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ヤマハの未来を描くひと Vol. 05

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働く機械に魅せられて

榛地 佐織 SAORI SHINCHI

PROFILE
プロダクトデザイン部 スカルプターグループ
静岡県生まれ。幼少時よりアニメやゲームに親しみ、青春時代はイラストや漫画を描くことに夢中に。大学では造形学部でコミュニケーションデザインを専攻。ウェブデザインなどを学んだものの、「立体のものづくりに携わりたい」と決意してヤマハ発動機に入社する。

プラモデルとの出会いと再会

「これまで登場した方々って、みなさんプロフェッショナルですよね。それに比べたら、私の趣味はまだまだです(笑)」
そんな控えめな言葉とともに、屈託のない笑顔でスタジオに現れたのは榛地佐織さん。彼女の“趣味”を撮影するにあたって、今回の取材はヤマハ発動機デザイン本部があるイノベーションセンター内のスタジオで行われた。彼女が大事そうに抱えてきた箱をそっと開けて見せてもらうと、その中にはきっと男性ならかつて一度は夢中になったであろう“あれ”が数体入っていた。1979年の放映開始から今年でちょうど40周年、いまもなお多くのファンを魅了し続ける日本を代表するテレビアニメのひとつ、機動戦士ガンダム。榛地さんはそのプラモデル、いわゆるガンプラ作りにここ数年すっかりハマっているのだ。

小さい頃から榛地さんの遊び相手となってくれたのは、7歳年上のお兄さん。アニメやゲームが好きだという彼女の趣味は、そのお兄さんの影響を強く受けてきたという。「兄が小学生くらいのころ、プラモデルに夢中になっていたのをよく覚えています。さすがに7歳も離れていたので当時の私には手が出せませんでしたが、小さなパーツからコツコツと組み上げて飛行機やクルマが出来上がるのは、子供ながらにかっこいいなぁと憧れを抱きましたね」

やがて自身でも好きなアニメキャラクターのイラストを描いたり粘土で立体成形したりと“モノを作る”楽しみに目覚めていった榛地さんは、大学に進学してコミュニケーションデザインを学ぶことに。そこで出会った友人たちが、彼女とガンプラを結びつけることとなる。 「2Dデザインを学ぶ学科だったので、同期の中にはアニメーターやイラストレーターを目指している人もいたんです。そこで仲良くなった友人をきっかけに、ガンダムのアニメにハマりました。その子は私がものづくりが好きなことを知って、“それならアニメを見るだけじゃなくて、プラモデルを作ってみたら?”と勧めてくれたんです」

大好きなガンダムを自分の手で作れる。それも、幼いころに憧れたプラモデルでーー。
そこからあっという間にガンプラにのめり込んだという榛地さん。試行錯誤を繰り返しながら、これまでに約15体ほどのモデルを作り上げてきたという。
「数は少ないかもしれませんが、私の場合は1体を作るのにすごく時間がかかってしまうので……。一般的なモデルなら普通の人で1週間、早い人なら2〜3日で完成できると思います。私はゲート処理といって、パーツを切り離した箇所をヤスリで磨く“バリ取り”を全てのパーツに施すので、すごく時間がかかってしまうんです。だから1体を仕上げるために1カ月以上かかってしまうこともありますね」 仕上がりを左右するから、と爪の先ほどの小さなパーツにも丁寧にヤスリがけする彼女の手つきは繊細そのもの。真剣ながらもひとつひとつのパーツを愛おしむような表情からは、ガンプラ作りに熱中しているときの充実した時間がうかがい知れた。

ゲート処理以外にも、榛地さんにはガンプラ作りで譲れないこだわりがいくつかある。付属のデカール(シール)はすべて説明書通りに貼るのではなく、必ずアニメで使用されているものだけを選んで使うこと。そしてスミ入れ(パーツの合わせ目に塗料を流し込むことで、人工的な影を作って立体感を出すこと)は行わず、オリジナルの成形色を大切にすること。これは、あくまで彼女がアニメという2Dの世界観を尊重しているからだ。
「私にとってガンプラはあくまでアニメの再現。だからこそアニメで使われていないデカールも、必要以上の陰影もプラモデルに入れたくないんですね。それよりは劇中でかっこいいポーズがあればプラモデルで再現したり、それを撮影したりする方が好きなんです。本当に宇宙空間で戦っているようなポージングを作ろうと夢中になりすぎて、気づいたら1日が終わってた……なんてこともあるくらいです(笑)」

