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黒山健一選手が参加する日本チームがトライアル・デ・ナシオンで2位表彰台獲得!
2019年9月30日
超本気モードの極上エンターテインメント!
36回目を迎える国別対抗戦「トライアル・デ・ナシオン」は、世界の超一流ライダーが国ごとにチームを組み、その威信をかけ真剣勝負を繰り広げる競技性に加え、世界各国から集まるトライアルファンが参加選手全員を応援する観戦スタイル、会場全体で作るさまざまな演出など、ファン、ライダー、大会関係者のすべてが、この「トライアル・デ・ナシオン」を楽しむお祭りとして独特な雰囲気が流れている。
また大会の舞台となるイビサ島は、歴史的建造物や美しいビーチ・景観などリゾート地としてだけでなく、成熟したクラブ文化に代表される華やかでエキサイティングな雰囲気もまた、さらにエンターテインメント性を引き立てているのかもしれない。
そしてなによりも今大会に挑む、日本チームのメンバーがすごい。全日本11冠、YAMAHA FACTORY RACING TEAMの黒山健一選手。全日本IAスーパー6連覇中の小川友幸選手(ホンダ)。そして世界チャンピオンの経験を持つ現役TrialGPライダーである藤波貴久選手(ホンダ)という日本を代表とする3人が一丸となって世界の表彰台を目指すのである。
デ・ナシオンは、最高峰のWorldをはじめ、その下に位置するInternational、そしてWomenという3つのクラスが設定されており、日本チームは6ヵ国がエントリーするWorldに出場。各チームは15セクションを2ラップするが、それぞれ3人全員が各セクションを走行して上位2人の減点を合計していき、最終的な減点の合計で順位を決める。なお、持ち時間は1ラップ目が2時間45分、2ラップ目が2時間15分となり、1分オーバーするたびに1ポイントが加算されることとなる。
今大会は、島一番の観光エリアとなるイビサタウンが舞台となり、セクションは15のうちその多くが海沿いに作られた。下見、そして練習走行に参加した黒山選手はその印象について「例えば岩盤エリアは凹凸のある特殊なコンディションで、タイヤのブロックと岩盤の凸凹がかみ合うためバイク操作に力が必要で難しさがあります。また近年トレンドになっている自然の地形を活用した人工セクションも多いのですが、これはそもそも得意なのである程度やれる感触がありました」と話したが、今回は比較的、高難度のセクションが少なく、ミスの許されない神経戦が予想された。
予選は最下位も、日本チームはポジティブ!
ライダーたちが本格的に始動したのは27日(金)。この日にセクションの下見をし、翌28日(土)に練習走行と予選が行われた。パドックから予選会場までは数キロあるが、地元民やファンが沿道で見守る中、ライダーたちはマシンでパレードを行いながら移動。こうしたところにデ・ナシオンならでは演出が織り込まれている。
予選には1チーム2人が出場し、タイムの遅いチームから決勝をスタートしていく。日本チームは藤波選手と小川選手がエントリー。昨年は黒山選手と藤波選手が走りトップだったが、決勝は4位と表彰台を逃したため、ジンクスも含めてメンバーを変更して臨んだのだ。
「理想はライバルのラインチェックができる2・3番手でしたが、結果は最下位とクラスで最初にスタートすることとなりました。でも昨年は最後のスタートで20分ものタイムオーバーがあったため、最初にスタートできるのはとてもよいこと」とポジティブな黒山選手。
さらに決勝に向けては、「デ・ナシオンはお祭りの匂いのする大会であり、過去は100%で戦わずとも表彰台に立てる状況でしたが、近年はレベルも上がり昨年は4位と表彰台を逃しました。ファンの皆さんの期待に応えられなかったことも含め悔しくて、終わった直後には“もう一度このメンバーで戦いたい”と協会に話をしたほどでした。だから僕も1年間にわたりデ・ナシオンに向け準備してきたし、100%で挑む大会となりプレッシャーも大きくしんどかったですね」と語ってくれた。
抜群の安定感で1ラップ目を2番手で終了!
