おもしろエンジンラボ20周年レポート
おもしろエンジンラボの活動が20周年を迎えました。
コンテンツ
1.活動の概要
小学生向けの工作教室をボランティアで実施しています。
2002年から社内有志で始めたこの活動は今年2022年12月で20周年になります。
- 活動内容
- 「ウインドカー工作教室」・「エンジン分解組立教室」
- 活動場所
- コミュニケーションプラザ、浜松科学館、磐田市近隣の小学校
自動車技術会イベント「キッズエンジニア」 - 活動人数
- 社員 38人、OB 7人 ※2022年9月時点
- 活動日数
- 約15日/年
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ウインドカー工作教室
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エンジン分解組立教室
2.おもしろエンジンラボの設立
2002年に浜松科学館で行うイベントに地域の学校や企業に出展の依頼があり、この依頼を知った社内有志が集まって小型エンジンの分解組立教室を実施したのが始まりです。
その後、子どもたちに喜ばれ自分たちも勉強になり社会貢献もできるということで、長期的に取り組むためにグループを組んで活動することになりました。
2002年当時、子ども達の「理科離れ」「機械離れ」が社会的にクローズアップされていましたが、私達は、それは機会が減ったことが大きいのではないかと考えました。
この活動を通して、子どもたちがモノに触れ、実際に作って、試して、失敗しながら遊ぶことを通して、モノ創りの夢や楽しさを知ってもらうことを設立主旨としました。
スタッフは設立以来、ヤマハ発動機(株)社員とOBがボランティアで運営、講師をしています。
職種は最初は技術系の人が中心でしたが、現在は様々な部署の社員が参加しています。
2002年12月12日、浜松科学館のイベントに社内有志でエンジン分解組立教室で参加。
2003年5月18日、エンジン分解組立教室を初めてコミュニケーションプラザで実施。
3.ウインドカー組立教室の誕生
私達の活動の中心となっている、「ウインドカー組立教室」。実際に参加したお客さんからも「なぜヤマハはウインドカーをやっているんですか?」と聞かれることがあります。
確かに、私達ヤマハ発動機の製品の中にウインドカーはありません。
始まった経緯をここで説明します。
ウインドカーは日本機械学会と神奈川工科大学の共催で行われた「流れと遊ぶアイデアコンテスト」の企画が発端となっています。この企画をもとに、技術会主催で技術展のイベントの1つとしてウインドカーの社員レースがかつて行われていました。
このレースに参加したおもしろエンジンラボのメンバーが「おもしろそうだから子どもたちに作らせて、レースで走らせてみよう」と提案がありました。メンバーで部品を設計し、試作して試行錯誤を繰返しました。
子供が作りやすいようにシンプルであること、部品はなるべく市販品を使用すること、道具を使うことを考慮し、最初のウインドカーが完成しました。技術展でのウインドカーレースは終わってしまいましたが、当時のコースや機材を引き継いで、この活動を続けています。
ウインドカーは講座開始以来、駆動伝達のギヤは輪ゴム、四輪タイヤから前輪プーリ-、タイム計測はストップウォッチからスイッチで自動化、といった改良を重ねています。
このウインドカー工作教室では、自分でつくって、結果が出て、改良するモノづくりの創意工夫がその場で体験できることが醍醐味です。
部品のばらつきも大きいため、同じようにつくっても同じタイムが出ません。1台1台最適なチューニングが異なります。ほんの少しの変更や修正で早くなることも遅くなることもあります。チューニングの感度と不確定要素が大きいのも面白さの1つです。これにより子供だけでなく大人まで楽しむことができます。
ウインドカー工作教室の検討会。
汎用品を使いながら、子供が組立てやすいように設計。今の仕様と異なり、車輪は四輪、駆動輪の伝達はギヤ。
2003年6月21日
浜松科学館でウインドカー工作教室を初めて実施した。
子ども達の反応も上々で、メンバーは手応えを得た。以後、ウインドカー本体、コースも改良を加えながら、この教室が現在の活動の中心となっている。
4.おもしろエンジンラボ 活動の沿革
2002年に始まったこの活動は今年9月までに活動255日、参加児童は13,946人を超えました。
これまでの沿革を下の表にまとめました。
活動場所は磐田市、浜松市周辺から静岡市に広がり、2008年からは自動車技術会主催の「キッズエンジニア」に毎年参加、2011年の東日本大震災後の支援として、自発的に東北遠征を実施したことで、自動車技術会を後押しして「キッズエンジニア東北」開催のきっかけになりました。
近年はコロナ禍で活動日数は減りましたが、子供向け体験イベントページ新設により活動予定や活動結果の情報発信、社内イントラページでの定期活動へのメンバー募集に取り組むことにより、社内外を通して今後も継続して活動できる基盤を構築しています。
2002年12月から活動20年の沿革
年 | 月 | トピック |
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2002 | 12 | エンジン分解組立教室を浜松科学館のイベント「サイエンス祭り」で初めて実施 以後、浜松科学館の年末イベントに毎年参加 |
2003 | 5 | コミュニケーションプラザでエンジン分解組立教室を実施 |
6 | ウインドカー工作教室を浜松科学館で初めて実施 | |
7 | 浜松市立和田小でエンジン分解組立教室を実施 | |
2005 |
