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モトクロス世界選手権:チームのトップが予測する「2009シーズン」

モトクロス世界選手権:チームのトップが予測する「2009シーズン」 2009年3月27日

 YME(ヤマハモーター・ヨーロッパ)とリナルディ・グループとのコラボレーションにより、ヤマハはモトクロス世界選手権の過去10年間で、8つのタイトル獲得という前人未到の記録を実現した。そして2009年、ヤマハのファクトリーチームは、ヤマハ・モンスターエナジー・モトクロス・チームと名称を変更してMX1に臨む。
 イタリア人クルーにとってのホームグランプリであり、2009シーズンの開幕の舞台ともなるファエンツァで、6カ月前、劇的なチャンピオンを決めたD・フィリッパーツを擁するチーム。そのチームオーナーであるミケーレ・リナルディと、YMEレーシング部門マネジャーのローレンス・クライン・コールカンプが、間もなく始まる新たなシーズンについての見通しを語った。




ヤマハ・モンスターエナジー・モトクロス・チーム オーナー

ミケーレ・リナルディ

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1984年、イタリア人として初めて、モトクロス世界選手権のチャンピオンに輝いた。そしてブーツを脱いだ後もチーム・マネジメントを担っていくつもの栄冠を積み重ね、YRRD(ヤマハ・リナルディ・リサーチ&デベロップメント)の監督として、モーターサイクル・スポーツの発展に大きな影響を与えてきた。そして、その技術部門の仕事が実を結び、多くのライダーを表彰台に導いた。


ミケーレ、もうすぐファエンツァで開幕戦が行われますが、その地でチャンピオン獲得を祝ったのがほんの数カ月前のことです。この間、チームはどのように過ごしてきたのですか?

オフシーズンの経過は順調で、チームもライダーも予定通りに準備を進めてきました。ジョシュは、昨シーズンは脚に問題を抱えていましたが、今では良くなりすべてが万全の状態です。

2008年のファエンツァは、場所、人、またデビッドの加入一年目であることを考えて、あなたの長いキャリアのなかでも特別なものとなったのではありませんか?

はい、まさにその通りです。正直なところを言えば、昨年はデビッドよりもジョシュのほうがチャンピオンを獲得する可能性が高いと考えていました。ところがデビッドはすばらしい走りを見せてくれて、すべての要素においてしっかりとした成果を積み重ねました。チームに加入したばかりのライダーであることを考えても、我々にとっては大きなプレゼントであり、特別なものとなりました。

デビッドは昨年のシーズン中ずっとわずかなリードをキープする状況で、厳しい戦いだったのではないですか?

常に接戦でリードを拡大することができず、最初から最後まで安心できる瞬間はありませんでした。でもそのおかげで、最終的に手に入れたものが、より一層価値あるものに感じられ、ライダーにとっても我々チームにとっても、輝きを増した貴重なものになりました。

2008年はジョシュにとって厳しいシーズンでした。今年は、2007年頃のレベルに戻ることができそうですか?

2009年、ジョシュはきっと良い仕事をしてくれると信じています。でも2年前と比べれば、ライバルたちも成長していますから、タイトル獲得は簡単ではないと思います。

昨シーズンのMX1は非常に見応えのあるものでした。2009年も同じような展開になるとお考えですか? それともチャンピオン候補が数人に絞られるようになるでしょうか?

MX1は昨シーズンより激しい競り合いが展開されるでしょうし、レースの優勝者が増え、多くのライダーがタイトル争いに絡んでくることになるでしょう。

チームの体制や構造に変更はありますか?

いいえ、ありません。昨年の仕事ぶりに満足していますから、チームもライダーも昨年と同じです。強いて挙げるとすればトラックが新しくなったことです。正直に言うと、これについては少し残念に思っています。以前のものは8年間も一緒にレースを戦ってきたので、ヤマハとともに築き上げてきた成功の重要な一部でしたからね。

2009年型YZ450FMはどのようなところが変わっていますか?

今回は主に、マシンの操作性をこれまでと同レベルにキープしながら中高速域のパワーを向上させるため、エンジンの改良に取り組みました。今のところの成果は十分に満足していますが、これが2009シーズンの実際の戦いでどのような進歩につながるのかは、まだわかりません。また、KYB製前後サスペンションも新型に変わりました。

ホンダ、スズキ、カワサキと同様、ヤマハがYZ450Fにフューエルインジェクションを搭載するにはまだ時間がかかりそうですか?

