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Vol. 5 YZR-M1とロッシをつなぐエンジン制御エンジニア。

ザクセンリング - ドイツ - 2013年10月26日

ザクセンリング - ドイツ

スターライダーたちがしのぎを削り、エンジニアたちが1台のマシンに叡智を結集する―世界最高峰の舞台MotoGP。バレンティーノ・ロッシ選手の超人的なマシンコントロール能力を最大限に引き出すために、膨大なデータの分析に取り組みながら、絹のように繊細な制御をマシンに織り込み続けるエンジニアの姿を紹介します。

世界最高峰のモーターサイクルロードレースMotoGP。最高速度330km/hにも達する高性能マシンとスターライダーたちによる頂点の戦いは、電波に乗って世界中のファンのもとに届けられ、テレビの前ではおよそ50億人(のべ・年間)もの人びとが熱狂していると言われています。

「YZR-M1」は、MotoGP参戦のためにヤマハが専用開発したファクトリーマシンです。2002年のデビュー以来、いくたびもの進化を繰り返しながら毎年チャンピオン争いを演じ、バレンティーノ・ロッシ選手(イタリア/4回)とホルヘ・ロレンソ選手(スペイン/2回)という二人のスーパースターのライディングによって、これまで通算6度のライダーチャンピオンを獲得してきました。

関和俊さんは、2004年にロッシ選手がヤマハチームに加入して以来、一貫して彼の「YZR-M1」を担当してきたエンジン制御の専門家です。ロッシ選手からの全幅の信頼を受けながら、膨大なデータと経験に裏付けられた分析力、そして繊細なセッティング技術によって、あの超人的とも言えるマシンコントロールを支えています。

1台の「YZR-M1」を走らせるために、また勝利へと導くために、華やかな舞台の裏では数えきれないほどの人びとが知恵を絞り、情熱を注いでいます。関さんもそうした縁の下の力持ちの一人であり、レースウィークのサーキットはもちろんのこと、遠く離れた日本のヤマハ発動機本社やテストコースにいる間も、常にロッシ選手の走行データと世界各地のサーキットのデータを睨み続け、ロッシ選手の「YZR-M1」に勝つための情報を入力しているのです。

「皆が少しでもパワーを上げたいと苦心している中で、そのせっかく生み出したパワーを削っていくのがエンジン制御の仕事」と語る関さん。「必要なところではフルパワーを絞り出し、必要のないところではライダーのコントロールを優先してそれを抑える。もちろんサーキットごとにエンジンの性格は大きく異なりますし、細かいとことで例を挙げれば、一つのコーナーに入る前と、そのコーナーを立ちあがった時ではまるで違うエンジンのような特性になります」。搭載できるエンジンは一機だけ、しかしその一機はいくつものエンジンの役割を担い、それを果たしているのです。

「YZR-M1」に冠せられた「M」というアルファベットは、MotoGPから生まれた技術をヤマハ製品にフィードバックする使命(Mission)と、チャンピオンを獲得する使命(Mission)を示しています。関さんらによる勝利のための最新・最先端の技術開発は、やがて制御技術をコア技術の一つとして掲げるヤマハの各種事業・製品群に応用されていくことになるのです。

MotoGP / ロードレース世界選手権

MotoGPは、モーターサイクルロードレースの世界最高峰クラス。それまで最高峰として開催されていたロードレース世界選手権500ccクラスに代わり、2002年より2ストローク500cc以下/4ストローク990cc以下のMotoGPが誕生した。現在は1000㏄以下の4ストロークマシンによってチャンピオンシップが争われている。

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