本文へ進みます

技報【バックナンバー】

ヤマハ発動機では研究開発の成果や製品を支える技術をご紹介するために、年1回(12月)、技報を発行しております。
本ページでは、PDFファイルのダウンロード・閲覧ができます。(現在、冊子の配布はいたしておりませんのでご了承ください。)
YAMAHA MOTOR TECHNICAL REVIEW
技報No.42 表紙

ヤマハ発動機 技報 No.42(2006年12月)

特集:挑戦

特集

徒手空拳の技術 PDF

古沢 政生

いきなり意味不明の表題になっているのは、何も筆者が体育会系出身だから、という訳ではありません。技術の道具を使えない場合でも、素手で戦えるように、日頃から技術者として鍛錬を積む必要性があることを端的に表現したかったからです。 最近、筆者はとても簡単に人の名前を忘れるようになりました。確実に老人力がついてきたためです。しかし、漢字を書けなくなったり、暗算ができなくなっているのは、このためだけではありません。その昔、安価な電卓が普及し始めた昭和後期頃の漫画に、こんなシーンがありました。小学校の教室で先生がある計算問題を出したところ、指名された生徒はおもむろに机の下に隠してある電卓で計算した後、得意ぬ顔で「答えは〇×です。」と答えます。先生も質問している間に机の下の電卓で計算していて、「良くできました。」と褒めています。この漫画の作者は、まさしくこの時、人間が便利な道具を手にすることによって、実はだんだん利口ではなくなっていくことを見抜いていたのではないでしょうか。
冒頭を表示
技報No.42 特集2 説明画像

WVのレース・スポーツ活動 PDF

深町 達也

20年前、1986年に発表された、世界初のシットダウンタイプのWater Vehicle(以下、WV)「WaveRunner 500」は、日常では味わえない爽快感や楽しさを提供すると同時に、多くの人々が気楽に楽しめる乗り物として、爆発的な大ヒットとなった。ヤマハ発動機(以下、当社)固有の小型エンジン技術と艇体技術が融合したWVは、その後、ユーザーニーズ、また地域社会や自然環境との融和を、様々な技術革新で具現化してきた。2002年に業界初の4ストロークエンジンを搭載したモデル「FX」は、主要市場の米国を中心にファミリーの余暇を彩るツールとして活躍している。一方でWVは水上のモーターサイクルともいうべき機動力とスピード感を味わえるスポーツ性の高い乗り物である。WVを操縦する多くの人が、より爽快に、より華麗に乗りこなしたいと思うのは自然であり、業界の発展と共にWVを用いたスポーツも様々な形態で楽しまれている。それは、勝利の欲求を満足させるレースの形をとったり、また参加型のスポーツであったりする。本稿では、WVにまつわるスポーツ活動を、いくつかのトピックによりご紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集3 説明画像

スノークロス・レースへの挑戦 PDF

中野 太久二

ヤマハ発動機(株)RVカンパニーが、最初にスノーモビル市場に4ストローク4気筒エンジン搭載スポーツモデルを投入したのは、2003年モデルからである。その後、2005年モデルで3気筒、2007年モデルで2気筒モデルを発表し、計画していた4ストロークエンジン搭載スノーモビルラインナップが出揃った。いまだ2ストロークエンジン搭載モデルが全盛のスノーモビル市場において、レース活動、地道な試乗会の開催、排ガス等環境問題の認知の高まりにより、当社の4ストロークモデルの注目度は著しく向上している。スノーモービルは、新深雪、極低温、標高差(海抜0mから3,000m地域まで)、地域性(地球のスノーベルト地帯全般)などの広範な条件下での使用が可能なことと、レクリエーショナルな要素の両方を求められる商品である。この商品に4ストロークエンジンを搭載すること自体、挑戦であった。そのハードルをクリアし、一定の成果が見えてきた今、さらに当社のスノーモビルを成長させるために必要なことは何か、そんな問いかけがきっかけでスタートした新たな挑戦『スノークロス・レースへの挑戦』について紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集4 説明画像

