トップメッセージ 2006年
経営陣からのメッセージです。
2006年1月6日
危機感と緊張感を持って
当社は、創立50周年を迎えた昨年、新中期3ヶ年経営計画「NEXT50-Phase II」をスタートさせました。これまでの50年を総括し、次の50年に向けて、新たな成長を目指す決意をし、行動を始めた年でした。
この中期経営計画は1年目を終え、売上・利益とも目標を達成することが出来ました。しかしながら、今後の経営環境は、原材料高騰による大幅なコストアップ、ガソリン高騰によるアセアン二輪車や米国ATV(四輪バギー)の需要停滞が懸念されます。また、インドネシアの通貨安、さらには米国におけるハリケーン被害の影響など、厳しさを増しています。これらの変化を機敏にとらえ、気を引き締めて経営に臨む必要があると認識しています。
今年は中期経営計画「NEXT50-Phase II」の2年目で、ホップ、ステップ、ジャンプのステップにあたる重要な年です。中盤は、ともすれば中だるみになりがちですが、スタートダッシュの1年目を最終年にいい形でつなぐことができるかどうかは、まさに今年にかかっていると言えます。こうした認識に立ち、2006年は以下の重点施策を実践して参ります。
1. 二輪車をはじめとした各事業の成長
「NEXT50-Phase II」では、「価値、収益、成長のバランスをとり、オンリーワン・ブランドを目指す」ことを基本方針としています。これを踏まえ、各事業を次のように位置づけています。
アジア二輪車、自動車エンジンは成長機会を取り込む事業。北米・欧州二輪車、船外機、ATVは高収益力を目指す事業。IM(産業用ロボット事業)は高収益性維持と規模成長を図る事業。国内二輪車、国内舟艇、PASは、事業基盤の安定化と収益力の改善を目指す事業。
前中期経営計画「NEXT50」では、利益志向の企業体質を培ってきました。これを基盤にそれぞれの事業は、期待された成果を上げてさらなる成長を目指します。特に、二輪車事業は当社の基幹であり、競争力をより強化していくことが必要です。
具体的には、欧米などの成熟市場では、「商品競争力の強化」「差別化による高付加価値化マーケティングの推進」「地域別シェア向上を図るためのエリアマーケティングの強化」により、高付加価値化とシェア確保を推進していきます。
アセアンなどの成長市場では、「新商品の積極投入」「ブランド戦略の推進」「生産能力の拡大に合わせた生産体制の整備とコストダウン」により規模拡大と収益性改善を図っていきます。
インド・中国・ブラジルでは、当社の実力に比べるとシェアや収益性が低い水準であり、製造・販売などの事業基盤を一層強化し、収益改善を目指します。
国内は、規制緩和の追い風もあってスポーツカテゴリーで伸長が見られるものの、全体的には厳しい状況です。需要創造や市場開拓など、基本に戻った活動を進めながら事業基盤の安定化に努めます。
2. CSR活動の推進
ここ数年来、多くの日本企業でさまざまな不祥事が発生し、中には、企業存続の瀬戸際まで追い込まれる企業も出ています。当社は、創業当時から社訓の中で「国家社会に貢献し」と謳ってきており、環境やコンプライアンスへの取り組みも進めてきました。昨年は、こうした活動を踏まえてCSR活動の基盤づくりを行いましたが、本年は、これを具体化していく初年度と位置づけます。
特に、製品品質、環境、雇用・労働、コンプライアンス、危機管理など、基本となる部分に重点を置き、それぞれの課題と達成目標、達成時期を定めて取り組み、着実に基礎固めをしていきます。
また、今年から、CSR活動をよりグローバルに展開していきます。これまでは、ヤマハ発動機本社と国内関連会社が中心の活動でしたが、今後は、世界の各地域の事情や条件を踏まえた上で目標レベルと課題を設定し、活動を進めていきます。
3. グローバルでマルチな人材の育成
上記の二つの重点施策の出来を左右するのは、結局のところ「人」です。
その意味で、今年も人材育成に積極的に取り組みます。
特に当社は、売上の80%以上が海外でありながら、それに対応できる人材がまだまだ不足しています。また、長期的な人材計画に基づく対応も遅れています。今年は、これらの課題に対応するしくみづくりを行っていきます。
具体的には、ヤマハ発動機の社員として求められる人材の共通軸を、幅広く業務を遂行できることと海外でも通用することに置き、全社的な視点から若手人材の計画的育成や中堅以降の人材タイプ別キャリア開発をより一層進めるしくみを導入していきます。そして、グローバル度を高めるための具体策の一つとして、海外留学制度を復活します。また、今年4月に法律が施行される65歳までの段階的雇用延長への対応も含め中高年人材の活性化に積極的に取り組みます。
■世界のエクセレントカンパニーに
以上が今年の重点施策ですが、前中期経営計画「NEXT50」のスタート以来、当社の収益体質は着実に根付いてきていると思います。しかし、「NEXT50」で掲げた1ドル1ユーロ100円で経常利益率5%という目標は、あと一歩まで来ているもののまだ達成できていません。早くこれをクリアして次へ進まなくては、競争が宿命であるグローバルな大競争時代で生き残っていくことはできないと認識しています。
この1月、2007年に生産規模を180万台にまで拡大するインドネシアで二つ目の二輪車製造会社が操業を開始し、ベトナムでも二輪車用部品の製造会社が稼動します。また、5月には袋井市の部品供給センターが本格的に業務を開始し、7月には本社実験棟が、10月にはバイオの生産工場が、それぞれ完成します。もう後戻りは許されず、前進していくしかないのです。
当社が企業活動として行っているレースは、強いところが勝つ実力の世界です。チームは、たとえどんな状況にあろうとレースの朝までに難題を乗り切らなくてはなりません。「ハードルが高過ぎる」とか「人手がない」とかの言い訳は一切通用しないのです。こういった危機感と緊張感を持って、経営に取り組んでいきたいと思います。
経常利益率が10%を超えるような、いわゆるエクセレントカンパニーと呼ばれる会社は例外なく、常に危機意識を持っています。当社も「NEXT50-Phase II」のハードルを着実に越えて、早く日本の、そして、世界のエクセレントカンパニーを目指したいと思います。
以上
ヤマハ発動機株式会社
代表取締役社長
梶川 隆