ウィンドカーの改良実施 ・プロペラから車輪への伝達をギヤから輪ゴムに変更 ・ウィンドカーの前輪をプーリー式に変更 ・走行コースをワイヤーによる2レーンに変更 |
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2006 | 6 | 浜松市立浜名中でキャリア教育の一環としてエンジン分解組立教室を実施 |
10 | 静岡科学館でエンジン分解組立教室実施、以後、2010年まで毎年実施 | |
2007 | 9 | 浜松科学館で電動アシスト・ラボ教室を実施、以後、2019年まで毎年実施 |
2008 | 8 | 自動車技術会主催のキッズエンジニア(横浜)にエンジン分解組立教室を初出展 |
2010 | 10 | 累計100回達成 |
7 |
計測方式変更 ・ストップウォッチによるタイム計測からスイッチ式に変更 ・タイムの画面表示開始 |
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自動車技術会主催のキッズエンジニアにウインドカー工作教室を初出展 | ||
2011 | 8 | 震災復興支援として東北でウインドカー工作教室を実施 |
10 | 東北自動車技術会主催のミニキッズエンジニア東北(石巻)にウインドカー工作教室を出展。以後、ミニキッズエンジニア東北は毎年参加 | |
11 | トヨタ自動車(株)技術会のイベント(富士スピードウェイ)にウインドカー工作教室で参加 | |
2012 | 活動開始から10年、社長賞受賞 | |
2016 | 4 | 東北大学イベント(仙台)で学生と協同でウインドカー工作教室を実施 |
8 | 磐田市立富士見小のPTA親子ふれあい活動でウインドカー工作教室を実施 以後、2019年まで毎年実施 |
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2017 | 5 | 累計200回達成 |
2019 | 6 | キッズエンジニア北海道(札幌)でウインドカー工作教室を出展 |
8 | 「親子エンジン分解組立教室」でキッズデザイン賞2019を受賞 | |
11 | ミニキッズエンジニア東北(仙台、福島)でウインドカー工作教室を出展 | |
2021 | 8 | キッズエンジニアにオンライン形式でウインドカー工作教室を出展 |
2022 | 1 | ラグビー静岡ブルーレブズの試合のイベントとしてウインドカー工作教室を実施 |
7 | 3年ぶりにキッズエンジニアが横浜で開催され、スタッフ人数制限によりタブレットを使用してウインドカー工作教室を出展 | |
11 | 3年ぶりにキッズエンジニアが東北が仙台で開催され、ウインドカー工作教室を出展 | |
12 | 活動開始から20年 |
活動日数、参加児童人数(累計)の推移
5.これまでの活動写真
2006年10月7日、静岡科学館でエンジン分解組立教室を実施。
2007年6月9日、浜松科学館で「電動アシスト・ラボ」を実施。電池講座、PASの分解と試乗。
2011年10月26日、石巻市の小学校にて初開催のキッズエンジニア東北に参加。
2013年7月26日、名古屋市吹上ホールにてキッズエンジニアに参加。
2018年11月23日、仙台市科学館にてキッズエンジニア東北に参加。
2019年11月24日、福島市こむこむ館にてキッズエンジニア東北に参加。
6.子ども達のウインドカー改造
予約制の教室の中ではタイムを上げるために改造時間をとります。改造内容についてスタッフは具体的なことは言わない為、子供達の自由な発想で改造します。その中のいくつかを下に紹介します。
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前2枚、後2枚のプロペラ4枚
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3枚のプロペラ、2枚は端部をカット
プロペラを増やすとどうなるか、スタッフは答えは言わないので、皆必ず1回はやります。
理屈はともかく、まずやってみましよう。結果が出て分かることもたくさんあります。
風力+モータのハイブリッド仕様。
アイデアを形にしたことに拍手。
後輪のプーリーに輪ゴムを巻いているところも工夫が分かります。
この車の持ち主は、過去参加してつくったウインドカーを家でこのハイブリッド仕様に改造して、後日持ってきて見せてくれました。
実際のコースでは走りませんでしたが、そのアイデアと工夫は必ず次に生かされるはずです。
7.おもしろエンジンラボのこれから
活動を始めた頃と比べると、社内外問わず様々な変化がありました。私達ヤマハ発動機がいる自動車業界は百年に一度と言われる変革期の中にあり、更に経済、国際状況による製造業の環境やSDGs等の社会における企業責任も変化しました。
このような厳しい環境の中で、私達の活動が継続できたことは、会社、社員の皆さんの理解とサポートが得られた故の賜物です。
これまでこの活動に関わってこられた全ての皆様に、この場を借りてお礼を申し上げます。
今後も設立以来の主旨である、「子どもたちがモノに触れ、実際に作って、試して、失敗しながら遊ぶことを通して、モノ創りの夢や楽しさ」を提供することでヤマハ発動機の魅力の1つとして、引き続き地域や社会への貢献していきます。
最後に、過去エンジン分解組立教室に参加した経験のある、2人の社員を紹介します。
AM開発統括部の小杉さん(写真左)、ロボティクス事業部の西城さん(写真右)。
2人はエンジ分解組立教室の卒業生で、現在エンジニアとして活躍されています。
今後も2人のような人材が育つことを期待しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【ニュースレター】 原体験をつないで20年。育まれた大きな成果 より抜粋