「TEAM 茶LLENGER」6度目の挑戦~2006鈴鹿8時間耐久ロードレース参戦記~ PDF

目黒 克治

TEAM 茶LLENGERは、創輝H・S株式会社の社内サークルを原点として掛川市、沼津市民が中心になって活動している市民レーシングチームである。2001年より、世界選手権である鈴鹿8時間耐久ロードレースへの参戦を続けている。このチームは、創輝株式会社(現・ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社、創輝H・S株式会社)の「GS(Genki Soqi)活動」という社内サークル活動の一環として誕生した。その目的は、社内の活性化と人材育成、サスペンションメーカーとしての技術力の向上、そして地域社会や関連企業との結束を深めることである。当初、レースを運営するメンバーは、社内公募により集まったメカニック、スタッフを含め、全員が初めてレースに参加するという素人集団であった。マシン、設備は当然のこと、整備のためのツールを揃えるところからはじめて、いざサーキットに乗り込むが、右も左も分からず、「何をしたらよいのやら…」という具合。我々が支援する立場のライダーに、指導してもらうという申し訳ない状況となってしまった。ところが、レースを終えてみれば、初参戦で7位。翌年には5位という成績を残した。来年は表彰台か?と期待されたが、その後、転倒による2回のリタイヤ。昨年も転倒によるマシンダメージが大きく、1時間の修復作業後に再スタートできたが、50位完走という結果に終わってしまった。耐久レースを知れば知るほど、トラブルなしで完走することの難しさを痛感させられる結果となった。レースの結果だけを求めるチームではないが、「上位完走」という欲が出すぎた結果かもしれない。その様な中で、2006年2月、6度目の参戦に向けて、再び、TEAM 茶LLENGERの活動が始まった。
冒頭を表示
技報No.42 特集5 説明画像

MotoGP車両開発~華やかな舞台の裏で続けられる挑戦 PDF

鷲見 崇宏

MotoGPとは、4サイクル990cm3のエンジンを搭載したレース専用設計の車両を用いて行われる、二輪レースの最高峰カテゴリーである。日本国内での人気は四輪のF1に比べ限られている印象があるが、海外(特に欧州)では老若男女を問わず高い人気を誇っている。ヤマハ発動機(株)は創業以来、技術開発と、そのアピールの場として積極的なレース活動を継続しており、現在はMotoGPに高いプライオリティーをもって取組んでいる。しかしながら、世界中のサーキットで繰り広げられる華やかな舞台の裏側で、日々続けられている車両の開発業務については、機密等の理由から人目に触れる機会は少ない。ここでは、レース車両特有の開発プロセスと、レース運営を支えるサポート業務についてその背景と実状の一端を紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集6 説明画像

モトクロスレースへの挑戦 PDF

福田 高義/野本 達夫/高橋 大輔

モトクロスとは、未舗装の自然な原野をオフロードバイクで周回し、速さを争う欧州発祥の競技である。この競技の魅力は、大きなジャンプやスライド走行で、バイクの秘めたる可能性を発見できること、そして、観戦者はコースのすぐ脇という観戦形態により、その迫力や臨場感、大地のにおいを体感できること、といえる。現在、世界の各地でモトクロスのレースが開催されている。モトクロス発祥の地ヨーロッパを中心に開催されているモトクロス世界選手権には、MX1(2ストローク250cm3以下または4ストローク450cm3以下)、MX2(2ストローク125cm3以下または4ストローク250cm3以下)、MX3(2ストローク500cm3以下または4ストローク650cm3以下)のクラスがある。その中でも最高峰であるMX1クラスでは、他の追随を許さない活躍をしているステファン・エバーツ選手とYZ450FM。アメリカ・日本でも多くのライダーがヤマハのモトクロッサーを駆り、大活躍中である。今回の特集では、オートバイの原点、モトクロスレースを通じて活動している、1新しい技術への挑戦=先行開発、2ライダーのパフォーマンスを上げる新しい挑戦について、皆さんに紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集7 説明画像 「ソーラー&人力ボートレース全日本選手権大会2006」への挑戦(MP4:5.9MB)

人力ボート世界最速への挑戦~COGITO(コギト)チーム~ PDF

柳原 序/深町 得三/上村 正毅/本山 孝

COGITOチームが人力ボートレースに参加して、今年で15年になる。大会当初に比べると、その規模が小さくなっているのが残念だが、最近では、大学、高専、高校の学生チームが毎年がんばって新艇を作り、あるいは改良しながら、意欲的に参加するようになってきている。他に、ファミリーチームや企業有志チームも、レースを楽しみながら参加を続けており、大会が形作られている。COGITOチームもこの中にあって息の長い活動を続け、参加当初からトップクラスの成績をとりつづけている。これは、チームメンバーの人力ボートに対する思い入れの表われ、と自負している。ところで、スピードを競う人力ボートではあるが、この数年、その記録の伸びが頭打ちとなっている。そこで、COGITOチームとして、さらなる改良を加えた世界最速の人力ボートを作り、世界記録を更新することを目標に、人力ボートレースへ挑戦したので、経緯を含め、紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集8 説明画像