工場見学で“機械萌え”

そんな愛してやまないガンダムシリーズのほかに好きなアニメ作品について聞いてみると、『マクロスF』や『コードギアス』といったタイトルを挙げてくれた榛地さん。あれ、これらはもしかして、すべてロボットアニメなのでは……?
「そうなんです(笑)。だから女の子よりも男の子の方が話が合うと思います。子どものころから動く機械が好きだったので、その影響かもしれませんね」
そう、榛地さんはひと言でいうと“機械萌え”なのだ。でもその傾向は、彼女に聴覚障害があることと深い関係があるという。
「普通の学校に通っていたので手話はまったくできませんし、読唇術と補聴器でコミュニケーションが取れるので意外に思われることもあるんですが、じつは生まれつき耳がほとんど聞こえないんです。両親は耳が不自由なぶん目でいろんなものを見て経験できるようにと、小さいころからよく社会見学に連れて行ってくれました。精肉工場でお肉がミンチになる様子や、郵便局で大量の郵便物が機械で仕分けされるところを見ては、“あれは一体どうなってるの!?”とワクワクしてました。それが機械好きになる原体験だったと思います」

そして大学卒業後にヤマハ発動機に入社したきっかけも、彼女の聴覚障害者としてのスタンスが少なからず影響している。
「大学では2Dの世界で学びましたが、やっぱり“立体”を手がけたいという思いが強くなり、地元の浜松でプロダクト系の企業を探しました。そこでいろんな企業を調べるうちに、ヤマハはオートバイだけではなく電動車いすという障がい者向けの製品も作っていることを初めて知ったんです。そして「02GEN」というコンセプトモデルの存在も大きかったですね。障がい者が抱いている潜在意識やニーズに応えながら、こんなにかっこよくて美しいプロダクトを作ってしまうヤマハの企業姿勢に、すごく好感を持ちました」

“かっこいい”造形をみんなで追求

造形に関わる仕事がしたいという一心でヤマハ発動機に入社した榛地さんは、現在デザイン本部 プロダクトデザイン部でスカルプターグループに在籍し、デザイナーのスケッチと設計データを元にモーターサイクルのパーツをCADで3D化する業務を担当している。

「デザイナーが作りたいものと、設計がここまでなら可能と考えるものは、ときに理想と現実のようにせめぎ合ってしまうことがあるんです。でも目指している方向は同じなんですよね。私はそれを中立の立場で双方に働きかけて折り合えるところを探りながら、少しでもかっこいいプロダクトとして着地させる役。時には自分の提案を取り入れてもらえることもあって、すごくやり甲斐を感じています」
持ち前の物怖じしない性格とチャレンジ精神で、わからないことはどんどん質問して新しいことにトライする。もちろん造形はゼロからのスタートだったが、その成長ぶりに直属の上司も“期待以上”と太鼓判を押しているそうだ。

仕事を離れたプライベートでは、20代の女性らしくおしゃれやショッピングも大好きと語る榛地さん。特に中学時代から始めたというネイルは、手先の器用さをいかして細やかな模様を描くのを得意としている。プラモデル作りとネイルやファッションーーそんな充実した趣味生活を送っている彼女だが、やはり仕事がらバイクの免許取得にもいつか挑戦したいという思いを胸に秘めている。しかも、乗りたいバイクまですでに決まっているのだとか。

「MT-07のスポーティでアクティブなデザインに憧れてます。それにあの全体的にシャープなフォルムはガンダムと共通点が多いので、ますますかっこよく見えるんです(笑)。大型二輪免許は難易度が高いと思うんですけど、いつか憧れを実現したいです」
榛地さんの尽きることのないガンダムへの愛とオマージュ。それはきっと近い将来何らかのパーツの造形となって、バイク乗りの心を揺さぶってくれるに違いない。

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