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ヤマハ発動機のレースに関する広報発表資料をご紹介します。
F・クアルタラロ選手がMotoGPのタイトルを獲得 世界最高峰クラスでは2015年以来、18回目のタイトル獲得
2021年10月25日
2021年10月24日(日)、イタリアで開催されたエミリア・ロマーニャGPで、「Monster Energy Yamaha MotoGP」のファビオ・クアルタラロ選手が4位を獲得し、ファクトリーチーム加入1年目でMotoGP世界選手権の最高峰であるMotoGPのタイトルを獲得しました。
クアルタラロ選手はファクトリーチームでのデビュー戦となるカタールGPで5位獲得と健闘し、第2戦ドーハGPと第3戦ポルトガルGPで連勝を達成しました。第4戦スペインGPではアームパンプ(腕上がりと呼ばれる症状)に苦しめられ、その直後に手術を受けることとなりましたが、その後も好調を維持し、3回の優勝(イタリアGP、オランダGP、イギリスGP)を含む8回の表彰台(フランスGP、イタリアGP、ドイツGP、オランダGP、スティリアGP、イギリスGP、サンマリノGP、アメリカズGP)を獲得しました。
こうしたクアルタラロ選手の活躍により、ヤマハ発動機株式会社はロードレース世界選手権参戦60周年を迎えた年に最高峰クラスでの表彰台獲得数を755回としました。またライダータイトルにおいては、これまでにMotoGPでホルヘ・ロレンソ選手が3回(2010、2012、2015)、バレンティー・ロッシ選手が4回(2004、2005,2008、2009)。500㏄ではウェイン・レイニー選手(1990、1991、1992)、エディー・ローソン選手(1984、1986、1988)、ケニー・ロバーツ選手(1978、1979、1980)がそれぞれ3回ずつ、そしてジャコモ・アゴスティーニ選手が1回(1975)の栄冠に輝いており、クアルタラロ選手によって通算18回目のタイトル獲得となりました。
クアルタラロ選手とチームメイトの努力により、「Monster Energy Yamaha MotoGP」と当社は現在も、チームランキングとコンストラクターズランキングの争いも展開しています。最終戦のバレンシアGPまでライダータイトルに加え、チーム、コンストラクターを含めた三冠獲得を目指し、クアルタラロ選手とフランコ・モルビデリ選手らとともに全力を尽くします。
日髙祥博談(ヤマハ発動機株式会社 代表取締役社長)
「はじめに、クアルタラロ選手のタイトル獲得を心から祝福したいと思います。彼がYZR-M1の性能を最大限に発揮する才能を持ち、当社が持つ大きな夢を共有していることはわかっていました。そして今、彼は努力と情熱、そしてエキサイティングでありながらクリーンな走りで夢を実現させたのです。
この共通の目標をともに達成できたことに感動しています。グランプリ参戦は当社の伝統的な活動としてレーシングDNAを育み、このDNAは製品にも浸透しているのです。当社は今シーズン、グランプリの頂点に復帰するという明確な目標を持っていました。クアルタラロ選手とともに5回の優勝と10回の表彰台を獲得し、実に6年ぶりにその目標を達成することができました。これは素晴らしい成果です。しかもこのような激しい戦いの中でそれを達成できたことを誇りに思います。
ヤマハを代表し、すべてのスポンサーおよびパートナーの皆様に心より感謝申し上げます。皆様のサポートがなければ何ひとつ達成することはできませんでした。新型コロナウイルス感染症の拡大に見舞われたこの難しい2年間も、常に当社を応援し続けてくれました。まさに、このタイトルは皆様のものでもあるのです。
MotoGPやその他のモータースポーツが多くのファンにとって活力の源になっていることが、この2年間で、より一層、明らかになりました。厳しい時代においてもグランプリは多くの人々にとって明るい光になったのです。私はここで、世界中のファンの皆様の揺るぎないサポートと、今年もまたコロナによる規制を忠実に守ってきた当社スタッフに感謝の気持ちを伝えたいと思います。彼らは何週間も家族から離れ、世界チャンピオンになるという目標のため100%の努力を続けてきたのです。
当社は創業以来、すべてのお客様に感動をもたらすため常に努力してきました。これは特別な価値のあるものに出会ったときに感じる深い満足感と大きな興奮を表す言葉です。今日のチャンピオン獲得は間違いなくそうした瞬間のひとつで、クアルタラロ選手と当社のファンが増えていくなかで多くの人に喜びをもたらす重要な出来事となりました」
リン・ジャービス談(ヤマハ・モーター・レーシング・マネージング・ダイレクター)