人力飛行機による記録挑戦への軌跡 PDF

鈴木 正人

毎年夏になるとテレビで放映される鳥人間コンテストをご存知と思う。「琵琶湖に設置された高さ10mの台の上から自作の人力飛行機でどこまで遠くへ飛べるか?」の簡単なルールのもと開かれる大会で、今年で30回を迎える人気長寿番組である。テレビの映像の中ではバラエティー番組として製作されているため、大会の様子は面白おかしく表現され、陰に隠された記録達成に至るまでの足跡を紹介されることは、ほとんどない。ここでは、そこに至るまでのチームの変遷と技術的な視点で見た内容を簡単に紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集9 説明画像

ジュビロ磐田の完全制覇を支えたフィジカルトレーニング PDF

菅野 淳

2002シーズン、ジュビロ磐田は3度目の年間チャンピオンという名を歴史に刻んだだけでなく、それまでJリーグに所属するどのクラブも成し得なかったJリーグ完全制覇という偉業を達成した。当時のJリーグでは、ひとつのシーズンを1stステージと2ndステージに分け、それぞれの優勝チームがチャンピオンシップを戦って年間チャンピオンを決定する方式をとっていた。完全制覇とは、その両ステージで優勝することである。ジュビロ磐田が完全制覇を達成するまでの道のりは、決して平坦ではなかった。2001シーズン、ジュビロ磐田はノータイトルでシーズンを終えた。それまで1997、1999シーズンのチャンピオンシップを初めとして、1998/99アジアクラブ選手権の優勝など、それまで数多くのタイトルを獲ってきたジュビロ磐田にとって、ノータイトルでシーズンを終えるという結果は、他のなによりも耐えがたい屈辱だった。鹿島アントラーズとの間で争われたチャンピオンシップでの敗戦を原動力に、2002シーズンに行ったフィジカルトレーニングについて報告する。
冒頭を表示
技報No.42 特集10 説明画像

アンデス縦断タンデムツーリング PDF

ヤマハ発動機OB 高田 典男

私の趣味は中南米音楽を聞くことである。20代のはじめにラジオから流れていたトリオロスパンチョスの「ベサメムーチョ」を聞き、私にピッタリの音楽だと確信した。以来、私はすっかり中南米音楽ファンになってしまった。中南米各国のラテン音楽演奏家が来日すると地元浜松での公演はもちろんのこと、遠く名古屋にまで足を伸ばしていた。そして、いつかは中南米へ行き、生の音楽をその国で思い切り聞きたいと考えるようになっていた。そして、その交通手段は、できればスケジュールやルートについて、何人にも制約されることなく自由気ままに行ける自前の交通手段がよいと考えていた。一方、私のもうひとつの趣味がバイクである。単にツーリングをすることはもちろんであるが、使い勝手向上のための改造をして、それを確かめるためのツーリングが楽しみなのである。また、私は、あのインカ帝国があったアンデス地方の景観が大好きでもある。結果として私の3つの趣味をドッキングさせたのが、今回のアンデス縦断タンデムツーリングなのである。旅行会社催行ツアーでは日程も短く、しかも音楽を聞くためのツアーなんて聞いたことがない。音楽を聞き、アンデスの景色を楽しむとなると、充分に時間をかけることが必要。そこで私達の旅のスタイルは「ゆっくり、どっぷり」となる。
冒頭を表示
技報No.42 特集11 説明画像 1度目の世界一周(MP4:5MB) 2度目の世界一周(MP4:12MB)

二輪車による2度の世界一周への挑戦 PDF

ヤマハ発動機OB 吉田 滋

私は、23歳(1965年)と、60歳(2002年)の2度にわたり、二輪車による世界一周の旅に挑戦した。本稿では、2度の世界一周を思い立ったきっかけ、旅の装備、ルートと共に、使用した車両について、紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 特集12 説明画像

