Yamaha Journey Vol.16
ヤマハ スーパーテネレに乗るフレデリックとアルドによる、フランスからオーストラリアまでのツーリング体験談です。
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世界の果てまで
フレデリック&アルド
スーパーテネレ
#02 南アジア・東南アジア編:デリーの喧騒。
ヒマラヤ山脈とエベレストの雄大な景観。
近代都市バンコクを目指して。
デリー ー バンコク
フレデリックとアルドがバイクに乗って地球を走破する一大アドベンチャー。フランスのパリからオーストラリアのシドニーまで、その距離なんと3万キロ。壮大な旅の第2章では、刺激に満ちたデリーをくぐり抜け、ネパールのヒマラヤ山脈に魅せられたふたり。子供たちも合流し、タイの島では、つかの間の休息を楽しんだようです。
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リシケーシュの吊り橋。
リシケーシュ、 インド
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2015年のネパール地震で倒壊した寺院の修復にあたる作業員。
ゴルカ郡、 ネパール
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ヒマラヤ山脈の麓に位置するカトマンズの遠景。
ヒマラヤ山脈、ネパール
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タイランド湾の西側沖に位置するタオ島。
タオ島、タイ
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デリーの喧騒
中央アジアの果てしない広大な平原とはうってかわって、混沌とした活気に満ちあふれるデリー。この街で誰かに会うことはほとんどなく、西洋人を見かけることも滅多にありませんでした。ビシュケクからインドまでは「スーパーテネレ」を飛行機で運ぶことにしました。中国でのツーリングは費用がかさみ、困難な旅になるので、その行程を避けたかったからです。税関手続きで数日待ったあと、ようやくバイクを受け取ることができました。そして走り抜けたのは人口2千万人を超える大都市。そこでは、けたたましくクラクションが鳴り響き、砂嵐が舞う一方で、きらびやかなサリーをまとった女性たちが行き交っていました。ほこりの舞う裏通りで何度か道に迷った末、ようやく到着した場所がパハールガンジです。この丘陵地帯の東側には、バックパッカーやタイダイの服を着たヒッピー、そして、安宿を探す旅行者であふれかえる駅があります。パハールガンジでは、バイクを停めて地元の小さなレストランを目指すことにしました。そこで食べたのが、ヴィンダルー(カレー料理の一種)です。これまでに味わった中でトップクラスの辛さでしたが、これがとてもおいしくて、そのあとに飲んだ極上のバナナラッシーがヒリヒリと灼け付く辛さを優しく和らげてくれました。
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その翌日には感動の出来事がありました。息子のヴァレンティンがデリー空港に到着したのです。私たちがパリを出発してから6週間ぶりの再会です。11歳の末っ子であるヴァレンティンは私たちと久しぶりに会って泣いていました。
翌朝、広大なガンジス川のほとりにある聖なる街、リシケーシュを目指して北西に向かいます。フレデリックとヴァレンティンはバスで移動。私はその後ろをバイクで追走です。季節はモンスーンの時期。降りしきる雨の中、深くわだちのできた道路は雨水に覆われていて、運転には一苦労しましたが、安定性と軽快さを兼ね備えた「スーパーテネレ」に乗って無事に走破することができました。リシケーシュには、アシュラムの名で知られる「ヨガの精神的な修行をする場所」
があちこちにあります。聖なるガンジス川ではお香の煙が水面上に立ち上がる中、ヒンズー教の巡礼者たちが沐浴をしていました。街のいたるところで見かけたのがサルです。ガンジス川に架けられた鉄の吊り橋ラクシュマン・ジューラをつたって多くのサルが街にやってきます。道行く人に向かって歯をむき出しにして威嚇しながら、食べ物やゴミを盗んでいました。
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ネパールの大地を闊歩するゾウ
数日後、ネパールとの国境を目指して走行。左手にはヒマラヤ山脈と雪を頂く峰々がそびえ立ちます。国境の直前で食事をするために立ち寄った場所では、輝くような笑顔を浮かべた元気いっぱいの子供たちと出会いました。私たちと「スーパーテネレ」に興味津々です。
ネパールの人たちはとてもフレンドリーで歓迎的でした。地元ホテルの従業員から許可をもらい、小さな倉庫で寝させてもらうことができました。しかもその従業員は少しだけフランス語を話すことができて、毎晩、新鮮な果物とお米を私たちに持ってきてくれたのです。ネパールには大きな山しかないんだろうと思っていましたが、到着した翌日にヴァレンティンとフレデリックが公園を散策していると、驚くことに、緑豊かな森でサイやトラ、それに、ゾウが悠々と闊歩していました。そこは亜熱帯のオアシスでした。ヴァレンティンとフレデリックは川を泳いで火照った体を冷やしたあと、地元の子供たちと一緒に遊んでいました。なんと、ネパールにはゾウを育てる場所があり、赤ちゃんゾウをペットとして飼うことができます。衝撃の事実にヴァレンティンは驚きを隠せません。