私に言えることは、キャブレター仕様のYZ450FMがとても調子が良いということです。そしてヤマハがニューモデルを発表すれば、必ず今まで以上の力を発揮するようになるでしょう。

世界選手権はヨーロッパ以外の1戦を含めて15戦です。モータースポーツ、モトクロスを取り巻く現在の難しい経済状況の中で、これは適切なものだとお考えですか?

他のスポーツや活動と同様に、モーターサイクルスポーツも大きな影響を受けています。しかもこの状況が好転するまでには、あと2年くらいはかかるだろうと考えています。海外への移動費用はすべて我々の負担ですし、その他にも新しく義務づけられたエントリー・フィーの支払いも状況を厳しくしています。

長年にわたるレース活動と多くの勝利経験を経た今も、シーズン開幕を控えて気持ちが高鳴るようなことがあるのですか?

もちろんです。楽しみで仕方がありません。ライダー、スタッフ、マシンとすばらしい要素がすべて揃っていますし、それを率いる責任者としての自負もあります。




ヤマハモーター・ヨーロッパレーシング部門マネジャー

ローレンス・クライン・コールカンプ

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42歳のオランダ人、クライン・コールカンプはヤマハモーター・ヨーロッパのレーシング部門を管理し、スーパーバイク世界選手権、スーパースポーツ世界選手権を含む多くの組織を統括している。同社との関係はすでに18年間に及ぶ。


ローレンス、いよいよ新しいシーズンが始まります。そして今年も、チャンピオン・チームとしての参戦ですね。10年間で8回もトップに立つというのはどのような気持ちですか?

すばらしい、という以外に何もありません。ライダーとチームを誇りに思います。我々は常に目標を高いところに設定してきましたが、リナルディ+ヤマハが10年の間に成し遂げてきたことは、非現実的ですらあると考えています。しかし敢えてその理由を探すとすれば、ライダー、チーム、ヤマハが、それぞれ110%の力で頑張ってきたからに違いありません。ここまでの成果は容易に得られるはずはなく、また自動的に転がり込んだものでもありません。モチベーションを一定のレベルまで向上させ、精神面を高めていくことが、長年に渡り勝ち続けるための秘訣だと思います。

デビッド・フィリッパーツをヤマハに招いた責任者のひとりとして、昨年のファエンツァでの出来事が大きな自信になったのではないですか?

もちろんその通りです。我々はそのために仕事をしているのです。これが成果を量る唯一の物差しで、目指すところはナンバー1でなければなりません。デビッドやチームスタッフからあふれ出る感動が私の心にも真っ直ぐに伝わってきて、とても満たされた気持ちになりました。本当にすばらしい瞬間でした。

MX1はどのようになりそうですか? 2008年は非常に見応えある戦いになりましたが、2009年も同様の期待ができそうでしょうか?

ヤマハには長い間ステファンがいて、圧倒的な強さを維持してきました。「ベスト・モトクロス・ライダー」として数多くの記録を達成し、モトクロス界の枠を越えて広く人々の注目を集めました。このことはヤマハだけでなくこのスポーツにとって絶好の宣伝となり、MX1はトップカテゴリーとして注目されるようになったのです。そしてこの2年間は、多くのライダーに優勝のチャンスが巡ってくるようになり、コース上はより一層、激しい戦いになりました。こうした変化もこのスポーツにとっては良いことだったと考えています。そしてこの状況は2009年も続くでしょう。2010年からはMX2の最高年齢制限が実施されるので、MX1はトップカテゴリーとして、MX2は新人発掘のためのクラスとして注目が集まるようになるでしょう。この変化を私はポジティブに捉えていて、むしろ明らかに抜きん出たクラスを設定することによって、より広範にアピールしやすくなると思っているのです。限られた人数の「スター」に注目することでより分かりやすくなり、興味も広がっていくでしょう。彼ら「スター」は人々の心の中でイメージが作り上げられ、ファンの人たちは彼らのパーソナリティーにも興味を持つようになります。このスポーツをさらに普及、拡大していくためには「スター」の存在が非常に重要だと確信しています。

