大容量32Lの薬剤搭載を実現“攻めの農業”に応える産業用無人ヘリ「FAZER R」を発売10月12日~15日の「2016年国際航空宇宙展」に出展
2016年10月11日発表
ヤマハ発動機株式会社は、無人航空機(通称ドローン)の農業向けハイエンドモデルとなる産業用無人ヘリコプター「FAZER R(フェーザー・アール)」を新開発し、2016年11月から発売します。
「FAZER R」は、当社産業用無人ヘリコプター(以下無人ヘリ)史上最大となる32Lの薬剤を搭載することができるため、薬剤および燃料無補給で4haの農薬散布を可能とし、散布作業における圧倒的な効率化・省力化を実現します。
なお、「FAZER R」は発売に先駆けて、10月12日(水)から15日(土)まで東京ビッグサイトで開催される「2016年国際航空宇宙展」に出展します。
【「FAZER R」の特徴】
1) 現行「FAZER」に搭載して定評のある水平対向2気筒・FIエンジンの出力を向上
(圧縮比アップ、排気管径拡大により同一最大出力発生回転数ながら出力向上/19.1 kW→20.6kW)
2) JAXAの技術指導を踏まえ3D翼形状のテールローターを設計。空力特性の改善によりフライト時のエネルギーロスを低減
3) 32L液剤散布用タンクを設定(現行「FAZER」は24L)
4) 総務省の周波数割当表の改正へいち早く対応し、操縦用無線周波数を10波に拡張、混信を回避(現行「FAZER」は7波)
名称 | 発売日 | メーカー希望小売価格 | 販売計画 |
---|---|---|---|
FAZER R | 2016年 11月 |
13,424,400円
(本体12,430,000円、 消費税994,400円) |
160機
(年間、国内、OEMを除く) |
【市場背景と本製品の位置付け】
近年、日本ではTPPや“攻めの農林水産業”政策等によって「競争力のある強い農業」が推進され、より一層農業の効率化や収益性の向上が求められています。無人ヘリによる農薬散布についても、「より多くの薬剤を搭載でき、1回のフライトで広い面積の散布が可能な機体が欲しい」という声が長年寄せられていました。
そんな中、2014年に航空機製造事業法改正※という追い風を受けた当社は、これを「市場の声に応える絶好のチャンス」と捉え、今回の「FAZER R」の開発に着手することとなりました。現行「FAZER」をベースに「積載量の増加」に焦点を当てた本製品は、大容量32L液剤タンク(16L×2)、または30kg粒剤ホッパー(15kg×2)を搭載することができ、多様な薬剤・肥料の多量散布に対応可能です。また、レギュラーガソリンを搭載する燃料タンクも5Lから5.8Lに拡大しているため、従来機に比べてさらに長時間飛行でき、圧倒的な効率化・省力化による “攻めの農業”に向けた競争力の向上を実現しています。
※「航空機製造事業法」改正:
構造上人が乗ることができないもの(無人機)のうち、総重量(燃料等の搭載物を全て搭載した重量)100kg 以上の無人機を規制対象として定めてられていましたが、2014年4月、規制対象となる無人機の範囲が「100kg 以上のもの」から「150kg 以上のもの」に改正されました。
【様々な分野での展開】
当社の無人ヘリは、主に農業分野での農薬散布用機体として使用され、国内で約2,700機(2015年現在/OEM含む)が稼働しています。特に水稲の殺虫・殺菌剤散布の分野ではますますその存在感を増しており、今や日本の水稲(食用米)作付面積の42.5%(2015年、当社推定)は当社の無人ヘリによって散布されたものです。
さらに、当社の無人ヘリは水稲以外でも活躍のエリアを広げてきました。1990年代初頭の麦・大豆を皮切りに、馬鈴薯やデントコーン等の防除の実用化、そして果物へと、着実に用途の拡大を進めています。
また近年注目を浴びているのが水稲の直播きです。これは種もみを鉄コーティングして無人ヘリで直接播くという方法で、従来の移植による田植えを行う必要がなく、農作業の効率化に繋がるとして話題を集めています。
海外での事例も広がります。水稲栽培が盛んな韓国には2003年から13年間で約270機を導入、2011年には豪州での牧場や鉱山跡地、ダムの壁面、高圧電線周辺などの雑草駆除に、また米国では2017年からカリフォルニア州ナパバレーでワイン葡萄畑への商業散布が開始される予定です。
「FAZER R」主要仕様諸元
項目 | 諸元値 | |||
寸法・重量 | 全長×全幅×全高 | 3,665㎜×770㎜×1,078㎜ | ||
メインローター径 | 3,115㎜ | |||
テールローター径 | 550㎜ | |||
取扱重量※ | 71kg | |||
原動機 | 原動機種類/気筒数配列 | 水冷・4ストローク・OHV・2バルブ/水平対向2気筒 | ||
総排気量/ボア・ストローク | 390cm3/66.0㎜×57.0㎜ | |||
最高出力 | 20.6kW/6,000r/min | |||
燃料種類/燃料タンク容量 | レギュラーガソリン/5.8L | |||
性能他 | 積載重量 | 32kg/標高約300m・30℃ (24kg/標高約1,000m・30℃) |
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フレーム方式 | 多台形カーボンフレーム | |||
制御システム | YACSⅡ (YAMAHA Attitude Control System-Cruise Control) | |||
操縦用周波数 | 73MHz 10波 |
※ 取扱重量とは、オイル・燃料満タンの機体に散布装置本体(散布タンクは含まず)を取り付けた状態での重量です。