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バレンティーノ・ロッシ選手インタビュー
「僕にはライバルたちと戦える力が残っている」
2014年12月2日
思うような成績を残せなかった過去と、35歳という年齢を乗り越え、ランキング2位を獲得し復活を遂げたバレンティーノ・ロッシ選手が、2014シーズンを振り返るインタビュー。復活の理由、ライバルと自分との差、若いライバルたちと戦っていくために必要なこと、そしてヤマハとの関係等、多岐に渡って語っています。
Q1.2014シーズンが終了しました。今シーズンのパフォーマンスを評価していただけますか?
VR「今シーズンの走りには大満足。バランスがとても良かったですね。私の未来を決める重要なシーズンになったと思っています。昨年は納得のゆくパフォーマンスができなかったので、続けるべきかやめるべきかを考えなければなりませんでした。今シーズンの目標は毎回、上位争いに食い込み、トップ3とバトルして表彰台を目指すことでした。昨年はこれを常に実現させることができませんでしたが、今年はそれができたので満足しているのです。シーズン序盤に大きな変更を行いましたが、それが成功したことが良かったと思います。そのおかげでシーズンを通して決勝で力を発揮することができました。レース運びもライバルとのバトルもとても良かったと思っています」
Q2.今シーズンのM1についてどう思いますか? 序盤はパフォーマンス不足に悩まされましたが、シーズン後半になるとあなたもホルヘもM1で優勝することができましたね。
VR「M1はシーズンのなかで大幅に進化しました。それは主に、両チームのクルーの努力の賜物です。シルバーノやラモンをはじめとするエンジニアおよび技術者の全員が素晴らしい仕事をしてくれて、そのすべてがひとつになった結果、このように競争力の高い、勝てるマシンに仕上げることができたのです。ただ、もう少し早い段階でそれができなかったことは残念。マルクとの差のほとんどはシーズン序盤に広がり、あとから取り返すことが難しくなってしまいました。もしも、今からシーズンをスタートできるとするなら状況は違っていたでしょう。でも、それももういいのです。何よりも重要なことは、マシンが改良され、今はとても強くなったということですから」
Q3.今年の成績は本当に素晴らしかった。それは数字が物語っています。ライダーとして、また人間として、このように高いレベルまで復活できたのはなぜでしょうか?
VR「ここ数年あまりうまくいっていなかっただけに、今シーズンの結果については、ライダーとしても人間としても最高の満足感があります。ドゥカティにいた2年間はとても苦しかった。昨シーズンはかなり良くなっていたけれども、できるすべてを出し切るにはまだ不十分だったので、ときには大胆かつリスキーな厳しい選択もしなければなりませんでした。でも今シーズンは多くの表彰台と2回の優勝を成し遂げ、こうして今、バレンシアに戻ってこられたことをうれしく思っています。私にはまだ、優勝したり、毎戦、目標としていたロレンソやマルケスと優勝争いをしたりするだけの力が残っていることがわかったことで、よりモチベーションが上がり、楽しみも増えました」
Q4.シーズンのなかで最もハッピーな瞬間はいつでしたか?
VR「最高の瞬間は、母国ファンの目の前で成し遂げたミサノでの優勝です。イタリアでの優勝は実に5年ぶりだったので、本当に晴れ晴れとした気分でした。あのレースは自分自身、心から楽しむことができて、大きな感動ももらいました。しかし実際は、2回目の優勝のほうがより楽しかったのです。なぜならミサノではちょっとエキサイトしすぎてしまったから…。フィリップアイランドでは優勝の喜びをしっかり受け止め、十分に味わうことができたのです。本当に楽しかった!」
Q5.ヤマハに復帰してから2年間。ヤマハライダーであることは、あなたにとってどんな意味を持っているのでしょうか?
VR「私は100%ヤマハライダーであると思っています。レースキャリアは長く、そのなかでいくつものファクトリーマシンに乗ってきましたが、私のキャリアを代表するのは間違いなくヤマハです。このチームとともに仕事をするのは大きな喜びですし、M1も本当に気に入っています。だからこれからまた2年間、彼らとともにヤマハの一員でいられることをうれしく思っています。この場を借りて、ヤマハのMotoGPプロジェクトに携わるすべての人に感謝の気持ちを伝えたいと思います。彼らのおかげでこのような好成績を獲得することができましたし、ともに仕事をすることは本当に楽しかったのです」
Q6.苦しかった3年間を経て、今シーズンは身体的にも精神的にも十分な準備を行ってきましたね。どのようにして、このように見事な復活を可能にしたのですか?
