情熱をもって感動を創造する Yamaha Factory Racingの活動を支える人々「YZR-M1カラーリングデザイナー」
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2025年10月28日
ライダーやマシンがレースという舞台で戦いを繰り広げる背後では、さまざまな分野・領域の従業員、専門家、プロフェッショナルたちが支え、一体となって勝利とその先にある「感動創造」を目指しています。ここでは「裏方」となる人物に光を当て、レースやモノづくりへの情熱やチャレンジを炙り出しご紹介します。
Monster Energy Yamaha MotoGPの2025年型「YZR-M1」のカラーリングデザインは、イタリアにあるYamaha R&D Europeのデザイン部門で働くマルコ・フェッラーロさんたちが手がけたものです。「“Blue Shift”をコンセプトに、ヤマハの躍進をカラーによって表現しています。特にヤマハブルーの存在感を高め、Monster Energy Yamaha MotoGPからPrima Pramac Yamaha MotoGP、そしてMoto2のBLU CRU Pramac Yamaha Moto2を連動させています」という思いが込められています。


このカラーリングプロジェクトについてマルコさんは、「私自身も実際にそれが現実になるまで信じられませんでした。本当に思いもよらない出来事だったのです。こうした機会をもえらえたことに感謝の気持ちしかありません。このプロジェクトは“情熱”から生まれたものです。私にとって“情熱”とは自然に無意識に、強制されるわけでもなく義務感でもなく、心からやりたいという気持ちであり、だからこそベストを尽くすことができたのです」
マルコさんが、Yamaha R&D Europeに入社したきっかけは2003年、ボローニャで行われていたモーターサイクルショーのヤマハブースで、当社の「Touching your heart」という言葉に出会ったことがきっかけでした。
「印象的なこの言葉によって、ヤマハを知ることとなりました。そしてその年の夏、とても素晴らしいアイデアが浮かんだんです」。それはヤマハに就職するということでした。早速ポートフォリオ(履歴書)を作ったマルコさんはYamaha Motor Italyへ。訪問した日が土曜日だったためポートフォリオを置いてくるつもりだったそうですが、守衛所の警備員が親切にも、偶然出社していた社員を紹介してくれ、Tシャツ、ショートパンツという出立ちで面接。2004年、Yamaha R&D Europeに入社することとなったのです。


さらに、「入社して初めての仕事が50ccのスクーターのデザインで、バレンティーノ・ロッシのレプリカモデルのカラーリングを担当しました。これは私にとっては非常に意味のあることでした。なぜなら、私が入社した2004年は、バレンティーノがヤマハに加入した年でもあったからです。多くの若者にとってバレンティーノは世代を象徴する存在で、もちろん私もイタリア人として彼を追いかけていました。だからこそ、このレプリカモデルに関われたのは、本当に素晴らしい経験でした」


以降は、オートマチック・スーパースポーツ「TMAX」を頂点とする「MAXシリーズ」のカラー選定や、Ténéréによるレーシングプロジェクトに関わるなど、幅広い領域で新しい挑戦を繰り返しながら、自分自身を鍛えあげてきました。ボローニャのモーターサイクルショーでヤマハと出会って以来、さまざまな機会を通してモノづくりやデザインへの「情熱」が醸成されていったのです。


そしてこうした小さな歯車たちが連動し、偶然は必然となり、2025年型「YZR-M1」のカラーリングデザイナーに就任。2025年2月3日、マレーシアはクアラルンプール、マルコさんたちが手がけた「YZR-M1」が世界に向けて発表されました。さらに2月28日、タイのチャーンインターナショナルサーキットでデビュー戦を迎えました。「M1はプロトタイプマシンであることから、最後の最後まで進化を止めないため、全体をまとめて作業できるか、パーツを一つずつ進めるのかさえわからないので常に挑戦でした。つまり、予期せぬ状況に柔軟かつ迅速に対応することが求められたのです」と、当時の苦労を振り返ります。
そして開幕戦のグリッドで見せたYZR-M1の勇姿にマルコさんは、「常に前向きに考え、どれだけ困難な状況でも必ず解決策は見つかると信じて取り組んできました。だからこそとても強い感情が生まれました。言葉で表すとすれば、本当に純粋な“幸福”そのものでした。同時に私にとってこのプロジェクトは深く心に響くもので、特別で唯一無二の経験となりました。さらに、このプロジェクトの実現を支えてきた人と人とのつながりが、前進するための原動力となりました。そして皆が一体となって互いを信頼し合うことで、あらゆる可能性を拓く魔法が生まれ他のです」と、達成感に満ちた表情を見せてくれました。
続けて、「私たちがデザインに込める哲学は、ひとつの言葉に集約できます。それはFeel、”感じること”です。各プロジェクトにおいて、その製品を待ち望んでいる人々の驚きや喜びを感じて想像することが、アイデアの創造に良い影響をもたらすのです」。そして「YZR-M1」のカラーデザインもその哲学のもとに創造されています。


「ヤマハは特別な会社だと思います。人々の暮らしをより良くするために、シンプルなものから最先端技術の結晶といえるような製品まで幅広く手がけているからです。だから私は毎年、EICMAなどのモーターサイクルショーに足を運びます。ヤマハがさまざまな思いを込めた製品を見ている人々の反応を観察するためです。そこでは人々の目が輝き、笑顔がこぼれる瞬間をたくさん見ることができます。それこそが私にとっての感動なのです」

マルコさんをはじめ、数多くの従業員が情熱とともに作り上げた「YZR-M1」は今も「感動創造」のために世界中のサーキットを舞台に挑戦を続けています。
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