ふたつのドライブユニットで広がるPASワールド
ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。
ヤマハは1990年代後半からPASドライブユニットを欧州メーカーにOEM供給した実績があり、長年PASドライブユニットの熟成を図ってきました。そうした中、ドライブユニット熟成の節目となったのが2013年に誕生した「PWシリーズ」で、欧州市場のニーズにフィットさせることを照準に開発した新ドライブユニットです。2013年秋よりジャイアント・エレクトリック・ビークル社へ供給を開始、そしてヤマハ製ドライブユニットを搭載したGIANTブランドの電動アシスト自転車が誕生、またヤマハはその後、欧州の2つのメーカーにも供給を開始しています。
実はこのユニットは、国内向けのものとは仕組みの上で相違点があります。日本向けは”チェーン合力”方式と呼び、モーターからのアシスト力は、専用ギアを経てチェーンに伝わり後輪へ伝わる構造です。園児送迎や買い物など、比較的ペダル回転が緩やかな用途に適しています。
一方、自転車文化の歴史が長い欧州では、伝統的な自転車のスタイルを活かしたいという趣向が強く、「PWシリーズ」はこれに呼応。人の力とモーターの力がドライブユニットの中で融合され、そのままチェーンをまわして後輪軸に力を伝えます。ドライブユニットが直接クランクを回転させるので、伝統的な自転車のスタイルそのままに、外装変速にも対応が可能なシステムです。
“楽しむアシスト”を提唱するロードスポーツ「YPJ-R」誕生
欧州で好評の小型ドライブユニット「PWシリーズ」は、2015年12月に日本に戻ってきました。「PWシリーズ」搭載の新感覚のロードバイク「YPJ-R(ワイピージェイアール)」(#1)が国内の製品ラインナップに加わったのです。ヤマハ製の電動アシスト自転車としては最軽量の約15kg、アシストのない領域でもスポーツ自転車としての快適な走行が可能な「YPJ-R」は、電動アシストのメリットを、発進・加速からスムーズに巡航領域につなげるために生かし、これまでの「楽するための電動アシスト」から「より楽しむための電動アシスト」へとバリューの転換を提唱するモデル。外装変速22段で、メインコンポーネントには「SHIMANO105」を採用。新開発の小型バッテリーは、走行時以外には付属のUSBアダプターでスマートフォンなどの電子機器の充電用電源として機能します。
ハンドル中央部のスイッチユニット(#2)には、マイクロUSBポートを装備、別売のライトやスマートフォンなどの電子機器への給電が可能となっています。高性能なスポーツ自転車と、アシスト機能・バッテリー装備のメリットをハイブリッドさせ、走りの楽しみの可能性を広げます。こうして、PASに織り込まれる電子制御は、様々な広がりを見せています。