クルーレス・ソーラーボート・レース PDF

藤田 学

(株)ワイ・イー・シー(以下、当社)には、野球、サッカー、バレーボールなど、様々なサークルが存在する。その中でも異色なのが、我々、「クルーレス・ソーラーボート」サークル(以下、当サークル)であろう。なぜ、異色なのか?それは、当サークルが、「技術」に主眼を置いているからである。これまで、当サークルでは、コンピューター・プログラミングによる船の自律航行制御を中心に技術開発を行ってきた。しかし、見方を変えると、当社はエンジニアリング会社であり、エンジニアの集団であるから、技術指向のサークルが発足したことは、自然な成り行きと言えなくもない。
冒頭を表示
技報No.42 特集13 説明画像

水泳競技におけるパフォーマンス測定装置~SSW(Swim Stroke Watcher®)~開発の経緯 PDF

矢倉 裕

1999年11月、福岡大学七隅キャンパスにて開催された第3回日本水泳科学研究会において、私は「第9回世界水泳選手権福岡大会」の会場に設置される世界初の特設(テンポラリー)プールの概要と意義について発表する機会を得、初めて国内における「水泳」の学術的交流の場に参加した。その折、当時の財団法人日本水泳連盟医・科学委員会の委員長、宮下充正東洋英和女学院大学教授(現・東京大学名誉教授、放送大学教授)から、競泳時の泳者のパフォーマンスについて(当時の先生の言葉通りに言うと)、「競技時、8レーン全てのスイマーのストロークをリアルタイムに、かつコンティニュアス(連続的)に捕らえ、解析し、瞬時に表示することのできる装置を開発できんか?」という相談を受けた。私としてはよく理解できない内容であったが、いろんな質問をする中で、「現状では、競泳の正確な情報は、コース両端にあるタッチ板で記録されるタイム以外は存在しない。もし、タッチ板間で行われる行動を、きちんと解析することができれば、選手の育成はもとより、水泳の世界全般で画期的な成果が生れるんだ。」という説明に、なんとなく納得してしまった。「今ではいろんな観測技術もあり、最悪、たくさんのカメラで捕まえれば何とかなるかも。」という程度の軽い感じで、「じゃ、やってみましょう。」と、その場で答えてしまった。この様な立ち話から、SSW(Swim Stroke Watcher®)の技術開発が始まったが、実際の検討に入った瞬間から課題の壁が連続した。当初の1年間は試行錯誤の繰り返しとなり、見通しが立たないまま時間が過ぎていった。
冒頭を表示
製品紹介
技報No.42 製品紹介1 説明画像

車イス用電動ユニット「JWX-1」と軽量型電動車イス「JWアクティブ」 PDF

谷垣 聡

ヤマハ発動機は、産業用ロボットや電動ハイブリッド自転車で培った高度な制御技術や駆動技術などを応用し、高齢化社会に対応できる商品のひとつとして、車イス用電動ユニット「JW-Ⅰ」を1995年に市場に投入した。JW-Ⅰは発売以来、手動兼用型車イス市場で常にトップシェアを維持し、多くの人々に愛用されている。今回、そのJW-Ⅰを10年ぶりにフルモデルチェンジし、車イス用電動ユニット「JWX-1」を開発した。また、JWX-1を車体に搭載した電動車イス「JWアクティブ」を同時に開発したので、紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 製品紹介2 説明画像 ユニットプール「きらきら」市場モニター風景(MP4:2.4MB)

ユニットプール「きらきら」 PDF

前田 文雅/増田 尚士

幼稚園・保育園向け組立式プールは、夏になったら組み立てて設置し、オフシーズンは分解して倉庫や園庭の片隅にコンパクトに収納・保管することができる。このコンセプトが、敷地の有効利用を求めるユーザー層に支持され、1984年の発売以来、好評を得てきた。今回、水密性の改良や使い勝手の向上などを織り込んで、17年ぶりにフルモデルチェンジした「ユニットプールきらきら」の紹介をする。
冒頭を表示
技報No.42 製品紹介3 説明画像

5人乗り電動ゴルフカー「ターフジョイG31E」 PDF

雄谷 誠祐/吉井 芳徳

国内には約2,400か所のゴルフ場があり、現在、このうち90%のゴルフコースで乗用ゴルフカー(以下GC)を導入して頂いている。当初、乗用GCは、ゴルフ場の「集客」と「経営合理化」の手段として導入され普及してきたが、最近では、これに加えて、「GC運用効率の向上」、「環境への配慮」、「より気軽にゴルフを楽しむ人が増えていること」に対応した商品ラインナップが求められるようになってきた。こうした背景から、ヤマハ発動機(以下、YMC)は2005年にG30系GC(ヤマハ発動機技報No.39に掲載)を市場に投入し、お客様から高い支持を頂いている。今回、さらに多様化する顧客のニーズに応えるべく、新5人乗り電動GC「ターフジョイG31E」を開発したので紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 製品紹介4 説明画像 VOX XF50走行シーン(MP4:4.22MB)

