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The People Behind Yamaha Factory Racing

Yamaha Factory Racingを支えるさまざまな分野・領域で活躍する人々の活動をご紹介します。

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア第2PT実験部YZ-PT実験Gr 北原直哲

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

「エンジン実験って乗り味もそうですけど、エンジン単体で性能を測ったり、機能面ではオイルがちゃんと回ってるか? 圧力は足りているか? 信頼性のところでは耐久評価もやる。レースレギュレーションにある騒音測定と、エンジンのかかりやすさとかいろんな評価をやってます。僕自身はまとめ役なんで、全部見て、全部手出す何でも屋です」と謙遜するが、YZの心臓部とも言えるエンジンのすべてを司るのが北原直哲さんの仕事だ。

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア
No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

そして「何でも屋」だからこそ視野が広く、「ポイントなのは壊れないっていう、当たり前の品質を確実に守りつつ、どれだけ速いエンジンを作るかってところ」と一つ目のこだわりをあげると、続けて、「いろんなライダーが乗るんで、特に低中速っていうのかな、プロからビギナーまで誰もが使う領域はすごく大事に作り込んでいます。また乗りやすいってことはパワーを落とすことになりますが、なるべくパワーを落とさないで乗りやすいエンジンを目指しているのもこだわりの一つ」。さらに、「エンジンも車体と同じで、最終的にはライダーのフィーリングを一番大事に、一番尊重して作り込んでいます」と、こだわりが細かく、欲張りなエンジニアである。

その一つ、パワー感や低中速の作り込みでは、「相手が土なんで、パワーが出ればイコール前に進むじゃなくて、ただかいちゃって前に進まないし乗りづらくなっちゃったりとか、難しいところもあります。かといってパワーが弱すぎると単純に走らないから、そのバランスも実際に乗って評価して作り込んでいく形です。メインで担当しているYZ250Fだと、基本的に低中速、ようはコーナーでスロットルを閉じたとこからドドドって立ち上がっていく時に、前に進んでるぞ、加速してるぞ、パワーがあるぞっていうところはどのメーカーにも絶対、負けないように…」、と力を込めた。

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア
No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

「エキパイの形状や長さを変えたり、サイレンサーの中身を変えてみたり、エンジンのポートとかも自分たちで削ることもある。自分たちで作れない物は、こういう特性にしたいから、こういうパーツを作ってよっていうのを実験から提案することもありますね」と、試行錯誤を重ねていることが伝わってくる。

そんな北原さんだからこそ新しいことにトライを続けているそうだ。それは元国際B級ライダーで全日本を走ったこともあることにも起因している。「以前はYZに乗ることはなく、コメントを聞いて開発を続けてきました。でも、イメージがある程度、凝り固まってきたというか、いくらか経験を積んで、こう言われたらこうみたいな引き出しを持っているため、その中で仕事をするようになった感じで、ブレークスルーのために仕事の方法を変えました」

「ここ3年ぐらいかな、自分でもYZに乗るようにしています。それでイメージがより広がったし、より開発ライダーのコメントを理解できるようになったし、それを数字とリンクもさせられるようになってきました。プロの開発ライダーのようには走れないし身体はしんどいですけど、いいことが多かったかなって」。結局、ライダーの感覚を一番大切に作り込んでいるっていうことに辿り着いたのである。

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

そして、北原さんは元ライダーであり、開発者としてYZが勝利する意味を知っているからこそ、レース結果は大きなモチベーションとなる。特に2025年のAMAスーパークロス・450SXでチャンピオンを獲得したクーパー・ウェブ選手の勝利は格別だったという。

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア
No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

「勝ってもらうのはすごくうれしいですし、個人的な話しですけど、クーパー・ウェブ選手が若い頃にSUGOでの全日本選手権(2014年)に来たことがあって、そのときにStar Racingのスタッフとしてチーム手伝っていたんですよ。あんな生意気だったヤツがまたヤマハに戻ってYZ乗ってくれて、個人的にメッセージも送っていましたが、チャンピオンを獲ってくれたっていうのは特にうれしかったですね。

年齢的にはちょっと下なんですけど、自分が初めてちゃんと携わったYZ250Fでチャンピオンを獲ってくれたので、勝手に一緒に成長してるような感覚でいたし、Star Racingと一緒に強いYZを証明し続けてくれ、それを今はヘイデン・ディーガン選手が続いてくれてるって思ってますけど、それもすごくモチベーションになる。ディーガンの次にもまだまだ若い子たちが出てきてるんで、僕も頑張らないとなっていうのはもちろんあります」

No.2 決して足を止めない、欲張りなエンジニア

こうした思いが、YZへのモノづくりにも昇華されている。「ウェブ選手もモトクロスで人生が楽しくなるって言ってくれたんですけど、YZに乗ることには鍛錬と娯楽という両方の側面があって、子どもや若者たちにはどんどん速くなってほしいし、ベテランには生活を充実させてほしいし、プロライダーには勝ちまくってほしいし、いろんな意味でYZを通じて成長してもらいたいという思いを開発全体が持って動いています。そして僕ら自身も成長してこれからもよりよいYZを作っていきたいし、みんなで頑張って楽しんでいけたらいいなって思っています」

北原さんをはじめYZシリーズの開発者たちには、まるでトップを目指すライダーと同じように、「決して足を止めない」という考えが染み付いている。だからこそ、さらなる高みへとYZは突き進むのだ。

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