、意欲的にシーズンを戦い抜いたヤマハライダーたちの足跡を振り返る。
初のスーパーファイナル方式、ナイトレース
そして暑さとの戦いに戸惑ったシリーズ序盤
2013年のモトクロス世界選手権(WMX)MX1シリーズは、中東カタールGPで幕を開けた。わだちができやすい砂漠に作られたサーキット、夜間レース、MX2クラスとの混走によるWMX初の「スーパーファイナル」方式導入(ヨーロッパ以外の3大会限定)など、何もかもが例年と大きく異なる開幕戦となった。
モンスターエナジー・ヤマハの2人も、初めての体験に戸惑いながら奮戦。フロサードはレース1で転倒を喫したものの、続くスーパーファイナルで8位に順位を上げ、総合9位となった。「懸命に追い上げたんだけど、9位が精一杯だった。もちろん満足できる結果ではないが、シーズンはとても長いし、レースを重ねていけば良くなると信じているよ」
一方、ハイパワーな450ccマシンを激しいコンペティションのなかで操ることに慣れなければならないローランツは、2つのレースをそれぞれ15位と12位でフィニッシュ。MX1デビュー戦を総合13位で終えた。
続く第2戦は初開催のタイGP。こちらもスーパーファイナルが夜間レースとなったが、カタールとは違い、気温30℃をゆうに超える高温多湿の厳しいコンディション。多くのライダーがこの環境に苦しめられるなか、大きな躍進を見せたのがローランツだった。レース1を10位でフィニッシュするとスーパーファイナルでも7位に進出し、総合7位を獲得。「今はまだ75%くらいの状態だから、7位というのは悪くない結果だと思う。でも馴染んでくれば、もっといい成績が出せるはずさ」と明るい笑顔で話した。
一方、レース前に体調を崩したフロサードは苦しい戦いを強いられながら、2つのレースを9位・8位で終え、総合成績ではチームメイトのローランツに続く8位となった。
その後、MX1シリーズはヨーロッパへと舞台を移し、第3戦オランダGPを迎えたが、ここでチームに暗雲が漂う。レース前の練習走行でフロサードが他のライダーと接触。左足掌骨を痛め、決勝レース出場を断念せざるを得なくなったのだ。そのうえローランツも振るわず、レース1では小さなミスを繰り返して14位。レース2では10位に入ったものの、総合11位と平凡な結果に終わった。
昨年に続くフロサードの長期離脱
新鋭・ローランツの孤軍奮闘
なんとか巻き返しをはかるべくイタリア・トレンティーノGPに乗り込んだモンスターエナジー・ヤマハ・チームだったが、負傷が癒えないフロサードはプラクティスで数ラップ試みただけで以後の走行を断念。その後およそ2ヵ月間、6月後半まで長期欠場を余儀なくされる事態となった。しかもこのレース、ローランツまでが予選で転倒して肩を痛め、2人のライダーがそろって欠場という結果に終わり、またしてもチームの願いを叶えることはできなかった。
それでもフロサードの穴を埋めようと、新鋭・ローランツは孤軍奮闘。なかなかトップ10以内のフィニッシュに至らないレースが続いたが、45,000人の大観衆を集めた第7戦ブラジルGPで好走を見せる。ウェットコンディションのなか、レース1を10位で終えたローランツは、続くスーパーファイナルでMX2世界チャンピオンのJ・ハーリングスと激しいバトルを展開。12位でフィニッシュし、総合9位に入った。
しかし6月最後のレース、第10戦スウェーデンGPで待望のフロサードが戦列に復帰。いきなり予選ポールポジションを奪い、カムバックを強烈に印象付けた。決勝はレース1で8位、レース2で転倒・リタイアという結果に終わったものの、フロサードは「あまり良いフィーリングではなかったけど、自分のスピードには満足しているし、一歩一歩進歩して行くと思う」と明るい表情で語り、体調の回復ぶりに自信を見せた。
ところが、そんな期待感も束の間。続くラトビアGPで再びフロサードを不運が襲う。土曜日の予選で他選手と絡んで左手人差し指を脱臼。決勝は最後位からのスタートとなり、レース1、レース2とも完走はかなわず、リタイアに終わった。さらに第12戦フィンランドGPの予選で足を強打。今シーズンの残りをすべて棒に振ることになってしまった。
だがドイツGPでは、フロサードに代わって新加入した23歳のフランス人ライダー、ミルコ・ポティゼクが躍動。レース1で10位に入ると、レース2では素晴らしいスタートを見せて2位に進出。経験不足からすぐ集団に飲み込まれ、大きくポジションを落としたものの11位まで挽回し、総合9位でデビュー戦を終えた。また、これに刺激を受けたローランツも体力の限りマシンをプッシュ。レース1で6位、レース2では軽い転倒を喫しながら9位に入り、シーズンベストとなる総合7位を獲得した。
このローランツとポティゼクの新人コンビは、その後もチェコGP、ベルギーGP、イギリスGPと競い合うように奮闘を続け、少しずつだが着実にシリーズポイントと経験値を蓄積。将来性を感じさせる輝きを放った。
プライベートチーム所属のシンプソンが
市販型YZ450FでMX1初優勝を獲得
モンスターエナジー・チームの総力を挙げた戦いもむなしく、上位進出さえままならないヤマハだったが、シーズン中盤、プライベートチームでひとつの動きがあった。前半を他社製マシンで戦っていたJKレーシングのショーン・シンプソンが、第10戦から市販型YZ450Fに乗り換えていたのだ。彼は昨年ヤマハファクトリーの一角を占めていたライダーで、MX1参戦3年目。新しいマシンに馴染んだ終盤のチェコ、ベルギー、イギリスでは、ファクトリーマシンに乗るローランツやポティゼクを上回るパフォーマンスを発揮した。
そして迎えたオランダ・リーロップの最終戦、レース1。みごとなスタートダッシュでトップグループにつけたシンプソンは、ポイントリーダーのカイローリと熾烈なトップ争いを展開。最後は残り2周でカイローリが転倒し、歓喜のMX1初優勝を飾った。さらにレース2でも好スタートを切ったシンプソンは、途中転倒して8位までポジションダウン。しかし、再び追い上げて3位となり、総合優勝。「シーズン途中からバイクをヤマハに変更したけど、セットアップをどうすればよいか正確に理解していた。今日は自分のキャリアで間違いなく最高の日だよ!」と満面の笑顔を輝かせた。
またローランツも、最終戦はレース1で8位と健闘。シリーズポイントを265点に伸ばし、ランキング12位で2013シーズンを終えた。負傷による長期欠場を強いられたフロサードは22位、代わって途中加入したポティゼクは20位。この最終戦を含め、シーズン終盤にポイントを積み重ねたシンプソンはランキング9位となった。