Yamaha Journey Vol.07
ヤマハFZ1 FAZERに乗るオーストラリア人男性ライダー、クレイグ・マッカーシーの日本ツーリング体験談です。
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ライダーを駆り立てる道がある、それが日本だ
クレイグ・マッカーシー
FZ1 FAZER
#02 日本:ライダーたちの五感を刺激する
東北
走らずにはいられない場所がある。クレイグ・マッカーシー氏にとっての日本です。今回はオーストラリアから移り住み、この国でのツーリングに身を捧げてきた氏が愛するルート3つについて語ってもらいました。
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変化につぐ変化のある道が、やっぱり愉しい!
磐梯吾妻スカイライン、福島、日本
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このヒンヤリとした空気は、一体なんなのだろう。
恐山、青森、日本
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空を駆ける、という歓びを、バイクで。
津軽岩木スカイライン、青森、日本
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威風堂々。それでこその大自然です。
秋扇湖、秋田、日本
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驚くほどワイルドな馬が、本州最北端の地に
69カ所あるコーナーすべてが、つづら折りになっている「津軽岩木スカイライン」をご存知ですか?僕にとっての東北は、この名道への興味からはじまりました。高い山の上にあるから眺めが素晴らしい上に、走行中は絶え間ないアクションを求められるエキサイティングな道。ここをめざす旅のスタートラインには八戸市を選びます。そこまでは震災の被害から復興しつつある三陸沖沿いの風景を目にしながら向かってもいいし、東北自動車道で一気に向かってもいい。その途中には磐梯吾妻スカイラインという素敵な道もありますしね。
東北には本当にたくさんの見どころがありますが、まずは本州最北端のエリア、下北半島を巡ります。なかでも最初は、半島の北東にある角、尻屋崎へ。ここでは在来種で天然記念物の「寒立馬」と触れ合えます。このあたりには厩舎はもとより、場所を区切るフェンスなども見あたりません。そんな広大な土地に20〜30頭が、さながら野放しにされているのですが、彼らが信じられないほど大きい。食べものなどを求めて私たちに近寄って来ると、その桁外れの存在感に圧倒されるし、まるで野生であるかのような佇まいにも驚かされました。
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ミステリーあり、美食あり、魅惑の下北半島
続いて半島内部にある恐山へ。この界隈はまさしくミステリアス。日本にはそういったスポットがいくつか存在しますが、ここはその中でも別格です。まず恐山の湖(宇曽利湖)には、温泉や地下からの湧き水が流れ込んでいるせいか、湖の水ひとつをとっても、色が妙です。いつも静寂に包まれている一方、そこには何かが隠されているような印象もあって、とてつもなく不気味。湖に突き刺された棒の奥には何があるのでしょうか。子どもを亡くした大勢の人が石を積みにここを訪れるなど、人々はここに死者の魂の出入り口があると考えています。確かにそう思わされる奇妙な空間です。
そして、あらためて下北半島の海岸線を走りながら大間へ。ここは本州最北端の地。吹きすさぶ海風の向こう側には北海道を望めるので「こんなに遠くまでやってきたのか」と感慨深いものがあります。そして大間といえば、やっぱり名物のマグロ。これが絶品です。刺身で味わってもいいし、刺身が苦手なら唐揚げなどで楽しんでもいい。ここでは少しだけ贅沢したくなります。
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ライダーである歓びを、この天国のような空間で
下北半島を楽しんだ後は、十和田湖を目ざして南下しますが、その途中、十和田湖の東側から流れ出ている奥入瀬渓流で一息つきたいですね。実際このあたりを走っていると何度となく「ここで停まらなければ」という気持ちにさせられます。「啓示を受ける」とまで言うと大げさですが、肌で何かを感じるのは確か。もっと眺めていたい、もっと感じていたい、もっと嗅いでいたい。そんな風に五感を刺激する風景にあふれているので、ついカメラに手が延びますが、ただ身を置いて佇んでいるだけで十分。心から癒される場所です。
