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「失敗や挫折を糧にして、成功をつかみ取れ!」伊藤勇樹選手が製造業に捧ぐ特別公演に挑戦
2019年6月3日
アジアロードレース選手権のASB1000クラスに参戦する伊藤勇樹選手は現在、YAMAHA RACING TEAM ASEANに所属しているヤマハの契約ライダーである。わずか2つしかないシートを自らの力で勝ちとったのだ。そのために様々なチャレンジを繰り返し、自身で道を切り開いてきたわけだが、その道のりは何度も大きな困難や壁にぶつかり乗り越えるという厳しいものだった。
5月24日(土)、その伊藤選手が千葉県で行われた「全日本製造業コマ大戦 G3房総半島かずさ場所」というイベントで特別公演を行った。一見レーシングライダーとの関係性は見えないが、実はいろいろな部分でリンクしているのだ。
このイベントは、製造業の技術者やものづくりを学ぶ学生などが、その技術で製作したコマを持ち寄り、最強コマを決定する大会である。伊藤選手は「僕たちライダーが使うバイクもその一部については製造業の皆さんが作った部品で成り立っています。こうした縁の下で支えてくださる皆さんへの感謝の気持ちと、レースを走るバイクを紹介し、実は製造業の皆さんが作ったものが、とてつもない性能をもった、すばらしいものであることを知ってもらい、バイクやレースを好きになってもらいたいという思いでした」と参加した経緯について話してくれた。
一方この企画を仕掛けた実行委員の方は「実際、今大会にエントリーしている中にもメーカーに部品を提供している会社があります。特別公演を通して、高い性能を持つバイクの存在と、それを操り多くの感動を与えている伊藤選手のことを知ってもらい、製造業の皆さんの自信やモチベーションが高まればという気持ちで依頼しました」という狙いで伊藤選手にオファーを出したのだと言う。
講演当日は、実行委員の皆さまを中心に、大会参加者、観客、伊藤選手のファンが集まり満員御礼。この光景に「レースよりも緊張する…」とそわそわしながら開演を待っていた伊藤選手だったが、いざスタートすると、丁寧に感情をたっぷりと込めた言葉で、観客の心を掴んでいった。
講演のタイトルは「“ここまで”と“ここから”」。伊藤選手が自身のライダー人生をトレースしていく流れだが、ここに山あり、谷ありのエピソードと、当時のナマの感情が事細かに織り交ぜられていた。モータースポーツの楽しさを知り、家族とともに好調なスタートを切る少年期。挫折と成功を繰り返し、最終的にシートを失って他のことに意識が向いていった青年期。そして再び立ち上がり、アジアで実力が大きく開花し、そこから現在の場所に上り詰めていくまでが語られた。
そして公演の締めに選ばれたのが以下の言葉だった。
「僕は一回、“ここまで”と言われて、レース引退まで追い込まれました。でも、今もライダーとして走っていることからもわかるとおり、“ここまで”と言われても諦めなかったことで、“ここから”が存在していたのです。バイクに乗る楽しさを思い出し、再スタートを切って大きな目標の一つだったメーカー契約ライダーとなったわけです。皆さんにお伝えしたいのは“ここまで”は無駄ではないということ。“ここまで”があったからこそ、“ここから”があるということです」
「製造業は現在厳しい状況にあります。だからこそ常に挑戦しなければならない我々にとっては、とても勇気付けられる内容でした」と実行委員の方が話されていたが、伊藤選手は、ものづくりは生みの苦しみがあり、失敗も常につきまとうことを知っている。そうした製造業の厳しさとライダーという厳しい人生を重ね合わせ、「成功も失敗も全てが次に進むための燃料である」ということを伝えたのである。
約40分間に渡る公演の最後はオンボードカメラで記録された伊藤選手の走行映像が流された。本人の解説とともにハイスピードでサーキットを駆けるバイクの様子に皆、驚きの眼差しを向ける。そして映像が終わると歓声とわれんばかりの拍手が伊藤選手に贈られた。
講演後、伊藤選手は「全日本製造業コマ大戦」にスペシャルゲストとして参戦。残念ながら、あっけなく一蹴され1回戦敗退という結果となったが、多くの方々にモータースポーツの存在とそのすばらしさを伝えただけでなく、参加者に親しみを持ってもらい、また製造業へのリスペクトを示し、モータースポーツへの架け橋を築いたのだ。
プロフィール
#76 伊藤勇樹
2016年よりYAMAHA RACING TEAM ASEANに所属し、アジアロードレース選手権(ARRC)のSS600に参戦。今年は、新たにスタートしたASB1000クラスに同チームより参戦中で、開幕戦マレーシアのレース1で転倒リタイアという苦しいスタートを切ったが、続くレース2で3位表彰台。さらに第2戦のオーストラリアでは両レースで3位を獲得し、現在はランキング5位につける。
ARRCの詳細はコチラ
出身地 | 千葉県 |
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生年月日 | 1991年11月14日 |
所属チーム | YAMAHA RACING TEAM ASEAN |
2006年 | 全日本選手権GP250ランキング 19位 |
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2007年 | 全日本選手権GP250ランキング 12位 |
2008年 | 全日本選手権GP250ランキング 9位 |
2010年 | 全日本選手権ST600参戦 |
2011年 | 全日本選手権ST600 ランキング 19位 |
2012年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 5位 全日本選手権ST600 ランキング 10位 |
2013年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 4位 全日本選手権ST600 ランキング 11位 |
2014年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 2位 全日本選手権ST600 ランキング 8位 |
2015年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 4位 全日本選手権JSB1000 ランキング 16位 |
2016年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 13位 |
2017年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 4位 |
2018年 | アジアロードレース選手権SS600 ランキング 9位 |
2019年 | アジアロードレース選手権ASB1000 ランキング 5位(第3戦終了時) |