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YA-1 開発者インタビュー

展示コレクションの関連情報

オリジナルの追求~YA-1レストレーション

PROFILE

大野 晃英氏
(おおの・こうえい)
ヤマハコミュニケーションプラザ/レストア担当

 我々の仕事はコミュニケーションプラザに展示する車両をレストアすること。趣味のレストレーションと違って、販売されていた当時の姿をあくまで忠実に、しかも走行可能な状態で再現することが要求されます。それにはまず、確かな資料の確保が重要ですね。
 YA-1の場合、当時の図面が75%くらい残っていたのでそれを元にしていますが、当時は図面がすべてではなく、現場で辻褄を合せたり補足したりしたようで、図面から読み取れない箇所もあるんです。特にカラーリングに関しては満足な資料が残っていないため、あのマルーンの色を再現するのに苦労しました。当時の開発に関わった方たちに話を聞いても、「もっと明るかった」「もう少し渋い色だった気がする」など感覚的なコメントだったので、正解が得られなかった。それで、当時の写真を見比べたり、現存する車両のタンクの裏など退色の少ない部分を探して参考にして、最大限の力を尽しました。現在の展示車は、かなり忠実な色合いを再現できたと思いますよ。
 もう一つは音叉のタンクマーク。これも周囲がメッキだ、いや磨き出しだったと両論ありましたが、どうもメッキではなかったようです。それと七宝焼きは、当時どこで作ったものなのか、まだわかっていません。京都のある会社に再現を依頼したところ、表面のRが微妙で「非常に難しい」といわれましたが、なんとかオリジナルに近い納得のいくものを作ってもらえました。
 もっとも劣化が激しかったのはゴム製パーツ。シートやニーグリップなどは、図面や現存している実物を参考に、金型を起こして作り直しました。しかしタイヤは、どのメーカーにもYA-1に合うサイズが残っておらず、といって自作するわけにいかない。社内技術部を通じてタイヤメーカーにお願いし、特別に作ってもらいました。
 エンジンやミッション関係は、加工精度が高く丈夫なのに驚きました。これまでに数台のYA-1をレストアしましたが、どれもギアやクラッチなどを交換せず、そのまま使うことができたんです。
 このように、妥協せずあらゆる手段を尽し、ひとつひとつの製品を当時のまま忠実に再現するのが私たちの仕事。時には一般の詳しい方から「この年式にこれは違う」といった指摘を受けることもありますが、それは自分たちの仕事ぶりをちゃんと見てもらえた証拠です。ありがたいと思っています。

※このページのプロフィール、および記事内容は、2003年3月の取材によるものです。
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