ハイパワー・ピストンバルブエンジン　ヤマハ『KT100SP』レーシングカート用エンジン新発売

　ヤマハ発動機(株)は、JAF国内カート競技規定の「FP2」クラスで、優れた性能を有するレーシングカート用空冷２サイクル・ピストンバルブ単気筒100ccエンジン『KT100SP』を、'98年12月17日より発売します。
　『KT100SP』エンジンの登場にあわせて、マフラーパーツをオプションとして発売します。

ヤマハ『KT100SP』カートエンジン

　フォーミュラ１（通称Ｆ１）を頂点とするモータースポーツの中で、その底辺に位置し、上級カテゴリーへの登竜門として認知されているのがレーシングカート。そのレーシングカートを使用したレースの中にも、いくつかのステップがあり、もっとも入門向けとされるのがピストンバルブエンジンを使用したクラスです。
　ＪＡＦ(社団法人 日本自動車連盟)が統轄する日本のカートレースは、大きく分けて頂点の全日本選手権、全日本選手権への出場権をかけた地方選手権、そしてSLカートレースに代表されるクローズドレースの３つに分けられます。その中間層に当たる地方選手権シリーズに、'98年よりピストンバルブエンジンを使用する「FP2(フォーミュラピストン２)」クラスが設定されたことを受けて登場したのが、今回の新開発エンジン「KT100SP」です。
　従来より発売していた「KT100FP」エンジンをベースとしながらも、各部に新設計部品を使用することにより性能、信頼性を向上。地方選手権を闘うドライバーにとって、強力なパートナーとなりうるエンジンとしています。
　また、ヤマハが主催するSLカートレースにおいても、「KT100SP」エンジンを使用するクラスを新設し、SLレースの最高峰カテゴリーと位置づけ、新規需要の拡大に向けて展開していきます。

　国産メーカー製造による空冷２サイクル・ピストンバルブ単気筒100ccエンジンを使用したクラスで、'98年より実施されています。それまでのFA2（ロータリーバルブエンジン）、FR2（リードバルブエンジン）に比べ、より安価にレース参戦ができるため、多くの注目を集めています。
　1998年度における地方選手権レースは、５地域、29レースが行われ、全国各地で活況を呈しています。

　シリンダーは熱の伝導効率に優れ、安定した冷却性能を得られる圧入スリーブ方式を採用。吸・排・掃気の各ポート形状を新設計とし、低中速域のレスポンスの向上と、オーバーレブ特性の向上を図りました。スリーブ単体での加工が可能なため、加工精度を大幅に向上することができます。
　シリンダーヘッドは、燃焼室の形状を高出力に対応した理想的な形状となるドーム型を採用しています。
　シリンダー、シリンダーヘッドともに、高出力化に伴い冷却性能を向上させるために、冷却フィンの面積を拡大しています。また、大型の冷却フィンをラジアル状に配したシリンダーヘッドフィンには、共振対策としてブリッジを追加、騒音の発生を抑えています。

　クランクケースは従来のKT100SD、KT100FPと同じ形状ながら、スタッド位置を変更し、シリンダー、シリンダーヘッドと共締めとすることで、冷却性能を大幅に向上させると共に整備性の向上をはかりました。
　クランクシャフトは、高周波焼き入れとクロームメッキを実施し、耐摩耗性及び耐潤滑性を大幅に向上。バランスウェイトの材質もアルミニウムとし、より高回転となったエンジン特性に対応させました。

　シリンダーの排気ポート形状の変更にあわせ、エキゾーストパイプをオーバル（楕円）タイプとし、専用の段付きチャンバー(マフラー)の採用と相まってスムーズな排気を実現。その結果として低中速のトルクを大きく稼ぎ出しています。※マフラーはオプションとなります。