「クアルタラロ選手がエミリア・ロマーニャGPで早くもタイトルを獲得したことを心から祝福します。私たちは彼の才能を十分に理解していたので、今年、ファクトリーチームへの加入を要請しました。彼は私たちの期待に応えるだけでなく、それを超えてしまったのです。
クアルタラロ選手は常にファクトリーライダーになることを夢見てきて、将来にも大きな希望を抱いていましたが、チームの変更は大変なこともあります。新しいチームに適応しながら、ファクトリーライダーとなったことによるメディアからのプレッシャーにも対処しなければなりませんでした。しかし彼は難なくチームに溶け込み、ファクトリー仕様のYZR-M1で、ドーハGPとポルトガルGPで優勝しました。この時すでに、特別なシーズンになると確信しましたが、続くスペインGPでは大きな困難に見舞われました。アームパンプを解決するため、タイトル候補にとっては非常に大切な時期に手術を受けることになったのです。このことは精神的に大きなダメージになると予想されましたが、彼はこの時も動じませんでした。そして次のレースで復帰し、表彰台争いを展開したのです。
彼のメンタルの強さに、私たちは感動を覚えました。アームパンプに見舞われたスペインGPでの13位を除き、調子の良くないときも8位を下回ることはありませんでした。また、現在までポイント圏外でフィニッシュしていません。
これらの成績が示すように、クアルタラロ選手は何事にも全力で取り組み、タイトル獲得のプレッシャーにとらわれないよう自らを管理していました。純粋に才能と技術だけでフェアに戦い、ライバルたちに打ち勝ってきたのです。そして何よりも、勝利と向上のために絶え間なく努力し、楽しむことを両立させてきました。これはヤマハで最も成功したライダーであるバレンティーノ・ロッシ選手に見ることができた優れた才能と言えます。
クアルタラロ選手、チーム、ヤマハのシナジーにより実現したこのタイトルは特別なものです。クアルタラロ選手と仕事をしたMonster Energy Yamaha MotoGPのスタッフ、また日本のヤマハのモータースポーツ開発部門エンジニア、ヨーロッパを拠点とするヤマハ・モーター・レーシングのスタッフにも感謝と祝福を伝えたいと思います。クアルタラロ選手の素晴らしい成績は彼らの努力の賜物です。チームおよびコンストラクターのタイトルはまだ決まっていませんが、残り2戦でも私たちは100%の力を出し切ります」
ファビオ・クアルタラロ選手談(Monster Energy Yamaha MotoGPライダー)
「まだ信じられない気持ちです! うまく話せませんが、ただ驚いています。もう少し時間が経ったら、もっとたくさんのことを話せるかもしれません。今はただ、夢の中にいるようです! 家族も一緒なので、今夜、そしてシーズン終了まで、この喜びを存分に楽しむことになるでしょう。
もちろん、バニャイア選手がこのような形でレースを終えることを望んだわけではありません。彼が無事で本当に良かったと思っています。チャンピオンになりましたが、今は言葉が出ません。泣くだけの水分も一滴も残っていません。とにかく最高の気持ちですが、その感覚を表現することができません。家族の大部分、そしてサーキットで家族とともに表彰台に立つこと…今は言葉が見つかりません。
MotoGPはとても長い歴史があります。そのなかでフランス人初のチャンピオンになれたことを非常に嬉しく思います。ヤマハにとってもまた、とても素晴らしいことです。2015年以降タイトルから離れていましたが、今日それをまた取り戻しました。最高の気分です!」
ファビオ・クアルタラロ選手、MotoGPタイトルへの道のり
2015年、Moto3で世界選手権にデビューから、ファクトリーチームでの1年目、速さと成熟した走り、困難を乗り切る強いメンタルでMotoGPタイトルを獲得したクアルタラロ選手のサクセスストーリーを振り返ります。
2013年と2014年にFIM CEVのMoto3チャンピオンに輝いたクアルタラロ選手は2015年、15歳でMoto3参戦を開始しました。当時からチャンピオン候補とされ、2戦目のアメリカズGPで初表彰台を獲得すると、オランダGPで再び表彰台に上りました。シーズン終盤は足首の負傷により欠場しましたがランキング10位と健闘。順風満帆ではなかったものの、今後を期待させる成績を残したのです。
2016年もMoto3に参戦しランキング13位。2017年からはMoto2にステップアップし、同じく13位を獲得しました。いずれも表彰台に立つことはありませんでしたが、2018年もMoto2にエントリーし、カタルニアGPでMoto2では初のポールポジション獲得と優勝を成し遂げ、オランダGPでは2位表彰台と、ランキング10位を獲得しました。また、この年の8月には、2019年からヤマハのサテライト・チームとして新たにスタートを切る「PETRONAS Yamaha SRT」にフランコ・モルビデリ選手とともに加入することが発表されています。
