トップメッセージ 2008年
経営陣からのメッセージです。
2008年1月7日
新中期経営計画スタートの年
当社を取り巻く経営環境
現在、世の中は急激なスピードで変化しており、社会・お客さまが企業を見る目も一段と厳しくなっています。企業間競争は以前にも増して高まり、原油高に端を発する原材料高、ドル安トレンド、米国の景気減速懸念、安価な中国製品の台頭など、当社を取り巻く経営環境は厳しい状況です。
このような時代背景をきちんと認識し、常に危機感を持って経営を行っていく必要があります。
「NEXT50-PhaseII」を振り返って
昨年までの中期経営計画「NEXT50-PhaseII」では、「成長機会の取り込み」「収益性の確保」「差別化価値の追求」の3つを柱に活動を行ってきました。
1つめの柱「成長機会の取り込み」では、インドネシア・ベトナムなど、アセアン市場の拡大機会をとらえることができ、ブラジル・ロシアでは計画以上の成果を出すことができました。また、成長に合わせた設備投資も積極的に行い、投資範囲は二輪車事業だけでなく、船外機、IM(産業用ロボット)、ライフサイエンスにも及びました。一方で、インドをはじめ、まだまだチャンスをとらえきれていない市場もあります。
2つめの柱「収益性の確保」では、収益規模は拡大しましたが、収益性では計画を達成できていません。アセアンでの二輪車事業は高収益率を保っているものの、先進国での二輪車、レクリエーショナルビークル、船外機、IM(産業用ロボット)では、需要の鈍化や競合他社の台頭、さらに、原材料の高騰などにより、当初の収益性目標の達成はできませんでした。収益性悪化の要因の一つである品質問題については、全社を挙げて体制を強化し取り組みを進めています。成果が現れるまでにはもう少し時間がかかりますが、地道にこつこつと積み上げていきたいと思います。
3つめの柱「差別化価値の追求」では、アセアンで商品、販路、広告宣伝、サービスなどのマーケティング活動を通してヤマハブランドを高揚させ、高い市場シェアを獲得することができました。また、レクリエーショナルビークル事業では、サイド・バイ・サイド・ビークルという新しいカテゴリーのパイオニアとなり、それが事業の新たな柱になりつつあります。一方、日・米・欧等の成熟市場での高付加価値戦略は、まだ取り組みの途上です。
なお、リスクマネジメントやコンプライアンスについては、輸出管理体制を強化し、コンプライアンス推進特別委員会からの提言を受け、社会に対して5つの約束をしました。これを踏まえて現在、さまざまな施策を進めていますが、もっとスピードを上げる必要があると感じています。そして、体質として根付くまで今後も着実に取り組み続けていきます。
今年の重点課題
当社は、今年2月、新中期経営計画を発表しました。そこでは、3ヵ年の計画に加え、ヤマハ発動機グループの長期的な発展の方向性、目指す姿も同時に示しました。これらの計画達成に向けて確かなスタートを切るために今年は、会社として次の3つを重点課題に掲げました。
- 次の成長のための収益力改善
- 品質向上への取り組み強化
- 社会の模範となる企業風土の構築
そして、これら3つの課題を達成するために各部門において、以下のような取り組みを行います。
製造・調達部門の重要課題は、全数良品工程の実現とコストダウン、およびグループ全体での量的規模拡大の実現です。そのために、特にMC(二輪車)事業本部は、システムサプライヤー体制の原点に立ち返り、その進化と機能拡充に取り組みます。さらに、製造にかかわるそれぞれの機能の技術力を向上させ、理論値生産の追及で現場力を鍛えます。
技術・開発部門の重要課題は、将来のための技術蓄積、設計品質の向上、他社製品との差別化価値の追求です。環境や安全といった必要条件を満たす技術を着実に蓄積し、差別化技術の種を増やし、製品面では、設計品質を向上させ、お客さまから信頼を獲得できる商品をスピーディーに開発してまいります。
営業部門の重要課題は、現場主義に基づいた、しっかりとしたシナリオを作ることです。市場を徹底的に知り尽くした上で需要を予測し、現地営業と本社営業が一体となって「今、何をすべきか」を徹底的に考え、実行していきます。
コーポレート部門の重要課題は、グローバル視点でのオペレーションの高度化と内部統制の強化です。現在、世の中の法律や制度が大きく変化しています。これらの後追いではなく、流れを読んで将来を予見し、半歩先んじた手を打つことが必要です。そうした取り組みが経営の質に結び付くという認識に立ち取り組んでいきます。
成長に向けた確かなスタートを
今年からスタートする新中期経営計画は、「会社の質を高めながら成長する」というチャレンジです。これをやり切った先にこそ、真のグローバルエクセレントカンパニーがあります。持てる力を最大限に発揮して今年1年を充実したものにしたいと思います。
以上
ヤマハ発動機株式会社
代表取締役社長
梶川 隆