MFJカップJP250選手権 「YAMAHA YZF-R3 スカラシップ」を目指し、シーズン後半に向けた夏の走行会を実施
レースに関連する広報発表資料をご覧いただけます。
2025年8月19日

2025年シーズンの前半2戦(SUGO、筑波)を終え、8月23日のモビリティリゾートもてぎ(栃木)から、全日本ロードレース選手権とともに再開するMFJカップJP250選手権。ここから10月25-26日、鈴鹿サーキットでの最終戦までノンストップでの戦いが繰り広げられることとなります。
そしてここまで2戦を消化し、「YAMAHA YZF-R3 スカラシップ」独自のポイントランキングは以下のようになっています。
YAMAHA YZF-R3 スカラシップ対象ライダーランキング(第2戦終了時)
※インター、ナショナルの総合順位でポイントをつけています。
順位 | クラス | ライダー | SUGO | 筑波 | ポイント |
---|---|---|---|---|---|
1 | インター | #18 高平理智 | 25 | 9 | 34 |
2 | ナショナル | #28 森山浬 | 13 | 7 | 20 |
3 | ナショナル | #92 本間国光 | 11 | 6 | 17 |
4 | インター | #8 竹本倫太郎 | 0 | 16 | 16 |
5 | ナショナル | #14 片田泰志 | 8 | 5 | 13 |
6 | インター | #3 針尾大治郎 | 9 | 2 | 11 |
7 | ナショナル | #37 津田雄飛 | 7 | 3 | 10 |
8 | ナショナル | #21 今井勝也 | 6 | 0 | 6 |
9 | ナショナル | #64 塚脇椋太 | 0 | 0 | 0 |
ご覧の通り、高平理智選手(BLU CRU DOGFIGHT RACING)がJP250の開幕戦、スポーツランドSUGOでの総合優勝により一歩抜け出して2番手の森山浬選手(BLU CRU Webike Team Norick)に14ポイント差をつけている状況です。自力でトップに立つことができるのは4番手につける竹本倫太郎選手(BLU CRU AKENO SPEED)までの4名ですが、それ以下のライダーたちにも逆転の可能性は残っており、皆その可能性を信じて前を向いているのです。
そこで大切になるのが夏のインターバルです。若いライダーたちの伸び代は大人のそれよりも大きく、数ヵ月というわずかな時間でも、質の高い刺激を加えることで吸収力が高い若者たちは、若竹のように大きな成長を遂げることがあるのです。

その「刺激」としてヤマハ発動機が開催したのが「BLU CRU走行会」。時は7月末、会場は京都府の近畿スポーツランド。本間国光選手(BLU CRU Team Norick+MGR.)は都合により出席できませんでしたが、8名のライダーがエントリーしました。


また今回は、これまで使用していたECUのソフトについて選択項目が多かったことから、aRacer(ARRCのAP250でも使用されている)とヤマハ発動機で協業により項目を厳選、簡素化したECUのソフトをこの走行会で実装しテストを実施。問題なく使用できていることが確認できました。
さて、走行会のメニューは参加者を2組に分けてそれぞれが20分間の走行を繰り返し実施するというシンプルなものですが、自分自身を見つめながら、すぐそばでライバル同士が走行を通し、またタイムで互いを意識することで刺激を加え合える環境が特徴です。


さらに、ここに二人のアドバイザーが加わります。一人は現在、ヤマハ発動機のテストライダーあり、本スカラシップのメインアドバイザーである前田恵助選手。そして、もう一人が全日本のST1000にエントリーする井手翔太選手(AKENO SPEED・RC KOSHIEN)です。前田・井手両選手が、彼らの前後を走って引いたり押したりしながら刺激を入れ、走行後はコミュニケーションによって具体的に「刺激」を加えるのです。
井手翔太選手は、「春先の走行会から、みんな一段・二段進化しているのを感じました。レースを経験しているので当然ではありますが、マシンのコントロールがダントツにうまくなっています。9名のライダーはそれぞれの経歴が異なるので当初は大きなレベルの差がありました。特に経験の少なかった今井選手や塚脇選手は伸び代が大きかったこともありますが、それでも短期間でものすごい成長を見せてくれて驚いています」と、ファーストインプレッションを語ります。

各レースに帯同している前田選手も同様のインプレッションを持ったようです。「タイムも含めて、みんなの実力差が縮まりました。春の走行会の時に遅れていた選手たちが速いライダーたちにジリっと追いついてきたということ。また春は多くの転倒がありましたが、それがグッと減りました。これは、みんながJP250だけでなく地方選手権にも出場しながら経験を積み上げ、同時にSUGOと筑波を経てそれぞれが悔しい思いをして課題を見つけ、その克服に向けて乗り込んできたことでバイクへの理解度が増していったからだと思います」と、それぞれの努力の跡を感じとっていました。


