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全日本モトクロス選手権「家族が喜ぶ顔が見たいから」。レディース、穂苅愛香選手の決意

レースに関連する広報発表資料をご覧いただけます。

2025年10月15日

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  2025年全日本モトクロス選手権も佳境に入り、残すところ2戦となった。今年もYZシリーズを駆るプライベーターがそれぞれ目標を掲げ、その目標を達成するために準備と努力を重ねている。ここではIA2、IBOPEN、レディースで成長を見せ、今後もさらなる成長が期待される若手プライベーターにクローズアップ。モトクロスをはじめたきっかけ、現在、未来などについて語ってもらい、彼らの実像と魅力に迫った。



 「四つ上のお姉ちゃんが先にやってたんですけど、バイクが苦手だったんであんまり出たくなかったんです。でもお姉ちゃんといつも一緒だったので“出てみよう!”みたいになって無理やりな感じで…」。穂苅愛香選手のモトクロス人生は小学校3年の時にはじまった。



 全日本への参戦は別のエピソードがある。「会場に行っても車から出ないみたいな。見るのも興味なかったので。でも、お姉ちゃんが出た全日本で、たまたま車から出たときに本田七海選手の走りを見て、めっちゃかっこいいってなって。逆にお姉ちゃん、めっちゃ遅いじゃんみたいな。これなら私のほうが速く走れるって思って、で、全日本出ようってなって、それからです」



 これが中学校1年生のとき。それから約8年、穂苅選手は今年初めて3位表彰台に立った。そしてレディースのトップライダーの一人として全日本を鮮やかに彩っている。しかしその立ち位置とは裏腹に、スタートはネガティブなものだったことに驚いた。



 「その頃(全日本参戦開始)にはもう心変わりしていました。割と負けず嫌いで、負けたくないとか、予選通過したいとか、そういう目標のためにやってました。あと、結果出るとうれしいじゃないですか。それで次はもっと次はもっとって、いつの間にか楽しいになってましたね」



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 ポジティブな心変わりにより、決して楽ではない環境の中でも彼女はモトクロスに打ち込んでいる。現在の穂苅選手は大学生である。しかも専門的な栄養学の分野を専攻しているため休みを取るのは簡単ではないし、授業のあとはステーキ屋でバイトもしている。しかも古株で、バイトリーダー的な存在のためこちらも休めない。そのため、平日はできてもジムトレーニングぐらいで、ライディングは土日に限られる。



 こうした厳しい現実を乗り越えているのはやはり明確な目標があるからだ。それはシンプル、「勝つ」ことである。しかしライバルは強力だ。現在のレディースで最強のライダー川井麻央選手(ホンダ)、箕浦未夢選手(ホンダ)、同じYZ85を駆る川上真花選手も強烈に速い。



 「川井選手たちとは力の差がありますが、一回でもいいから勝ちたいなって。もちろん実力はまだまだですけど、転倒が多いのでミスをなくすのもそうだし、メンタルがめちゃめちゃ弱くて… 気持ちの部分をもうちょっとどうにかしたいなって思ってます。でも一番の課題はスタート。スタートでライバルに前に行かれちゃうとパスするのも苦手なので厳しい。だから、まずスタートから前で争えるようにしたいなって思ってます」



 もう一つ、穂苅選手を支えるものがある。「モトクロスって家族の存在がとても大きいじゃないですか。特に子どもの頃は1人じゃ何もできないけど、家族だったらできる。それが一番の魅力かな。だから自分が勝ったときとかに、家族に喜んでもらいたい。それがモチベーションです」



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 それを裏付けるように家族とのエピソードはいろいろとある。初の3位表彰台獲得の知らせを聞いた姉は電話口でボロボロと泣いていたという。また穂苅選手のお父さんには、「愛香がバイクに乗るために仕事してるようなもんだ」と、よく言われるそうだ。自分が活躍することによって周りが喜ぶ姿が彼女の背中を押している。逆に穂苅選手が好成績を掴むことが家族のモチベーションになっているのだ。「だからもっと上いきたいってなります」と、穂苅選手はクスクスと笑った。



 現在大学3年である穂苅選手は、ライダー人生のゴールについても考えはじめている。「今、めっちゃ悩んでて。来年4年生で次が就職なんですけど。働きたいっていうのもちゃんとあるんですよ。今の大学は栄養系だけど、やっぱバイク関係もいいなって。仮にライダーとして終わりになったとしても、二輪業界にはちょっと携わりたいと思ってきました」



 バイクが苦手でレースには興味なかった女の子は、年齢を重ねモトクロスを楽しいと思うようになった。勝ちたい、家族や周りの人たちを喜ばせたい、二輪業界で働きたいと考えるようになった。近年はレディースに参戦するライダーが減りつつある中で、家族とともにモロクロスを愛し続ける穂苅選手は、一つのロールモデルとして貴重な存在となった。「本気で全戦回るのはもしかしたら来年までになるかもしれないけど、社会人になってもできれば続けたいです。自分が満足いくとこまでは」。土にまみれ、汗にまみれ、初勝利を目標に戦う穂苅選手にぜひ注目してほしい。



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