前評判では、世界チャンピオンのトニー・ボウ選手(ホンダ)を擁するスペインが本命とされ、残りの2つの表彰台をフランス、イギリス、イタリア、そして日本で争うことが予想されていた。こうした中、日本チームがWorld最初の出走チームとして登場した。
この1ラップ目は黒山選手が先陣を切り、チームメイトにセクションの状況、オブザーバーの判定基準などの情報とともに勢いをもたらした。こうして第1・2セクションを減点0で発進。第3セクションで初の減点2、第5セクションで減点1を加えるが、「目標はスペインに食らいつくこと。さすがに強かったですが、背中を捉えるとことができてモチベーションも高まったし波に乗れました」と言うように、日本は好スタートを切った。
ライバルは、イタリアが序盤で減点6を加えたほか、第6セクションでフランスが減点7、イギリスが減点6、ノルウェーは減点10と苦戦。日本はこの第6セクションと超難関の第9セクションも減点0で切り抜ける安定感を見せた。さらに、昨年は大量のタイムオーバーがあったことから、先行してセクションに挑むスピーディーなレース運びを展開。同時にクリーンを重ねることでボディブローのようにライバルたちにプレッシャーを与えていったのだ。
しかし、ここは世界最高の舞台、デ・ナシオンである。終盤に入ると日本チームにもミスが発生、特に最終15セクションで減点6となるが、それでもトータル減点12として1ラップ目を減点2のスペインに続く2番手で終了。フランス、イタリア、イギリスは後半に入ると安定感を取り戻し、それぞれ減点16、21、25と、戦前の予想通りのメンバーで表彰台を争うこととなった。
最強の武器「強固なチームワーク」で表彰台に登壇!
運命の2ラップ目は、「前の2人がクリーンすると3人目は走行をキャンセルするエスケープでとにかく時間を削っていきました」と日本はスピーディーな展開を継続したが、同時にチームワークもさえ渡った。「1ラップ目もありましたが、1人が減点5となっても2人がクリーンする状況を作れました。絶対的な信頼感は藤波選手にありますが、今大会は特定の誰かというわけではなく、みんなが助け合い補い合うことができ、チーム全体で盛り上がったのが大きかった」と黒山選手が振り返るように、日本は2ラップ目もスタートダッシュを決めて、8セクション連続で0を並べることに成功。一方、3番手で2ラップ目に入ったイタリアはミスが重なりトータルで減点40と後退したが、フランスとイギリスは中盤までを減点2に抑え、日本に食らいついてきた。
疲れの出はじめる終盤5セクション、第11-13セクションで0を並べた日本に対し、フランスが第11セクションで減点5とし、その差は拡大したが、勝負は最後までもつれ込む。日本は14セクションで減点1とするも、最終セクションで黒山・小川選手がともに減点5。これで最終走者の藤波選手が減点5となると減点数でフランスと並ぶこととなったが、この緊迫した場面を藤波選手がクリーンで切り抜け、トータル減点19とし、フランスの終了を待たずして2位以上を確定。残るスペインが最後まで崩れず減点4で優勝には届かなかったが、昨年の4位から再びジャンプアップを果たし、過去最高に並ぶ2位表彰台を獲得。改めてトライアル強国としての存在感を見せつけることとなった。
RESULT
順位 | チーム | 1ラップ | 2ラップ | タイム | 総減点 |
---|---|---|---|---|---|
1 | スペイン | 2 | 2 | 0 | 4 |
2 | 日本 | 12 | 7 | 0 | 19 |
3 | フランス | 15 | 8 | 1 | 24 |
4 | イギリス | 25 | 2 | 0 | 27 |
5 | イタリア | 21 | 24 | 0 | 45 |
6 | ノルウェー | 60 | 35 | 0 | 95 |
COMMENT
YAMAHA FACTORY RACING TEAM
黒山健一選手談
「今回は藤波選手、小川選手、そして僕で戦いたいとお願いして実現したデ・ナシオンだったし、6月のTrialEでも勝てず世界選手権では悔しい思いをずっとしてきましたが、現状ではベストの2位になることができてホッとしたし、やっぱりうれしいですね。また今大会でヤマハのマシンを使うのは僕一人。ファンの皆さんには“MotoGPやMXGPでヤマハは走っているのになぜTrialGPは走らないのか?”と聞かれ、注目され期待されていることを感じました。その中で高いパフォーマンスを発揮することができ、欧州のファンにヤマハとTYE250Fiが記憶に残るレースにできたこともうれしく思います。そして日本チームにたくさんの応援をいただきましたが、そのすべてが大きな力になりました。本当にありがとうございます。この後は全日本が続きます。これからも頑張りますので、ぜひトライアルを楽しんでください」
木村治男談(ヤマハ発動機 レース支援グループ)
「最高にエキサイティングな週末となりました。世界選手権での表彰台獲得を目標に1年間取り組み、それを実現できたことは満足と喜びでいっぱいです。すばらしいチームワークを発揮して、これぞチームジャパンでした。日頃世界との接触が少なく競技規則も全日本とは違うためハンデもありますが、その影響をまったく感じさせない黒山選手とTY250Fiは世界をうならせる走りを披露して常に大きな歓声に包まれていました。大会は接戦で苦しい場面もありましたが、それらのすべてを乗り越えてのゴール。ファンの皆さまの声援はしっかりとイビザ島に届いていました。みんなの力で獲得した世界第2位の表彰台です。応援ありがとうございました」