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ホルヘ・ロレンソ選手インタビュー
「地球上で最高峰のレースで勝つために進化を続ける」
2014年12月2日
2014MotoGP最終戦バレンシアGPの終了直後の11月10日に行われたホルヘ・ロレンソ選手のインタビュー。手術を重ねたオフシーズンからシーズン序盤の苦悩とプレッシャー。3人の好敵手や自身のレースに向かう姿勢、そして3回目のチャンピオンを狙う来シーズンのモチベーションまで、幅広く語っています。
Q1.2014シーズンが終了しました。このシーズンの総括をお願いします。
JL「全体的なバランスという意味では、MotoGPにスイッチして以来、最高のシーズンだったとは言えないと思います。むしろ最悪のシーズンのひとつ、つまり2008年とそう変わらないと思っているのです。あの頃の私は安定感がなく、初めは好調なのに最後に成績を残すことができなかった。もちろん、今はそれよりはいくらか良くなっています。厳しい状況から始まって、少しずつ調子を上げていく。シーズンのなかで私自身もマシンも改良され、今年は、ザクセンリンク以降は成績も上がってきましたから」
Q2.シーズン中、最も苦しかったときはいつですか?
JL「カタール、オースティン、アルゼンチン。間違いなくこの頃です。最初のふたつでまったくいいところがなく、大きなミスもおかしてしまったので、その分を取り返すために好成績が欲しくてプレッシャーを感じることになってしまいました」
Q3.では、最もうれしかったのは?
JL「アラゴンの優勝、そして日本です。とくにアラゴンでは、プラクティスのすべてのセッションで上位に遠く及ばない状況だったので、あのような結果を予想していませんでした。ところが決勝で雨が降り、混乱のなかで思いがけず初勝利が実現したのです。そのほかには、ムジェロやシルバーストーンで2位を獲得したときもレースを楽しむことができました」
Q4.昨シーズンは厳しい状況のなかで、いつも以上の努力が必要になりました。このことが、今シーズン序盤の戦いに影響しましたか?
JL「そうは思いません。私はもともとハードワークやハードなトレーニングが好きですし、何よりレースを愛しています。レースを戦うなかでは、ときに静かな時間を持ち、体力や気力を回復することも必要になりますが、昨年の問題はおそらく、そうした時間が長すぎたことだと思っています。体のなかで悪さをしていた金属プレートを取り出すために何度か手術を受けました。麻酔手術を3回受けたのですから、開幕に向けた準備の時間はあまり残されていませんでした。それに加えてマシンの状態もまだ十分に整っていないとすれば、問題は大きくなるのです」
Q5.後悔はありますか?
JL「あるとすれば、手術のやり方をしっかり計画することができなかったこと。そして開幕に間に合わせるためのトレーニングが十分にできなかったことです」
Q6.貴重な教訓になりましたね。
JL「将来のために1シーズンを犠牲にしたと言ってもいいと思います」
Q7.では、あなたの最大のライバルはホルヘ・ロレンソ自身ということでしょうか?
JL「そうです。でもこれは誰にとっても同じです。すべてのライダーが、自分自身のなかに敵を持っていると言っていいでしょう。とくにトレーニングでは、自分の課題を克服するために自分自身と戦わなければならないのです。自分自身を高めていく意識を常に持っていなければ、地球上で最高峰のモーターサイクル・レースで勝つことなどできません。ここに集ったライダー全員が才能を持っており、その上さらにハードなトレーニングを行っているのです。もしも少しでも怠るとするなら、必ず負けるのです」
Q8.シーズン後半、体調が万全に戻ったときのあなたはとても強かった。来シーズン、もしも100%の状態で臨めたとしたら何を期待したら良いでしょうか?
JL「今のMotoGPのレベルはかなり上がっています。とくにトップ4は、スピード、安定感、集中力の面で非常に優れています。そのなかで一歩抜きん出るのは本当に難しいことですが、もしも体力的にも精神的にも完璧な状態で、加えてマシンもよく走ってくれるとするならすべてのことが楽になってくることは間違いありません。私の場合も同様に、体調が万全で、しっかり集中できていれば、勝利を目指していけるのです」
Q9.実生活同様、あなたは常に学び続け、目標に向かって高め続けることを求められています。限界は見えていますか?
JL「知識や経験を積めば積むほど、本当に必要なものとそうでないものが見えてきます。すべての技能を保ち続けることがどんなに難しいとしても、モチベーションを高くキープし、ウイークポイントを克服することに集中しなければなりません。目標を達成するのは、とにかく難しいのです。私自身、自分の限界はわかりませんが、まだもう少し頑張れると思っています」
Q10.ライダーとして、さらに改善できる点はどこだとお考えですか?