デビッドとジョシュは、シーズン開幕前のレースでも好調のようですね。


ふたりのこれまでの走りにはとても満足しています。もちろん、GPでの成績の重要さに比べ、開幕前のレースにおいては優勝に固執する必要もないのですが…。優勝はどんな時もうれしいものですが、それよりももっと重要なのが、レース環境の中でニューパーツのテストを行うことです。それと同時に、ライダーたちは開幕戦に備えて調子を整えていくのです。ふたりは今回、少し異なるアプローチをしていました。デビッドはすでに、ほぼ万全の状態まできていますが、ジョシュはひとつひとつ段階を踏んでファエンツァに備えています。でもふたりとも、すべてが予定通りに進んでいるので、3月29日には自信をもって勝利を目指していきます。

デ・カルリのチームについてはどうですか? 最高峰クラスにおいてヤマハが、過去最強の布陣ということになりそうですが...

アントニオの才能については誰もが知っています。MX2のタイトルを2回獲得した後、年齢を重ねてフィジカルが充実してきた今、MX1へのスイッチには絶好のタイミングだと言えるでしょう。ワイルドカードで出場しデビュー・ウィンを飾った2007年のイギリスGPを我々は今もよく覚えています。しかし彼はとてもクレバーですから、サンド・コースで優勝するためにはもっと力が必要だと気づいたのです。彼のような才能の持ち主は、トップクラスで頂点を目指さなければなりません。でも同時に、機を待ち過ぎてもいけません。彼には次のチャレンジが必要だったのです。また今シーズンはタネル・レオクが加入し、チームがMX1の経験者を得たことは、アントニオにとっても、またクラウディオ・デ・カルリによるマシン開発にとっても重要なこととなりました。

アントニオがMX2に出場しなくなると、ヤマハの体制は2005年以来初めて変化することになります。でもYZ250Fには引き続き、何人かの良いライダーが乗るのでしょうか?

昨年ランキング3位になったニコラス・オバンは有力なチャンピオン候補のひとりです。また怪我から復帰したデビッド・グァルネリもこれからは安定感を見せてくれるでしょうから、そこに加わってくるに違いありません。安定感と言えば、ザック・オズボーンにとっての最大の課題となるでしょう。彼が非常に速いことは誰もが認めていますが、優勝が不可能な時にリタイアを回避して少しでもポイントを獲得するようにならなければなりません。MX2の良いところは、若い才能がどのように成長するのかを見られることだと思います。アレッサンドロ・ルピーノやデニー・フィリッパーツは次のステップへ進み、ルイス・ラリユはヨーロッパ選手権からやってきて、徐々に世界レベルに慣れていくことでしょう。

キャサリン・プラムの怪我は非常に残念でした。ヤマハはこれによって、ウィメンズ・ワールド・チャンピオンシップについての考え方を変えることになるのでしょうか?

やはり少し変わると思います。我々はキャサリンのタイトル奪還をサポートしようと考えていましたが、今年は残念ながらそのようにはなりませんでした。一方で経済危機もあり、今は新たに別の女性トップライダーを捜すことはしないことになったのです。でもパルマ出身の若いライダー、チアラ・フォンタネシーに小規模ながらサポートしていきます。彼女は3Cレーシング・チームから、YZ125でウィメンズ・ワールド・チャンピオンシップに参戦します。

ヤマハはモトクロス世界選手権で長きに渡りすばらしい記録を残してきました。経済危機がモータースポーツに影響を及ぼすようになった中で、ヤマハが今まで同様のレベルでレースを続けていくことはYZファンにとっても励みになるのではないでしょうか。

レースへの投資をこれまで同様のレベルで続けることは、ここしばらくの間は非常に難しいことになるでしょう。でもレースは、依然としてヤマハのDNAの一部です。2009シーズンの我々の目標はMX1とMX2の両方でタイトルを獲得することで、そのためのマシン、ライダー、チームはすでに揃っています。でもそれと同時に、将来に向けて、レースに関するすべての要素を改めて考え直さなければならないことも確かです。チームやライダーにかかるコストやレースの日程、移動費用などに加えて、おそらく技術的な面でのレギュレーション変更もあり得るでしょう。それと同時にレースの面白さを維持し、パートナーやスポンサーの利益も確保しなければなりません。また、マーケティング部門や開発部門のためにGPから得られる利益を増やすことができれば、レースへの投資が正しいとする理由になるはずです。


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