VR「自分が依然としてこのゲームの一員でありたいと思っていることを、しっかり理解することだったと思っています。そのためには、過去の栄光を忘れて謙虚さを持たなければなりません。また、もしも本当に続けたいのなら、大変なハードワークが必要であることに気づかなければなりません。もしも過去の成功にこだわり過ぎて、たとえば“私は9回もチャンピオンになり、100回以上優勝したライダーだ”などと言うようならば、レースなどせず家にいたほうがいい。このスポーツは、ライバルも、タイヤも、マシンも、すべてが変化を続けています。だからそのなかで強くなるには、今以上にもっとハードに取り組まなければならないのです。もしそれができないなら、そこで終わりということです」
Q7. このスポーツの歴史が、そうした経験を乗り越えたライダーがいることを教えてくれたのですね。
VR「質問の意味は、私がなぜまだレースをするかということですか? 私がレースをする理由は、自分自身をもっと高めたいからです。サーキットを走ることが好きで、レースをエンジョイしているからです。長い年月が経ってもまだ、レースを続けるのには理由があるのです」
Q8.昨年のあなたは、自分自身に“どのくらいリラックスできている?”と問いかけなければならなかったと話していました。
VR「まず、自分自身に問いかけるのは、決して自分を信じていないからではありません。100%とは言えませんが、私自身、もっとやれると確信していたのです。もう何年も、ここにいるライバルたちと戦ってきて、何度か負けたこともありましたが、その一方で彼らに勝ったこともあるのです。去年のあの時点でまだレースを続けていたわけですが、35歳という年齢になった私に対して、ライバルたちは10歳も若い。ここからさらに3シーズン戦い続けるとするなら、その状況についてしっかりと理解し、また、これからは自分自身のあり方が最大の課題になってしまうのだということに気づかなければなりません」
Q9.今シーズン後半はライバルたちに鮮明なメッセージを送りました。あなたはどのようにしてライバルたちにプレッシャーを与えることができたのでしょう? またヤマハはどのようにして、あなたの10回目の世界タイトル獲得の夢を後押ししたのでしょう?
VR「いつも言っているように、私は今も信じています。今シーズンはトップを走ることができたので、その気持ちがさらに強くなりました。ロレンソは来シーズン、もっと強くなるでしょうし、マルケスは、私の2勝に対して13勝もあげてチャンピオンになりました。11回も多く勝っているのですから、その差は非常に大きいと言わなければなりません。このギャップを埋めるためには、チームとともに、シルバーノとともにもっと良い仕事をしていかなければならないし、ヤマハに手を貸してもらって今まで以上のハードワークをこなさなければなりません。今シーズンは、とくに序盤は、ホンダのほうが我々よりもずっと強く、前半戦はマルクにとってかなり楽な戦いになっていました。彼を苦しめるには、彼に近づくしかないのです」
Q10.長い年月が過ぎても、あなたは依然として最大限の努力をしています。過去を振り返ったとき、どんなことを感じますか?
VR「う~ん、そうですねぇ…。何度も優勝できたことはライダーとして大きな喜び。幸せに感じています。レースで勝ち、喜びを与えてくれる世界に生きてきたことを、とてもうれしく思っています」
Q11.では、これから先のことについて、2、3年後でなくもっと遠い未来についてですが、VR46アカデミー(若手ライダー育成プロジェクト)でのとても魅力的なプロジェクトがありますね。どう思いますか?
VR「すべてのプロジェクトが素晴らしいと思いますが、その一方で、いつかはレースをやめなければならないと思うと悲しい気持ちもあります。チームとアカデミーが助けてくれますが、いまと同じというわけにはいきません」
Q12.この間の記者会見では誰もがあなたを称賛し、あなたは伝説の、特別なライダーだと。どのように感じますか?
VR「誇りに思いますね。当然ながら35歳よりは25歳でいたいですが、今の自分を大いに誇ることができます。同時にライバルたちをリスペクトしていますよ。彼らは子供の頃に私のレースを見て、応援してくれていたのですから」
Q13.シーズン最終戦のバレンシアGPについてはどう思っていますか?
VR「バレンシアではこれまでに何度も苦労してきました。でも今年はポールポジションを獲得し、決勝では非常に難しく危険なコンディションのなか2位でチェッカーを受けることができたのですから、私にとっては大成功です。ひたすら集中力をキープし、ミスをしないことだけを心掛けました。マルクからも大きく離されていたわけではなかったので、終盤でタイヤの右サイドが消耗してしまったことは残念でしたけれど…。シーズン全体を見てもとても順調だったと言えますし、何度も表彰台に上り、2回優勝して、ランキング2位を獲得することができました。来シーズンがもっと良くなるよう、これからまた頑張らなければなりません。300ポイントまであともう少しというところでしたが、優勝回数ではマルケスのほうがずっと多い。シーズンを通してトップに近づけるよう、チームと協力してマシンを改良していく必要があります。来シーズンに向けて、新しいパーツやシステムがたくさん導入されるので、マシンテストが重要になります。とても楽しみです」
Q14.バレンシアでのテストが終了し、ようやく少し休むことができますね。何をして過ごす予定ですか?
VR「テストのあとは家でのんびりします。そしてその次は11月30日のラリー・オブ・モンツァ。そして12月と1月は完全な休暇を楽しむことができます。友人たちとスノーボードをしたいと思っています。特別なことは何もありませんよ…」