2006年スクーター「VOX XF50」 PDF

徳永 良一/佐藤 公彦/野村 靖/西津 征男/平野 文夫/脇村 誠/鈴木 雅巳

2005年、国内二輪車の新車販売台数は74万台であり、その中で6割強を占めるのが原付一種となっている。原付一種の主流はスクーターであり、ヤマハ発動機は、ファッションスクーター「ビーノ XC50」、スタンダードスクーター「ジョグ CV50」、ミセス向けの「ジョグポシェ YV50H」、手頃価格の「BJ YL50」、エレクトリックコミューター「Passol-L」、「EC-02」などをラインナップし、幅広いお客様から支持を得ている。こうした中、近年は速度や出力等の性能よりも、「個性的なスタイリング」、「ゆったり快適な乗車ポジション」、「クラスを超えた余裕の収納スペース」、「肩肘張らない存在感」といった要素を求めるヤングトレンドが著しい。この傾向はビッグスクーター(軽二輪が中心)のニーズと同じ傾向である。こうしたニーズに応えるため、スクーター「VOX XF50」を新たに開発したので、紹介する。
冒頭を表示
技術紹介
技報No.42 技術紹介1 説明画像

外装のデザイン自由度と耐候性を両立する新技術「フィルム・オン・グラフィックス」 PDF

両角 直洋/鈴木 康男

顧客ニーズの多様化が進む中、輸送機器の分野においても、よりファッション性が高く、質感の高い商品を望む声が高まっている。二輪車においてもこの傾向は強まっており、特に外装部品には多色・多彩なデザインやグラデーション表現等が多用されるようになってきている。しかし、このような要求に対して、従来の塗装とグラフィックステープを使った生産手法では、表現できる色やデザインが限界に近づきつつあるとともに、工程が増えてしまうという課題がある。また、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)削減の環境対応の要求も強まっている。一方、絵柄印刷したフィルムを用いる表面加工技術は、塗装に比べ多彩で複雑なデザイン表現が可能とされ、乗用車の内装、デジタル機器、携帯電話などに実用化されてきている。しかし、外装部品への適用はホイールキャップ等、単純形状の小物部品に限られていた。さらに、二輪車の外装部品に適用するためには、屋外での使用に耐える耐候性や耐傷付き性を満足し、かつ三次元曲面の樹脂や金属部品へ精度良く、しかも端部裏側までフィルムを巻き込ませて密着させることが必要となる。ヤマハ発動機では、二輪車外装部品に必要な機能を満足し、かつ塗装では不可能なレベルの意匠表現を可能にする新技術「フィルム・オン・グラフィックス(Film-on Graphics)」を開発したので、紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 技術紹介2 説明画像

車々間通信HMIシステムと二輪車用エアバッグシステムの開発 PDF

内田 吉陽/般若 洋征

ヤマハ発動機株式会社は、国土交通省が推進しているASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)プロジェクトの第2期(1996-2000)より参画している。その第3期(2001-2005、以下、ASV-3)が2006年3月に終了した。ASV-3にて開発してきた主な予防安全技術には路車間通信、車々間通信等の通信技術を用いた情報提供、後方視界補助、夜間ライティングシステム等がある。また、衝突安全技術には、衝突時のライダーの被害軽減を目的とするエアバッグシステムがある。今回は、これらの安全技術の中で、本年5月に開催された「人とくるまのテクノロジー展」に出展した車々間通信HMI(Human Machine Interface)システムと二輪車用エアバッグシステムについて紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 技術紹介3 説明画像 YCC-S走行時の動作(MP4:9.2MB)