そして十和田湖へ。水深が5〜6メートルはあるのに、泳いでいる魚をはっきり目にできるほど水が澄んでいます。その透明度には思わず見入ってしまいました。周囲の自然も最高。木々は元気なら、虫もアクティブ。花やコケなどの植物にも溢れていて、すべての自然がイキイキとしています。広大な湖のせいか、海沿いを走っているような気分が味わえるし、眺めが良くて気持ちのいいスポットがたくさんあるから、ライダーにとっては天国のような場所です。
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こんなにチャレンジングな道があるとは思いもしなかった
続いて向かうは青森県の弘前市。この街の代名詞といえばリンゴです。せっかくだからリンゴジュースや、リンゴとホタテを使った「ホタテリンゴカレー」を弘前城でも眺めながら味わいたいですね。このお城も面白くて、外から眺めると小さくてキュートなのに、なかに入ると城から火矢を放って敵を倒すシーンを描いた地獄絵図がズラリ。外側と内側とでは、表情がガラリと変わる面白い城です。
弘前からは「アップルロード(弘前南部広域農道)」を走り抜けて、いよいよ今回のルートにおけるハイライト「津軽岩木スカイライン」へ。よく外国人ライダーが日本を訪れると、アスファルトの質の高さに驚くようですが、僕がここを数年前に訪れたときも、舗装工事が終わっていた山の上半分は最高レベルのコンディションでした。そして噂に違わぬコーナー続きの道。走行中は、ずっとフィジカルなアクションを求められて、これが最高に楽しい。走り終えると、すっかり気分爽快です。これまでに4回、この道を完走しましたが、いずれまたチャレンジしたい道です。
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日本での旅が楽しいのは、優れた治安があるからです
津軽岩木スカイラインから南下した先にある「八幡平アスピーテライン」も大好きな道です。緑深い森があったかと思えば、硫黄が混じった火山の噴煙がくすぶっているエリアもあって、いろんな風景を目にできます。けれども僕にとって八幡平といえば、やっぱりカモシカとの遭遇です。急峻な道をバイクで下っていたときのこと、僕の視野の片隅に何かが追ってくる様子がチラつきます。そこで減速したものの、何がいたのかわからない。あらためて走りだすと、また併走しだす。正体不明の相手は、いきなり道路脇から飛び出します。シャープな眼光、太い前脚、後頭部に流れるように生えた角。おまけに筋骨隆々です。こんなに逞しい生きものと間近で対峙したことにドキドキでしたが、相手はすぐに道を横切り森へと姿を消します。この間、わずか数秒。素晴らしい経験でした。最後は日本で最も深い湖、田沢湖へ。透き通った水、キラキラと輝く湖面、湖を囲む美しいビーチを眺めながら東北の旅を締めくくります。
そういえば八幡平のあたりでは、ちょっとしたハプニングがありました。ツーリング仲間がサービスエリアで財布を置き忘れたのです。けれど、10分後に慌てて戻ったところ、案の定、財布はそのままで「すぐに戻ってくると思って、財布は遠目に見守っていたよ」と店員さんのノンキなこと。これも日本ならではのエピソードです。このように治安面での不安が少ないのも日本の良さで、だからこそ旅を楽しむことに集中できる。もちろん安心し切ってしまうのは良くありませんが、当たり前のもののように錯覚しがちなこの優れた治安にも感謝をしながら走り続けたいですね。
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クレイグ・マッカーシー
オーストラリア出身。曲がりくねった山道、美しい景色。バイカーを取りまく日本の環境に魅了され、これまでの11年間で47都道府県のうち46の地域を体験。長期ツーリングは年に2回。数日間のツーリングは年間を通じてたびたび。2007年からの愛機はヤマハFZ1 FAZER。本州の最北端、最南端、最東端、最西端のすべてをともに巡り、サーキットレースも、ドラッグレースも、台風の日も、雪の日も、ともに走ってきた。これまでの冒険の軌跡は「Touge Express」に。ここで毎年恒例となっているツーリングイベント「Coast to Coast Twistybutt」や「Tokyo Toy Run」のルートマスター。ツーリングのリーダーを務めることもある。