MotoGP シーズンレビュー
MotoGPの2014年シーズンをご紹介します。
魅せた!シーズン後半から怒涛の巻き返し
ロッシとロレンソがランキング2位/3位
出足が明暗を分けたMovistar Yamaha
2014年、ヤマハはロードレース世界選手権MotoGPクラスに3チーム6人のライダーを送り込んだ。その中心はもちろん、ホルヘ・ロレンソとバレンティーノ・ロッシ、2人のチャンピオン経験者を擁するファクトリーチーム、Movistar Yamaha MotoGPである。
しかし、シーズン序盤はYZR-M1とタイヤのマッチングに悩まされ、思うようなレース運びができない。特に昨シーズン中盤で転倒が重なったロレンソは、オフの期間を怪我の治療に充てたため、2014シーズンに向けた準備が十分とはいえなかった。開幕戦カタールGPこそロッシが2位と好スタートを切ったものの、ロレンソは転倒リタイア。第2戦アメリカズGPではロッシ8位、ロレンソ10位に終わり、狙っていたスタートダッシュをうまく決めることができなかった。
それでも、第3戦アルゼンチンGPでロレンソが3位表彰台に立ち、ヨーロッパラウンドがスタートする頃から、ライダーふたりの調子は徐々に回復。公式テストなどを経てマシンの調整も進み、ロッシがスペイン、フランス、イタリア、カタルニアと4戦連続の表彰台を獲得。イタリアではロレンソと2位、3位を分け合うなど、成績も着々と上がり始めていた。
夏期休暇が明けた第10戦インディアナポリスGPでは、ロレンソがマルケスと激しい優勝争いを繰り広げて2位。ドイツGPに続く今季4度目の表彰台に上り、「シーズン序盤は苦しい状況が続いた。マシンのフィーリングが良くないし何度もミスをした。でも今は、マシンが非常に乗りやすくなり、自分自身の体調も十分に回復した」と完全復活を宣言。その言葉どおり、マルケスの連勝記録がストップした第11戦チェコGPを挟み第12戦イギリスGPまで、ロッシとともに3戦連続の2位・3位ダブル表彰台を獲得した。
そして第13戦サンマリノGP。ロッシのホームコースで、待ちに待ったヤマハの今季初優勝が実現する。ふたりは予選から絶好調。ロレンソが今季初のポールポジション、ロッシも3位を獲得し、そろってフロントロウから決勝に臨んだ。ロッシは4ラップ目にトップに浮上。その後しばらくはマルケスも追随するが、ロッシを逃すまいとペースを上げたところで転倒。2位に浮上したロレンソは、ジリジリと後続とのリードを広げていくが、ロッシに追いつくまでには至らない。最後まで安定した走りをキープしたロッシが今季初優勝、そしてロレンソとの1-2フィニッシュを達成した。
ランキング2位をかけた白熱の一騎討ち
こうなると、ふたりの勢いは相乗効果でますます加速。ロッシに先を越されたロレンソが第14戦アラゴンGPで今季初勝利を挙げ、第15戦日本GPでも連勝。アラゴンでは雨の状況を読んでマシン交換を決断したことが最大の勝因となったが、日本での2勝目は後続に大差をつけた実力の勝利だった。この時点で、開幕からトップを走り続けたマルケスが312ポイントを獲得し、チャンピオンが決定。その後の注目は、230ポイントでペドロサに追いついたロッシと、それを3ポイント差で追うロレンソ、三つ巴のランキング2位争いに移った。
ところが、残り3戦となった第16戦オーストラリアGP、ペドロサが他車と接触してリタイア。続くマレーシアGPでも転倒リタイアし、ランキング2位争いから脱落。ロッシとロレンソ、チームメイト同士のバトルはいっそうヒートアップすることとなった。
そのなかで、先手を取ったのはロッシ。もともとYZR-M1と相性が良いオーストラリアGP、フィリップアイランドのコースで、ベテランならではの安定した走りを披露。タイヤ選択をミスした2位ロレンソに10秒の大差をつけ、今季2度目の1-2フィニッシュを表彰台中央で喜んだ。続く第17戦マレーシアGPでは、マルケスに久しぶりの優勝を譲ったものの、先行するロレンソを中盤で逆転したロッシが2位に浮上。そのまま今季8度目となるダブル表彰台を獲得した。
しかし、ふたりの決着は意外な形で訪れた。決勝途中から雨に見舞われた最終戦バレンシアGPで、12ポイントのビハインドを負うロレンソは、いち早くマシン交換する賭けに出たが失敗。5周を残してリタイアし、2位フィニッシュしたロッシがランキング2位を獲得。ロレンソは惜しくも3位となった。
P・エスパルガロとスミス、A・エスパルガロがランキング6位/8位/7位
Monster Yamaha Tech 3には、2013Moto2チャンピオンのポル・エスパルガロが新加入。初戦カタールGPこそマシントラブルのリタイアに終わったが、第2戦アメリカズGPで早くも目標の6位入賞を達成。さらに第5戦フランスGPでは初のフロントロウ(予選2位)スタートを果たし、シーズンベストの4位を獲得するなど合計136ポイントを挙げる活躍で、サテライト勢トップのランキング6位。ルーキー・オブ・ザ・イヤーも受賞した。
MotoGP 2年目のチームメイト、ブラッドリー・スミスは開幕戦でいきなりフロントロウ(予選3位)を獲得。第16戦オーストラリアGPではロッシ、ロレンソと並んで3位表彰台に上る活躍を見せ、P・エスパルガロ、NGMのA・エスパルガロと最後までランキング6位を争ったが、雨の最終戦で転倒してランキング8位となった。
YZR-M1でオープンカテゴリーに参戦したNGM Forward Racingは、開幕戦カタールGPフリー走行から好タイムを記録したアレイシ・エスパルガロが、決勝でも4位。その後も第8戦ダッチTTで自身初のポールポジション、第14戦アラゴンでは初表彰台(2位)を獲得。合計126ポイントでランキング7位、オープンカテゴリーチャンピオンとなった。
長年にわたりMotoGPや世界選手権スーパーバイクで活躍したベテラン、コーリン・エドワーズは母国アメリカで開催された第10戦インディアナポリスGPを最後に引退。第11戦からはアレックス・デ・アンジェリスが代わって出場した。