JL「速さを追求するために必要なことは、コーナー進入でブレーキを遅らせすぎないこと、加速を得ること、そして急激な減速をしないことです。ライバルたちに比べると、私はブレーキングにおいても、また一対一での戦いの場面でも劣っているところがあると思うので、そのあたりを改善していかなければなりません。2008年や2009年と比べれば間違いなく成長していると思っていますが、依然として学ぶべきことがたくさんあり、まだまだマージンがあると思っています」
Q11.M1について教えてください。
JL「今は素晴らしいマシンになっています。以前よりも力強くスピードを上げていくことができ、スピードそのものも上がっています。さらにはシャシーも非常に好感触です。これから改良していくべき点は、電子制御システムと、ウイークポイントとなっているブレーキングでしょう」
Q12.ライバルたちから盗みたいものはなんですか?
JL「バレンティーノから、世界選手権のタイトルを盗みたいかな(笑)! いやいや、もちろん冗談です。真面目な話、彼から盗みたいものは、レースのなかでのアドリブ的能力や、レースをコントロールする知性のようなもの。ダニからは技術の高さと、体重の軽さからくるコーナー立ち上がりでの加速力。またマルケスからは、あのメンタリティーを。彼は決してあきらめることがなく、どんなに厳しい状況に置かれても常に勝利を目指しています。ときにリスクをかけすぎるところもありますが、それくらいいつも挑戦し続けているのです」
Q13.アッセンでは恐怖を感じたと話していましたね。トップライダーのひとりとして、どのようにそれを認めたのですか?
JL「あのようなことは初めてではありません。2008年は何度も転倒し、怪我もしました。ドニントンのことを思い出しますが、コースに戻ると恐怖がそこにあり、それに打ち勝たなければならず不安になってしまったのです。こうしたことは、あとになって自分自身の最大の敵になってしまう可能性があるので、誰も認めようとしないものかもしれません。今シーズンも同様ですが、私にとっては、昨年のビッグクラッシュと負傷の経験からくる論理的思考だと思います。でもあのときは、怪我をしながらもしっかり走りきって5位を獲得することができました。1年経ってまた私は恐怖を感じましたが、本当のことを正直に話さなければならなかったのです。その結果、多くの人がそれに感謝してくれました」
Q14.今シーズンは初優勝までにかなり時間がかかりました。アラゴンではどのような気分でしたか?
JL「精神的に解放されました。勝利はすべての準備が整ったときに自然に訪れるものですから、むやみに追求したり、そのために強迫観念にとらわれたりしたことはありませんでしたが、あの時点まで私には勝利がなく、バレンティーノのほうが先にそれを手にしたことは確かな事実でした。だから今になって、あのときは解放されたと言いたいと思います」
Q15.今シーズン、どのようにライディング・スタイルを変えましたか?またそれはなぜですか?
JL「完全に変わったわけではありませんが、いくつかのバリエーションを持つようになったことは間違いありません。父とともにトレーニングを行うなかで、より速くなるために細かい修正を試したのです」
Q16.マルケスがMotoGPに登場したことは、あなたにどのように影響しましたか?
JL「マルクは非常に強く、たくさんの技能を持っています。そのひとつが、学習と習得の速さです。ブレーキングはとくに素晴らしく、まるでマシンと戯れるような特別なライディング・スタイルを身につけています。おそらくホンダのシャシーが彼のスタイルを可能にしているのだと思いますが、非常にフレキシブルです。それはスーパーモタードのスタイルのようなもので、一対一での戦いにおいては確かに非常に手強いライバルと言えます。彼はいつでもどこでも、すべてのセッションでトップを狙ってくるので、私たちにも大いに刺激になります。それがまた、彼に打ち勝とうとするモチベーションにもなっているのです」
Q17.一方、35歳のバレンティーノが未だに進化を続けています。彼の存在はあなたにとってどんなものですか?
JL「本当に素晴らしいと思います。バレンティーノは3世代も4世代も異なる世代と戦って、依然として高い競争力を持ち続けています。その成功の数々は誰もが印象的に覚えていて、今さら言葉にする必要もないでしょう。ドゥカティで走っていた2年間は大変なことも多かったと思いますが、ヤマハに戻ってからの表彰台や優勝といった活躍は、他の誰にも実現できなかった偉業です。このことは若いライダーたちの手本となって、進化の方法や、あきらめない心や、新しい時代に適応することを教えてくれるでしょう。昨年は何度か彼に勝つことができましたが、今シーズンはかなり苦労させられました。これも私にとってのモチベーションになっています」
Q18.それでもあなたは今、大きな記録に挑戦しようとしています。ケニー・ロバーツやウェイン・レイニーがヤマハで達成した3度のタイトル獲得という記録に並ぶため、また偉大なチャンピオン、ロッシ、マルケスに打ち勝つために何をしようと考えていますか?
JL「それについては、私は常にはっきりした考えを持っています。この世界で戦う限り、コースの中でも外でも最大限の努力をするということです。私はすべてのことにおいて100%で臨むことを好む人間ですから、日ごとに進化するために限界まで頑張ります。3つ目のタイトル獲得は実に素晴らしいことだと思います。その目標に向かって戦う来シーズンが楽しみです」