ポカラに向けて出発したのは、それから数日後でした。フレデリックはバイクをレンタルして、私と一緒に走行することに。「スーパーテネレ」の後部座席によじ登ったバレンティンは、バイクが大きな曲がり道に差し掛かるたびに大興奮。降り注ぐ陽射しの中で色鮮やかに輝く景色を見たときにはとても感動していました。しっかりと舗装された路面は緑豊かな渓谷へと続いていきます。田んぼやバナナの木を眺めながら大きく曲がりくねった道を無事に走破。その日の夜はポカラで過ごすことにしました。ポカラはとても賑やかな街で、レストランはもちろん、アクティビティも充実していて、ヒマラヤ山脈でハンググライダーを体験することができます。翌日、ポカラを出発。山を登っていくにつれ、道がしだいに狭くなり、細かなカーブが増えていきます。目指すはネパールの首都カトマンズです。
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雪に覆われたヒマラヤの頂
山岳地帯の盆地に位置するカトマンズは気温が高く、建物と人の密集する街です。私たちが向かったのはダルバール広場。マッラ王とシャー王の宮廷と古代建築で知られ、ユネスコの世界遺産として登録されているエリアです。その歴史は14世紀にまでさかのぼります。ただ私たちが訪れたときはまだ、2015年4月のネパール地震から3か月しか経っていません。かつての麗しい宮廷は瓦礫の山と化していました。瓦礫処理にあたっていたネパールの人たちはそんな状況でも気丈に振る舞い、私たちを喜んで迎えてくれました。「カトマンズはもう安全だとフランスの人たちに伝えてほしい。観光客が来てくれれば、国を立て直すことができるんだ」と彼らのひとりが言っていました。
ネパールでの最大の目的はこの目でエベレストを見ること。この目的を達成すべく、ネパール滞在の最後の数日はナガルコットで過ごすことに。ナガルコットは、カトマンズから東に32km、ヒマラヤ山脈の中腹2500m地点にある村です。宿泊先の小さなホテルで見た日没の光景には心を奪われました。雪に覆われた高く切り立つ峰々は今にも天に届きそうです。移ろう夕日の中、黄金に輝く景色。その中で遥か高くそびえ立っているのが、エベレストです。その夜、気温が急激に下がり、ホテルからブランケットを借りなければならないほど冷え込みました。ベッドシーツを敷かずに寝られた前日までの亜熱帯気候とは大違いです。
カトマンズに戻った私たちは、ビシュケクに引き続き再びバイクを梱包して次の目的地まで送ることにしました。正確な情報を得ることが極めて難しいミャンマーをバイクで走破するのは大変だと判断したからです。地元の輸出代理業者の代表者スーラジさんに手続きをしてもらい、バイクの発送準備が整いました。次の目的地はバンコク。新たな旅が待ち受けます。
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洗練された近代都市バンコク
独自の文化を有する山岳の国ネパールとはうってかわって、バンコクはまばゆく広大な近代都市。ヨーロッパで見かけるような巨大な高速道路が街中を走り、建物が塔のようにそびえ立ちます。私たちはクーラーの効いたタクシーに乗ってホテルへ向かい、裏口に近いプール付きの部屋を予約することにしました。その後、「スーパーテネレ」を引き取りに向かった空港では驚くほど簡単に手続きを済ませることができました。他の国とは違って 、バイクの引き渡しに賄賂を要求してくる職員はここにはいません。タイの主要な高速道路ではバイク走行が禁じられているので、帰りは来た道を引き返すことに。その途中でまたしても道に迷ってしまいました。バンコクでの数日間は、新鮮で安い屋台飯を存分に味わいました。パッタイや生野菜のサラダをほおばりながら、タイのシンハービールで喉を潤します。
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ヴァレンティンに続いて他の子供たちも旅に加わりました。16歳のアーサー、そして、14歳のカッサンドルとイロナです。バイクとバスに分かれてみんなでタオ島を目指します。タイランド湾の西側沖に位置する21㎢の小さな島。青く透き通ったきらめく海に白い砂浜が美しく横たわる光景はまさに楽園を思わせます。島に滞在中は毎日シュノーケルを楽しみました。エイやウミガメ、サンゴ礁に生息する色とりどりの魚たち。まるで水族館にいるかのようです。
5日後、出発のときがやってきました。楽園ともついにお別れです。アドベンチャーはまだまだ終わりません。世界の果てまで今日も走り続けます。
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フレデリック&アルド
夫婦でタッグを組むユニークなチーム。アルドが文章、フレデリックが写真をそれぞれ担当し、バイクツーリングでの冒険旅行記を共同で発信している。人々との新しい出会いを何よりも楽しみながら、“オーストラリア遍歴”では20カ国、延べ3万キロを走破。初めての本格的アドベンチャー旅行を無事に終え、現在は南アメリカ大陸横断ツーリング旅行を計画中。