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全日本モトクロス選手権 「IBで勝ち、IA2を走る」。スモールステップで上にいく、髙木選手の未来

レースに関連する広報発表資料をご覧いただけます。

2025年10月15日

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 2025年全日本モトクロス選手権も佳境に入り、残すところ2戦となった。今年もYZシリーズを駆るプライベーターがそれぞれ目標を掲げ、その目標を達成するために準備と努力を重ねている。ここではIA2、IBOPEN、レディースで成長を見せ、今後もさらなる成長が期待される若手プライベーターにクローズアップ。モトクロスをはじめたきっかけ、現在、未来などについて語ってもらい、彼らの実像と魅力に迫った。 



 ヤマハクラブチームの中にあって多くのトップライダーを輩出してきた「RACING TEAM TAKA」、その代表を務める髙木雄一氏の子息が髙木碧選手である。2009年11月生まれ15歳、高校1年生。雄一氏の教育方針により若いうちからニュージーランドなど海外トレーニングを重ね、海外の高いレベルを知る数少ない若手ライダーの一人だ。



 髙木選手のモトクロスは、「5、6歳の時に乗ろうと思って、コース行く途中の道でこけて、嫌になってやめました」と呆気なく終わる。しかし小学4年生の時に関東ミニのキッズ65で復活し、5年生で関東選手権を回った。さらに6年生でジュニア85に転向しようやく小さな火がついた。



 「小6の時の関東選手権は全然勝てなくて入賞できたらいいほうだったんですけど、走ることが楽しいと思えるようになったんです。それで中1から一気に変わりました。関東選手権で3連覇」。ちなみに、この中学時代にアメリカとニュージーランドへの合宿を経験している。



 全日本のジュニアクロスでも勝っているが、中3のシーズンオフに「もう疲れちゃって」と、瞬間的にバイクを降りた。再び火は消えかけたが、「やっぱり乗ってないと乗りたくなっちゃうんですよね」と、同年のシーズンオフ、YZ125に乗りはじめ、IBOPENに参戦することとなったのだ。



 将来の夢・目標について聞くと、「まだ想像できないけど、一番近い未来としてIBで勝ちたいし、IA2で走るのが目標」とこぢんまりしている。というのも、「MXGPやAMAを何回も見て日本とはレベルが違うし、そう、甘くないんです」とキッパリ。若いながら世界レベルを知っているがため目標が現実的なのだ。「アメリカでレースしたい!」など大きな夢を描く若者のイメージからすると少し物足りなさを感じる。



 それでも、世界への憧れは消えない。今年の8月、ヤマハ発動機販売が若手育成のため企画にした、モトクロス世界選手権第16戦スウェーデンGPに併催の「2025 YZ BLU CRU FIM Europe Cup SuperFinale」に選出され、出場したことも影響している。



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 「やっぱりみんなモトクロスへの熱意がすごい。ヨーロッパってちゃんと上までいけるレールが敷かれてて、ちっちゃい子どもたちから夢があるんです。85で勝ったら次。125で勝ったら次。SuperFinaleでも勝ったら次がある。だからみんなレースにめっちゃ懸けてきてるんです。その後もEMX125で勝ったらEMXのファクトリーに入れるし。日本だったらジュニアとかIBで勝ったらBLU CRUのチームに入れるみたいな。またそこで活躍したらいろんなところから声掛かって、ヤマハのファクトリー、ジェイさんの所に入れたりするんです。自分にはないモチベーションがみんなにはあるんで、そういう意味で強かった」



 さらに、モトクロスが盛り上がっている海外の環境に対しても、「MXGPにスウェーデンの地元ライダーにギフティングっていう選手がいて、その人がもうめちゃくちゃ速かったんですよ。トップライダーを全員抜いていくみたいな。それに向けてすごい数のファンがスウェーデンカラーの黄色と青の発煙筒を焚いたりして応援するんです。あれ、乗って時に見たら気持ち上がるじゃないですか」と、憧れがあるのだ。それでも地に足をつけて慎重に現状を把握し、目標を見定め確実にクリアしてく堅実さがある。



 今年を振り返ってもらった。「ジュニアから2階級特進でIBに上がったのですが、フルサイズではレースをしたことがないので、相手のレベルや技量など右も左も分かんなくてめっちゃ不安でした。いろんな人から6位ぐらいかなって言われていたんですが、開幕戦のヒート1でいきなり勝っちゃって。ヒート2は転倒したんですけど3位で総合優勝。そっから意外といけるかもって思いました」



 自信を持って臨んだ第2戦SUGO大会は、ヒート1でクラッシュに巻き込まれ最後尾から追い上げて7位も、ヒート2はスタートを決めて今季2勝目。「確信まではいかないけど、ちゃんと走ることができれば勝てるなっていうのがわかりました」と自信を深めていった。そして地元、埼玉のオフロードビレッジでは、ヒート1で3勝目をあげたが、ヒート2はミスで17位。続く広島は28位/10位、中盤に入り崩れるレースが続いた。本人は「広島だけグリットがメッシュではなく土だったので、スタートが厳しかった…」と分析しつつ、成績には物足りなさを感じている。



 「技量はあるほうだと思うけど、課題はメンタル面と気持ちが足りないこと。あとレースではもうちょっと考えて走んないとダメですね。オフロードビレッジのヒート2は最初2番手だったけどミスしまくって転倒してまとめきれなかったし、実際は2位で終わる選択肢もあったと思うんです」



 第5戦近畿大会はヒート1で9位、ヒート2でDNFと、大きくポイントを落としてランキングは6位。トップとは74ポイント差と残り2戦での逆転は簡単ではなくなった。それでもモチベーションを落とすことなく、ライディングの質やタイムの基準を次の目標となるIA2に置いて、未来のために自らを磨いている。



 「タイム的に見て、今自分がIA2を走ったら15位以内くらい。もしGYTRキットとか入れてYZ125をカリカリに仕上げてもらって、やっとトップ10に絡めるぐらいかな。でも漱也君とかIA2のトップのライダーにはまだまだです。簡単なコンディションで自分が調子いい時で3秒差ぐらいですね。だからこそIBを見てレースしていてはダメなんです」



 髙木選手はまだ15歳の少年である。過去にあったようにいつ心変わりしてもおかしくはないが、「漱也君たちと同じクラスで走れるのは楽しみ」と、少し先の未来にワクワクしている。ゆくゆくは日本を背負うのか、世界に飛び出るのか、それとも… ただ彼の未来が大いに楽しみだ。



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