参加しているライダーたちには、シーズン前半戦を振り返ってもらいました。まずスカラシップの獲得に最も近い位置にいる高平選手は、「開幕の1週間くらい前に手の指を骨折してしまいました。とりあえずポイントだけでもと思って出場したのですが、ドライは負荷が多くて全然ダメだったのに、決勝は雨が降って負担が減り自分もウエットが得意なのでトップ集団でレースをしていたら上位が転倒して優勝できました。
筑波はまだ怪我が完治しておらず負荷をかけないように走った中で予選は11番手。決勝ではスタートでギア抜けがあって順位を落とし、2番手集団の一番後ろまで挽回して7位と思った成績を残せませんでした。
やはり課題は勝ち切る力だと思っています。開幕も上位が転倒しての勝利だし、ARRCにも参戦していますが、こちらも勝てていないので、どうやってレースを勝っていくかをしっかり考える必要があります。後半に入ればライバルたちも成長してもっと速くなるだろうし、一つ落とすだけですぐに追いつかれる。チャンピオンを狙える状況なので完走が必須で、その中でどれだけ表彰台に立てるか、優勝できるかが勝負の分かれ目。次回のもてぎは毎回転倒してリズムを崩しているので、そこどう変えていけるかがポイントになります」と、自身の状況を冷静に分析して気を引き締めます。


前田、井手両選手が、大きく成長していると言及した一人、今井勝也選手(BLU CRU Team BabyFace)は、「2戦を終えていろんな課題が見つかりました。決勝までにある程度は仕上げることができますが、詰め切れない、まとめきれないところがあって、決勝でR3を速く走らせることに苦戦しているところがあります。もちろん技量が足りないということもありますが、SUGOは初めてのコースだったこともあって想像力が足りず、難しくて攻略できませんでした。後半戦はオートポリス以外のサーキットは走ったことがありますが、やはりどのコースも攻略を最優先にしてタイムアップを図りたいですね。ライバルたちはみんな上手いし速いけれど、後半戦までしっかりと走り込み、イメージトレーニングを重ねナショナルクラス、BLU CRUの中でもトップを狙っていきます」と、成長に決して満足することなく、課題を把握して上を目指しています。


塚脇椋太選手(BLU CRU Team BabyFace)も同様に決して満足していません。「ここまで2戦、自分のスキルもなく、置いて行かれている状況です。絶対的なスピードがないこともありますし、レース経験も足りなくてスタートはいいのですが、一度抜かれてしまうとどんどん順位を落としてしまう状況なので、どうすべきかを考えていかなればなりません。特に足りないのはコーナリングスピード。絶対的なスピードが足りず曲がらないので、ロスが大きくなっています。体力面、メンタル面などもライバルと比べてまだまだで、レースで力を発揮できていないところもあります。この前半2戦でわかった課題を克服するため、今は鈴鹿の南コースを拠点にして走り込みを行っています。今回の走行会では前田さんと井手さんに、進入スピードと曲げる技術を学びました。そして後半戦はみんなに少しでも追いつきたいと思います」。ここまでの成績を真摯に受け止めて、決して折れることなくむしろ課題を前に闘志を燃やしているのです。


2023年から3回目の参加となる津田雄飛選手(BLU CRU Team BabyFace)も苦戦している一人です。「行き切れていません。最初のフリーからどんどんタイムを伸ばしていくことが必要ですがセッティングも固められず、タイム上がらない状況。それは自分、ライダーの責任だし、なぜそれができないのかも把握できていないので、順位も全然ダメですね。課題としてはもう少し体重を落としたいし、セッティングの詰め方やタイムを出せる走り方などを自分なりに理解していく必要があります」と苦しい現状を話してくれました。
しかし、「今回は前田さんや井手さんから、ワンテンポ、アクセルを開けるタイミングが遅いとか、身体がバイクについていってないとか、いろいろな指摘によって改善のヒントをもらいました。もてぎ、オートポリスは得意なコースなのでトップ6には入って気持ちも上げていって苦手意思のある岡山、鈴鹿では、高いモチベーションで臨みたいと思います」と、この走行会を浮上のきっかけにする強い決意を感じさせてくれました。


2シーズン目を迎えた片田泰志選手(BLU CRU Team BabyFace)は、「SUGOも筑波もめっちゃ苦戦しました。今年から新しいバイクになったのですが、それに自分がアジャストできなくて、筑波では昨年の仕様に戻しましたがそれでもイマイチで。レースも集団での戦いになったのですが気持ちで負けてしまいました。この集団での競り合いで勝ち抜くことが一つの課題ですが、コーナーではスピードを残して入るとか、ブレーキをしっかり握って入るとかの切り替えはできるようになりました。また、インターバルの期間に追い込んでいるので、この走行会でもタイムも出ているし、20分走っても体力的にも余力があり成長を感じています。さらに消耗したタイヤ、バイクに自分を合わせることができるようにもなっています」と、前半の戦いを悔やみつつも成長を確認して自信を積み上げています。
そして、「関東勢が速いのですがそれにも負けていないし、夏のトレーニングの成果を出せているので、ここからさらに追い込んで、いろいろな武器を持った状態でもてぎに臨みます。ナショナルクラスでの優勝はマストですが、これはもてぎで達成したい。そしてBLU CRUでもJP250全体でもトップを狙っていけるようになりたいと思います」と、片田選手はより具体的な目標を掲げて後半戦に挑みます。


