The People Behind Yamaha Factory Racing
Yamaha Factory Racingを支えるさまざまな分野・領域で活躍する人々の活動をご紹介します。
No.1 人が乗って遊び、楽しむ車だからこそ“感性”で磨く第1車両実験部YZ Gr 佐藤勝利

開発というと設計などを思い浮かべる方もいるかもしれないが、その設計よって作られたエンジンや車体を実際に車両に試乗するなどしてその良し悪しを「評価」する部門がある。その一つが「第1車両実験部YZ Gr」だ。性能的な視点もあれば、耐久や機能的な視点でテストを行い、YZシリーズのハイパフォーマンスを引き出し、かつ熱、水、埃などモトクロッサーにつきものである内外的な要因に対しての耐久性や機能的な性能を担保しながら磨きあげていく。
中でもパフォーマンスの作り込みは、さまざまなこだわりやノウハウが実験メンバーの中に息づいている。佐藤勝利さんは1990-2000年代、国際A級として全日本で活躍し、その後、ヤマハ発動機に入社。長くYZシリーズの車体実験を担当してきた。


「耐久性のところは、設計者の机上検討と強度評価である程度は見えてきます。乗車感は官能評価を行い、人の感性も大切にして作り込んでいます。例えば、新しいフレーム作る場合は前のモデルに近いところからスタートして、市場要求の高い部分を改善していきます。仮に縦のリアクションを抑えたいのであれ、縦剛性を落としたベースを設計者に検討していただき。そこからの細かい作り込みは我々実験が官能評価で行い、板厚、形状だったりは自分たちの手作り、切った貼ったで進めていくことになります」
それは本当に繊細で根気のいる作業になる。

「1ミリとか2ミリのパッチ追加による剛性の変化は、解析・台上で測っても変化する数値が小さくわからないレベルですが、ライダーはそこを感じ取ることができるから妥協はできないんです」
こだわり続けるのは、「YZシリーズは、人が乗って遊ぶ車、楽しむ車であり、だからこそ、設計者が作り込んでくれる数値を尊重しながらも、感性でバランスを取って車作りをしていくっていうところを大事にしています」と佐藤さん。
経験に基づく感覚と予測で切り貼りする。それを契約ライダーが試乗してそのコメントを集めてという作業を繰り返し、最適解を導き出していくのだ。

日本でベースを作ると今度はメイン市場の北米(US)チェックが待っている。「厳密に言えばUSをはじめ、さまざまなエリアのライダーが乗ってそのフィードバックをもらい、そのアベレージ(ちょうどいいところ)をピックアップしていきます。それを行ったり来たりさせるわけですが、フレームだけでバランスが取れないと今度は足回りのサスペンションをセッティングし直して、それでもバランス取れない場合は、もう一回フレームを修正して、またサスをやってっていうのを繰り返す。さらに付随するエンジンブラケットだったりの調整もある。鉄なのか、アルミなのか、板厚なのか、形状なのかっていうのを吟味していきます」。選択肢に限りはなく、気の遠くなるような作業が繰り広げられるわけだが、彼らは腹の真ん中に一つの作りたいものの理想を持っている。
それは、「基本的にはリアクションがおとなしいバイクを作ることにフォーカスしています。コーナーに入っていくときの動きが安心でき、立ち上がっていく時もトラクションを感じ取りやすく、路面の状況もわかりやすいバイクです」という。だからこそ迷うことなく、そこに向かって突き進むことができるのだ。
そしてこの過酷なYZシリーズの開発において、テストライダーや開発者にとっての大きなモチベーションとなり、進むべき道を指し示すのが、当社が世界中で行うレース活動である。佐藤さんは「全日本、世界選手権、AMA、全部見てますよ!」という。


「レースは開発者にとっての勉強の場でもあり、トレンドを掴む場でもある。だから、YZだけでなく他社の車両についても観察しています。ライバルに一歩でも遅れると、それを取り戻すのにものすごい時間かかるからですが、同時に自分らが今後、どこに向かっていくべきかを見定める機会にもなり、最終的にはお客さんにもつながっていくことだと考えているからです」と答えてくれた佐藤さんだが、「勝っている姿を見たい」というのもまた本音としてある。

「実際は自分たちが作った車両が勝っている姿が一番のモチベーションだし、それでYZがたくさん売れてくれれば嬉しいですね!」と開発者の顔で笑う佐藤さん。今シーズン、メイン市場のUSで行われたAMAスーパークロスやAMAモトクロスでの勝利が開発陣の大きな自信になったことはいうまでもなく、これからのYZシリーズの進化をさらに推し進めていく力になるのだ。
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