モーターサイクル用自動化マニュアルトランスミッションの開発 PDF

小杉 誠/善野 徹

日本国内では、2000年頃より、乗用車の新車販売台数におけるオートマチック車の比率が90%を超えるようになった。欧州の乗用車市場では、高効率/低燃費と低コストというニーズからマニュアルトランスミッション(以下、MT)車が主流であるが、イージードライブ化への要求の高まりから、AT(Automatic Transmission:自動変速機)やCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)に加えて、従来のMTをベースに発進・変速動作を自動化した変速システムが登場し、その比率を高めつつある。一方、二輪車においても、運転操作の簡便さからゴムベルト式CVTを用いた大型スクーターが人気を博している。大排気量モデルでは、まだ従来型のMT車が主流であるが、イージーライディングへの要求は年々高まりを見せている。その要求に対するヤマハ発動機からの回答として、近年、飛躍的に進歩を遂げた電子制御技術を利用して電動式アクチュエーターによるクラッチ・シフト操作の自動化を図った「YCC-S(ヤマハ・チップ・コントロールド・シフト)」を開発した。本稿では、イージーライディングと伝達効率、スポーツ性の両立を目指したモーターサイクル用自動化MTシステム「YCC-S」の開発について紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 技術紹介4 説明画像 二輪車用電子制御スロットルYCC-Tのシステム動作(MP4:2.4MB)

二輪車用電子制御スロットル「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle)」 PDF

松田 岳志

今回、ヤマハ発動機は、欧州・北米向けスーパースポーツモデルYZF-R6(2006年モデル)用に、電子制御スロットル「YCC-T(Yamaha Chip Controlled Throttle)」を開発した。YCC-Tとは、ライダーのアクセルグリップ操作をセンサーで検出し、DCモーターでスロットルバルブを駆動する電子制御スロットルシステムである。これは、制御技術で人機官能の世界をより高めようという当社の「G.E.N.I.C.H.」思想具現化のひとつであり、量産二輪車への搭載は、世界初となる。スーパースポーツモデルは、そのユーザーが市販車を用いてレースへ参戦するなど、年々高いエンジン性能が求められている。YZF-R6(2006年モデル)では、高回転・高出力エンジンを実現するために短い吸気管長を採用しているが、YCC-Tにより、低中速域までを含めたスムースなトルク特性を実現し、ドライバビリティーを向上させることができた。また、欧州の厳しい排ガス規制にも対応することができた。本稿では、そのYCC-Tのシステムについて紹介する。
冒頭を表示
技報No.42 技術紹介5 説明画像 FMフォーミングによるスプライン塑性加工(MP4:2.2MB)

FMフォーミングによるスプライン塑性加工の開発 PDF

奥村 英之/荒川 泰行

加工とは、材料や素材などの原材料を、必要とする寸法、形状、性質へ変えることである。加工方法の一つである除去加工(機械加工)は、その名前が示すとおり、素形材表面を削り落として除去する訳で、切り粉(切りくず)が発生し、地球環境保全面や比較的長い加工時間によるコスト高という、本質的な問題がある。究極のモノづくりの姿、素形材=製品(ネットシェイプ化)が得られるのであれば、除去加工は不要となり、製造コストの低減、および切り粉の全廃が可能となる。塑性加工は、これらを達成することができる加工方法の一つで、現実的には除去加工の完全排除は困難であるが、かなりのところまで減らすことができる加工である。船外機用シャフト(ドライブ・シャフト、プロペラ・シャフト)のネットシェイプ化を最終目的とし、第1ステップとして、スプライン部加工をホブによる除去加工からFM(Frequency Modulated)フォーミングによる塑性加工へ変更する開発を行ったので紹介する。
冒頭を表示
技術論文
技報No.42 技術論文1 説明画像

筒内直噴S.I.エンジンにおける混合気形成とノッキングについての考察 PDF

沖 秀樹/鈴木 裕一/黒澤 伸一

燃焼室内の混合気分布と燃焼、ノッキングの関係について、筒内直噴インジェクターの噴射方向を変更した場合の単気筒エンジンテスト、LIF(laser-induced fluorescence:レーザー誘起蛍光法)計測、CFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)計算を実施した。その結果、比較的均一な混合気分布を得られると考えられる吸気行程噴射の場合であっても、点火タイミング付近の燃焼室内混合気濃度には不均一性が残っており、筒内直噴インジェクターの噴射方向が燃焼、ノッキングに強い影響を及ぼすことが分かった。
冒頭を表示
※このウェブサイトにより提供を受けた技術(プログラムを含む)を非居住者へ提供、または引渡しを受けた貨物を輸出する場合は、「外国為替及び外国貿易法」等の輸出管理法令および米国の輸出管理法令を遵守してください。
ページ
先頭へ