今年、他車からR3に乗り換えたライダーが多い中で、針尾大治郎選手(BLU CRU Nitro Ryota Racing)は、その乗り換えに苦労しています。「メンタル面の浮き沈み含め、開幕戦のSUGOから調子が悪く予選は9番手。そして決勝はスタートからトップグループにつけるも転倒して順位を落としたのですが、得意なウエットのコンディションに助けられ、巻きかして総合7位(クラス4位)となりました。筑波はマシンのセットアップに苦しんでバイクがまったく曲がらず、コーナーのスピードが上がらないため立ち上がりで離されるし、転倒しないように走ることで精一杯でした(クラス8位)。その後はチーム管理だったマシンを手元に置いて鈴鹿などで走り込んで、戦えるセットを作ってきました。
前田さんからアドバイスをもらっていますが、今年初めてR3に乗ったこともあり、まだ他車の乗り方が抜けていません。これまでは突っ込んでくるっと曲げる走り方でしたが、R3はブレーキを早めにリリースしてスムーズに乗る必要がありそれができていないのです。イメージは僕の好きなホルへ・ロレンソ選手のスムーズな走りです。後半戦はBLU CRUの中で抜け出したいしJP250全体でもぶっちぎれるように頑張ります」と、前田選手からのアドバイスでモチベーションを高めるのでした。


スカラシップ2年目の挑戦となる森山浬選手(BLU CRU Webike Team Norick)は、昨年から着実な進歩を見せて現在は高平選手に14ポイント差の2番手につけています。
「開幕戦のSUGOは自分の怪我からの復帰戦だったこと、第2戦の筑波は、ST600の地方戦に参加しているため、R6からの乗り換えに苦戦し思った結果を残すことができていません。ただ、600に乗り始めたことで、R3を乗りこなす技術面が上がっています。スピード感の違いからブレーキをしっかり握ることができるようになり、ツッコミではライバルのインを突いていけるようになっているし、切り返しもスムーズで、R3を自由自在に操れるようになっています。またR6だけで見ると、もてぎでは全日本のライダーが出ている中、予選でコースレコードを更新して総合2番手を獲得するなど順調に成長できています。
課題も明確で、R6とR3を交互に乗る場合は自分の実力を発揮できていないので、スムーズに切り替えてそれぞれで実力を発揮できるようにならないといけませんし、海外のライダーに負けない勝負強さをしっかりと身につけて世界のトップに向かっていきたいです」と、スカラシップの獲得だけでなく、その先にある世界を見据えて準備を進めていることがわかります。


高平選手とともにスカラッシップの有力候補の一人である竹本倫太郎選手は、「SUGOではドライではいい感じに走れていました。決勝はウエットになって、トップ走行中に後ろから接触されてノーポイント。筑波の予選では目標の1分3秒台に入れてコースレコードを更新できました。ところが決勝に向けてセットを変えたら一気に調子が狂ってレースペースが上がらなかったのですが、BLU CRUの中ではトップで終われました。
また、6月に行われたもてぎでのARRC(AP250)に参戦しましたが、ブレーキングで抜けないし、逆にズバズバ抜かれ、ハードブレーキングの課題が明白になり、今は近スポや鈴鹿などでハードブレーキングを意識して取り組んでいます。ランキングではインターで6位ですが、残り4戦あるのでまだ、トップの高平選手を逆転できる状況です。だからこそもてぎではFP1から確実にバイクを仕上げ、予選はコースレコードを狙い、決勝はまだ一回も勝っていないので、しっかりと勝ちたいと思います」と、開幕戦でのノーポイントを決して引きずることなく、諦めず逆転を目指しています。

全員が着実な成長を示し、同時に課題を把握して更なる高みを目指していますが、「R3スカラシップは、エントリーした中で毎年1名しか欧州に行けません。皆が同じ志を持つ仲間ではあるものの、勝ち抜いていかなければならないのです。中高生には厳しいことかもしれませんが、これからの人生を左右する戦いであることを理解して、それぞれがもっとハングリーになって欲しいと思います」。すでに高いレベルに達しているからこそ、井手選手は苦言を呈するのです。
そして前田選手は、「シーズンは後半戦に入りますが、自力でスカラシップを獲得することが厳しい状況のライダーもいますが、まだ4戦が残っており諦める段階ではありません。常に努力と準備は必要ですが、ここからは本当に勝ちたい気持ちが強いライダーが欧州への切符を手にすることになると思いますので、それをみんなに意識してもらえるようコミュニケーションを図っていきます」
2024年、2025年とスカラシップを獲得した高橋匠選手、久川哲平選手に続くのは誰なのか? 後半の初戦はモビリティリゾートもてぎを舞台に8月23日(土)に決勝が行われます。ここからさらに厳しい戦いが続くのです。

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