「Sailing World Championships」で壁に直面
顔を上げろ、胸を張って前へ進め!
4年に1度、オリンピックとオリンピックの間(近年は偶数年)に実施される「Sailing World Championships」は、オリンピック男女10種目の世界選手権が同時期に同じ場所で開催される「世界セーリング」ともいうべき大会です。オリンピックの場合、各国1クラス1艇で、なおかつ国別出場枠もあるため、参加艇の数もオリンピックの4倍以上となるセーリング界最大のビッグイベントといえます。
8月2日から10日にデンマークのオーフスで開催された今大会の470級には、男子64艇(日本チーム9艇)・女子47艇(日本チーム4艇)がエントリー。2020年の東京オリンピックへの国別出場権(開催国である日本は既得)が与えられる最初のレガッタとなったこともあり、掛け値無しの真剣勝負の場となりました。
[ダイジェストムービー] 2018 Sailing World Championships Aarhus DENMARK
YAMAHA Sailing Team 'Revs'からは男子の高山大智/今村公彦、神木聖/疋田大晟、女子の宇田川真乃/工藤彩乃の3チームがエントリーしました。ワンチームとして合同合宿など協力関係にあるアビームコンサルティングの土居一斗/木村直矢とリオ五輪銀メダリストのマシュー・ベルチャー/ウィリアム・ライアン(オーストラリア)も参戦。ヤマハの3チームは昨年に引き続き2度目の世界選手権ということもあり、結果が求められる大会といえました。
日本から9チームがエントリーする激戦の男子では、序盤から日本勢が上位を独占する活躍を見せましたが、ヤマハチームのエース的存在である高山/今村が緒戦の第1レースで痛恨のリコール。「その後の戦い方がどうしても消極的になってしまいました」という今村の言葉どおり、予選シリーズでは我慢のレースでなんとか踏みとどまったものの、ライバルたちの好成績にペースを乱されたのか、決勝シリーズに入ってからはギャンブル性の高いコース選択も目立ち、ジリジリと順位を落としてしまい、28位に終わりました。
一方、軽〜中風のコンディションのなか、小気味のいいコース引きで好発進したのが神木/疋田。得意のコンディションのなか、伸び伸びとした走りでメダルレース(上位10艇)をうかがう展開でしたが、決勝シリーズに入ってからはなかなか上位に切り込むことができず最終順位を22位にまで下げてしまいました。
ヤマハチームが出場できなかったメダルレースには、磯崎哲也/高柳彬(エスピーネットワーク/日本経大)、岡田奎樹/外薗潤平(トヨタ自動車東日本/九州旅客鉄道)、土居/木村の3チームが残り、なんと磯崎/高柳が銀メダルを獲得するという快挙を成し遂げました。
日本から4チームがエントリーした女子の注目は、北京・ロンドン・リオとオリンピック3大会連続出場ヘルムスマン吉田愛選手の、出産後初めての世界選手権出場というトピック。この絶対的な女王に、日本の若手3チームがどれだけ迫れるかが焦点でしたが、蓋を開けてみれば吉田愛/吉岡美帆(ベネッセホールディングス)が470級女子では日本人初となる金メダルを獲得するという圧勝で、力量の差を見せつけられる結果となりました。若手の中では19位と日本チーム2位の成績を残した宇田川/工藤ですが、現時点での女王とのレベル差は歴然。
YAMAHA Sailing Team 'Revs'にとっては、男女ともライバルたちとの差を見せつけられる結果となった今回のレガッタ。この苦しい現実を直視し、ライバルとの差がどこにあるのかを冷静に分析した上で、その差を一歩でも半歩でも詰める努力を続けることでしか光明は見えてきません。顔を上げよう! 胸を張れ! そして前へ進もうじゃないか、若きセーラーたち!