Yamaha R3 bLU cRU FIM World Cup 高橋匠選手が成長と課題を報告、「自分に足りないものが見つかった!」
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2024年9月11日
ヤマハ発動機は、全日本ロードレース選手権に併催されるMFJカップ JP250選手権を活用し、「世界を舞台に戦える日本人ライダーの発掘・育成」を目的とした「YAMAHA YZF-R3 スカラシップ」を2023年から実施しています。
これは、当社の車両を使用するクラブチームからJP250に参戦する若手ライダーを対象に、ランキング最上位につけたライダーを、当社のフルサポートでスーパーバイク世界選手権に併催の「Yamaha R3 bLU cRU FIM World Cup(R3 FIM World Cup)」に1シーズン派遣するスカラシップです。そして昨年、このスカラシップを獲得したのが高橋匠選手でした。
R3 FIM World Cupは3月、スペインのカタルニアで開幕。その後、4月のオランダを経て6月のエミリヤ・ロマーニャ、7月のイギリスと4大会8レースを終え、高橋選手はトップに67ポイント差のランキング6位につけています。
8月末、日本に帰国していた高橋選手にR3 FIM World Cupやライバルたちの印象、自身の成長や課題などについてお話を聞かせてもらいました。
「開幕前はトップグループの後ろにつけるのがやっとかな… という感じで苦戦すると思っていました。ところが開幕戦のレース1で6位といきなりトップグループでレースができたことから、想像以上に“やれる”という手応えを掴みました」と、当初のイメージに対してポジティブな印象を受けたと言います。
続く第2戦のレース1では2位表彰台を獲得し「もっといける!」という感覚を掴んだものの、その後の第3戦では9/12位、第4戦では7/4位と手応えとは裏腹な結果が続き、「簡単ではない」という現実を突きつけられたのです。さらにWorld Cup のチャンピオンは翌年からスーパーバイク300への参戦サポートがもらえますが、ライバルのゴンザーロ選手(#23)が序盤の3大会6レースで4勝とリードを築いたため、残りのレースは一戦も落とせない、転倒できないというプレッシャーを感じることとなりました。
「ここまで手応えはあるのに不完全燃焼なレースが続いています。結果が出ないのはなぜかを自分なりに考えると、いくべきところで勝負できていない、引いてしまっている」と高橋選手は分析しています。「World Cupの参戦ライダーたちは、“ここまでガツガツやるのか”というくらい本当にアグレッシブです。その中でレースをすることで、接近戦でのライン取りやブレーキングなどは成長を感じています。でもまだ全然足りません。レース展開を冷静に考える余裕はなく、迷ったら次の瞬間には自分のスペースがなくなり順位を落としているんです」
あらゆる局面での早く的確な判断力とその再現性、迷う前に動く直感力を養うこと。そしてラスト1周はさらにアグレッシブになるそうですが、「その中で勝ちパターンを作ること」など、自分に足りないもの、厳しい欧州でのし上がっていくための現実的な「課題」を発見できたのです。
この課題を克服するため日々の練習・トレーニングは欠かせませんが、高橋選手は「2戦を終えると日本にいったん帰るようなペースで欧州と日本を行き来しています。欧州の拠点はスペインですが、月〜土曜日までYZでのモトクロス、R3やYZを使ったミニサーキット走行をローテーションしながらバイク漬けの生活を送っています。日曜日はオフですが、ここもフィジカルトレーニングに当てています。ミニサーキットはMoto2やMoto3に参戦するライダーの練習場所になっていることもあり、ハイレベルなライダーたちとレースさながらのトレーニングができて、特に抜き差しの多いWorld Cupで重要となる、スリップの使い方やスペースを確保する技術などを日常的に学ぶことができる環境が整っています」
さらに高橋選手は8月前半、バレンティーノ・ロッシ選手が主宰するVR46 Riders Academyと当社が協力して実施する若手ライダーに向けたトレーニングプログラム、第13回「Yamaha VR46 Master Camp」に参加。「たくさんの経験をさせてもらいましたが、やっぱりMotor Ranchでのフラットダートがよかったです。GPで活躍したアンドレア・ミーニョさんも参加してくれたのですが、別次元の速さを見せつけられ、トップの厳しさを感じつつ、モチベーションを上げることができました」
現在、日本では「YAMAHA YZF-R3 スカラシップ」、アジアでは「Yamaha R3 bLU cRU Asia-Pacific Championship」で、高橋選手に続くライダーがしのぎを削っています。そんな彼らを意識しながら、改めて欧州に来て感じたこと、そして残りのレースで実現したいことについて話してくれました。
「ゴンザーロ選手がスタートダッシュを決めたことで、今年、僕がチャンピオンを獲るのは難しい状態になりました。そして最終目標はMotoGPですが、欧州に来てまだ自分がそのスタートラインにすら立ててないことがわかりました。だから、成長する速度をもっともっと上げることが必要だと思ったし、一戦一戦しっかりと頭を使って予習して、準備して臨むことが大事だと感じました。残りのレースは少なくなりましたが、“集団を抜け出す駆け引き”を自分のものにして、ここまで最高の2位を超える優勝を獲得し、ランキング3位以内に入りたい」と高橋選手は意気込みます。
そして、つい先日行われたフランスラウンドでは、レース2では7位も、レース1で今季2度目の表彰台となる3位を獲得しました。残るは1大会2レース、トップを目指しチャレンジを続ける高橋選手に、ぜひご注目ください!