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Power Assist Cargo

社内で立ち上がった防災用品プロジェクト

地震、台風、洪水、豪雪ーー日本で生きるということは、様々な自然災害に遭遇したり、被災する可能性を少なからずはらんでいる。そして近年では自治体、あるいは個人でも防災用品や非常食などを備蓄する重要性が浸透してきた。こうした社会的な防災意識の高まりのなか、「感動と豊かな生活を提供するヤマハが貢献できること」を考える未来創造プロジェクトが立ち上がった。そこで企画・開発されたのが、「Power Assist Cargo」。これは、ヤマハが持つさまざまな商材と技術をかけ合わせて生まれた、新しい被災者支援パッケージのコンセプトモデルだ。倉庫でバラバラに保管されがちで、運ぶ際には台車やカートを必要とする様々な防災用品をパッケージ化し、単独で運搬可能な“移動体”にしたものだ。

あらゆる立場で防災の“本質”を考える

このアイデアを形にしてほしいと相談を受けたデザイナーは、製品の価値を高めるにはパッケージ化するモジュールをもっと調べる必要があると考え、災害時における人の動きと必要とされるものを詳細に分析することから着手した。
まず発災から72時間以内はいのちを守るための避難が行われるが(一般的に、救助が72時間以内に行われるかどうかが生存確率の分岐点と言われている)、避難所生活の開始、日常への復興など、時間の経過とともに被災者の状況は変化し続け、それぞれのシーンでニーズは移り変わっていく。デザイナーは危機的状況から日常に至るまでシーンごとのニーズを視覚化し、可能性のあるソリューションをアイデア化していった。この時点でのフラッシュアイデアを見てみると、一般ユーザー向けの電動アシストカートに生活用品パッケージを組み合わせたものから、行政・企業向けに医療・通信パッケージに無人ヘリを組み合わせたものなど、デザイナーは様々な立場の視点から幅広いアイデア展開を行っていたことが見て取れる。

そして彼らがたどり着いたのが「電力と荷物の積載・運搬」という課題だ。災害直後から日常生活への復帰まで欠かせない電力と、絶え間なく繰り返さなければならない人とモノの移動。だが災害時は生活に必要な電力の供給が止まったり、個々の物品は避難活動のなかで置き去りになってしまうことが多い。それに災害時はマンパワーも限られるうえに疲弊しているのだ。「誰もが効率的に必要な電力や荷物を運べる、被災者支援ツール」ーーそんなコンセプトモデルの輪郭がプロジェクトメンバーのなかで徐々に浮かび上がってきた。

防災用品を“楽しいツール”にデザインする

そしてデザイナーは取り組むべきもう一つの課題を見据えていた。それは、意外にも防災用品にまつわる「イメージ」と「仕組み」。防災用品は用途が被災という事態を想定しているため、ネガティブなイメージを持つ人が多い。それゆえに倉庫にしまい込まれたり、日頃から十分なメンテナンスがなされず非常時の動作に不安が残ることがあったのだ。

そこでデザイナーが行き着いたのが、“日常と非日常のクロスオーバー”という概念。日常・非日常という用途の垣根をなくしたツールなら、普段使いすることで自然とメンテナンスがなされていく。それだけでなく防災用品を“日常的に触れるもの”にすることで、ユーザーは自然と被災時に必要な物資の備えができるのだ。目指したのは、災害というネガティブなシーンだけではなく、キャンプやお祭りなど楽しい日常で活躍してくれる、ワクワク・ドキドキするようなプロダクト。それは防災・災害対策用品さえも“楽しむ”ためのツールに変えてしまうという、じつにヤマハらしい発想の転換だった。

そんなツールを開発するにあたって、デザイナーは日常と非日常のあらゆる使用シーンを想定し具体的な利用方法を提案するスケッチを数多く描いていた。そこでは電気で照明をとって不安を和らげる、足湯を沸かして心身を癒す、お茶を淹れて気持ちを満たすといった使われ方が検討されている。これらのスケッチは、デザイナーがユーザーが被災した時の感情面や心に徹底的に寄り添い、どのように製品を活かせば彼らが日常の気持ちを取り戻せるか、というところまで踏み込んで考え抜いていたことを物語っている。

IDEA RUSH

日常・非日常で活用できる機動性と発展性

こうして生まれた災害支援ツールのパッケージが、Power Assist Cargoだ。これは電動アシスト機能を兼ね備えた、いわば“電気を運ぶ列車”。先頭に配置されるロコモティブ・ユニットは、“Locomotive”(=機関車)の名のとおり発電機とその電力を使ったアシスト機能を持つ駆動輪で構成され、後続を牽引する機関車の役割を担っている。もちろん発電機として電気を生み出すことも、蓄電器として電力を供給することもできるので、災害時は非常用電源として暮らしを支えてくれるほか、キャンプやアウトドア、あるいはお祭りなどのイベント時には屋外電源としても活用可能だ。
後続には貨車となるカーゴを連結して様々な防災用品や必要な家財道具を積載したり、伸縮可能な専用コンテナを用いることで情報機器や食料・飲料などを貯蔵してそのまま積載・運搬できる仕組みになっている。この後続部分は乗せるものや積載量に応じ増減できるという発展性を持たせることで、家庭だけでなく学校や自治会など幅広いユーザーに対応している。

本当に必要なものを、ふさわしい機能と造形で再構成する

Power Assist Cargoのロコモティブ・ユニットに用いられているのは、インバーター発電機・EF1600iSと電動アシスト車椅子JWシリーズのアシストユニット、JW用リチウムイオンバッテリー。発電・蓄電・アシストというヤマハ発動機ならではの技術をかけ合わせて再構成した、独創性に富んだ防災ツールの提案となっている。見ているだけでアウトドアに連れ出したくなるようなタフな造形と、ワクワクするような拡張性の高さを融合させたパッケージは、災害下でユーザーに強い信頼感と安心感をもたらしてくれる。
災害時のあらゆるシーンで必要とされるものを徹底的に分析し、「荷物の運搬」という本質的な課題から導き出されたPower Assist Cargo。そしてデザイナーは、プロダクトだけでなくイメージや仕組みそのものをデザインすることで、防災用品の日常と非日常の壁まで取り去ってしまった。“災害対策にも楽しみを”ーーそんなヤマハらしい大胆な発想の転換は、ユーザーの防災意識とライフスタイルにも新たな変革をもたらしてくれるはずだ。

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