その2019年は、7回の表彰台と6回のポールポジションを獲得し、MotoGPへの適性を証明すると、最終的にはルーキー・オブ・ザ・イヤー、インディペンデント・ライダー・ランキング1位、総合ランキング5位という輝かしい成績を残しました。
2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を受けて7月からシーズンがスタート。第2戦でMotoGP初優勝、第3戦では連勝を飾ると、第9戦カタルニアGPでは3回目の優勝を成し遂げました。この勢いを最後まで維持することはできませんでしたが、全14戦で4回のポールポジションを含め、フロントローは合計9回と活躍するなど、あとはタイトル獲得のための安定感が課題となりました。
そして2021年、憧れのバレンティーノ・ロッシ選手の後を継いで「Monster Energy Yamaha MotoGP」に加入し、MotoGPでの3シーズン目をスタートしました。期待が高まる中、初戦で5位と順調にファクトリー・デビューを果たすと、これに満足することなく翌週のドーハGPでは、ファクトリー・チームで初優勝、ポルトガルGPでは連勝を達成。続くスペインGPでは3連勝を目指しトップを走行中にアーム・パンプ(腕上がり)に見舞われ13位となるも、手術によって素早く解決し、わずか1週間後のフランスGPで3位を獲得したのです。
さらにYZR-M1との相性が良くないと言われるイタリアGPを優勝で終えるも、続くカタルニアGPでは3位でチェッカーを受けながら、ふたつの3秒間ペナルティにより6位に後退。クアルタラロ選手はこうした試練を乗り越え、ドイツGPでは3位、オランダGPで今季4勝目とランキングトップでシーズン前半戦を終えました。
シーズン後半の初戦、スティリアGPは序盤にレッドフラッグが出る展開の中でも冷静さを保ち3位。ランキングではリードを40ポイントまで拡大しました。翌週のオーストリアGPは、残り3ラップで雨が降り出し、ウエット用マシンへの交換で14番手まで後退しましたが、冷静な走りで7位と確実にポイントをゲット。さらに2週間後のイギリスGPでは、レースを完ぺきにコントロールして5勝目をあげ、リードを65ポイントへ。続くアラゴンGPは苦戦を強いられながらも8位として8ポイントを獲得、トップを堅持しました。
第14戦サンマリノGPでは、全27ラップの最後までチャージを続け2位としましたが、この表彰台を次への追い風とし、第15戦アメリカズGPではトップを追いながら後方をケアする成熟した走りで2位。これによりランキング2位との差を52ポイントまで拡大し、チャンピオンに王手をかけて迎えたエメリア・ロマーニャGPを4位で走り切り、自身初、ヤマハにとっては通算18回目となるMotoGPタイトルを獲得しました。
ファビオ・クアルタラロ
グランプリ初出場 | 2015年/カタールGP(Moto3) |
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グランプリ初勝利 | 2018年/カタルニアGP(Moto2) |
グランプリ勝利数 | 9回(MotoGP:8回、Moto2:1回) |
表彰台獲得数 | 24回(MotoGP:20、Moto2:2回、Moto3:2回) |
フロントロースタート数 | 43回(MotoGP:36回、Moto2:5回、Moto3:2回) |
ポールポジション獲得数 | 18回(MotoGP:15回、Moto2:1回、Moto3:2回) |
ファステストラップ獲得数 | 10回(MotoGP:8回、Moto2:2回 |
世界チャンピオン獲得数 | 1回(2021年/MotoGP:1回) |
2021年 | 世界選手権MotoGP チャンピオン(267ポイント) |
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2020年 | 世界選手権MotoGP ランキング8位(127ポイント) |
2019年 | 世界選手権MotoGP ランキング5位(192ポイント) |
2018年 | 世界選手権MotoGP ランキング10位(138ポイント) |
2017年 | 世界選手権Moto2 ランキング13位(64 ポイント) |
2016年 | 世界選手権Moto3 ランキング13位(83ポイント) |
2015年 | 世界選手権Moto3 ランキング10位(92ポイント) |