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薄肉大物の高品質なマグネシウムダイキャスト部品の製造を可能にする ヤマハ"CFマグネシウムダイキャスト技術"について 世界初、量産二輪車用リアフレームに採用

2007年9月11日発表

 ヤマハ発動機株式会社は、薄肉かつ大物の高品質なマグネシウムダイキャスト部品を製造できる「CFマグネシウムダイキャスト技術」をこのほど開発し、世界で初めて、量産二輪車用のリアフレーム部品として欧州向け2008年モデル「YZF-R6」(600cc)で実用化する。リアフレーム単体で従来(アルミ)比、約20%軽量となり、重量配分の集中化による高次元なハンドリング性能に貢献する。なお本技術は、自動車業界で近年ニーズの高まっている軽量車体部品の量産化に幅広く適用できる生産技術である。

 当社はかねてより環境負荷の少ないアルミ材に着目し、アルミを用いた部品製造の技術を開発して製品への積極的な採用を行ってきた。その中で薄肉大物のアルミダイキャスト部品の量産が可能な「CFアルミダイキャスト技術※1」、さらに同技術を適用した「DiASil(ダイアジル)シリンダー※2」を実用化してきた。今回の「CFマグネシウムダイキャスト技術」は、これらのダイキャスト技術をさらに発展させた生産技術で、独自のCFダイキャスト技術をマグネシウム部品の製造工程に最適化し適用したもの。この技術により、従来技術的に困難とされてきた薄肉大物のマグネシウムダイキャスト車体部品の量産化が可能となる。



CFマグネシウム ダイキャスト技術の効用


1)薄肉(2mm)大物(1~2m)の高品質マグネシウム部品の量産が可能
2)車体部品に採用可能な高強度を実現
3)外装部品に使用できるレベルの十分な耐食性を確保

2008年型YZF-R6(左)と同製品で採用のリアフレーム
(右/「CFマグネシウムダイキャスト技術」で製造)



開発背景

 車体の軽量化は、操縦性、燃費等に直結する重要ポイントである。近年、モーターサイクルにおいても、環境性能向上の要求に応えるため電子制御装備などの増加等による車両全体の重量増が見込まれるなか、車体部品の一層の軽量化が求められている。
 当社はかねてよりアルミを中心とした軽量な金属素材を、モーターサイクルの商品特性に合わせて積極的に車体部品に採用してきた。なかでもCFアルミダイキャスト技術は薄肉大物のアルミ部品を高い生産性で得られ、かつ部品点数を大幅に削減できることから、量産車の車体に採用している。しかし、溶湯の流動特性から薄肉化に制約があり、アルミを使った軽量化にも限界がある。
 一方、マグネシウムは、実用金属として最も軽く(比重がアルミの3分の2)、次世代の軽量素材として期待されているが、アルミに比べて、溶湯が冷めやすく固まりやすいことから薄肉大物の鋳造品を安定した品質で得ることは難しいとされていた。さらに、素材中の不純物(鉄、ニッケルなど)が規定量を超えると耐食性が低下するといった特性から、使用環境にさらされる条件で安定した強度が求められる車体部品の品質を満足させるのは難しく、当社においても量産車への採用は小物のエンジンカバー類に留まっていた。



技術概要

 「CFマグネシウムダイキャスト技術」は、CFアルミダイキャストで培った技術をベースにし、薄肉大物マグネシウム車体部品の量産に必要な部分を新たに開発して最適化した技術である。具体的には、 (1)均一な湯流れや凝固を実現するためのマグネシウム専用の設計、(2)溶湯が固まらないうちに型の中に溶湯を充填するため、金型真空度・金型温度・溶湯射出速度などの工程を最適に制御、(3)不純物量を最小化するための溶湯管理により可能にした技術である。
 また、鋳造後には専用の高耐食下地処理を施した上で塗装を行い、アルミと同等以上の強度と耐食性(当社社内基準)を達成。本技術により、従来困難とされてきた薄肉かつ大物の高品質なマグネシウムダイキャスト車体部品の量産が可能になった。


「CFマグネシウムダイキャスト」基本システム

※1 

ヤマハ「CF(Controlled Filling)アルミダイキャスト技術」=アルミの鋳造条件(金型真空度、金型温度、溶湯射出速度)の最適化でアルミダイキャスト鋳物内のガス量を従来の20%に削減し高品質アルミダイキャスト車体部品を量産する製造技術。2003年モデルYZF-R6のリアアームなどに実用化し、以後大排気量スポーツモデル、ビッグスクーターの車体に採用。

※2 

ヤマハ「DiASil(Die casting Aluminum-Silicon)シリンダー」=(1)20%シリコン含有アルミ材を使い、(2)ヤマハ「CFアルミダイキャスト」技術で鋳造加工し、(3)特殊なボア加工を施してオールアルミ製ダイキャストシリンダーを成型する製造技術。グランドマジェスティ250及びアセアン市場向けT135で実用化。


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