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マルチユースへ繋がる原点モデル

ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。

当時最新のジャイロを駆使した挑戦から

私たちヤマハの、“空”への挑戦は古く、チャレンジの姿勢を公にしたのは1982年1月のこと。「ヤマハの歩みは小型エンジン技術開発の歴史。その実績をふまえ今後はモーターハングライダー用エンジンや無人機用エンジンなど“空の汎用小型エンジン”分野に進出します」と発表。翌日の各紙は「ヤマハは今後、陸海空の三面作戦をとっていく」と紹介され反響を呼びました。
翌1983年、政府・農林水産省の外郭団体(社)農林水産航空協会からの委託で、遠隔誘導空中噴霧装置「RCASS」(Remote Control Aerial Spraying System)開発を打診されます。当初はエンジンだけの依頼でしたが、総合性の重要度から「RCASS」トータルの開発として受託、研究開発を開始。飛翔ロボットRCASS(#1)と命名されていました。

同協会の依頼で2重反転ローター式の研究に注力。水冷2ストローク・単気筒・292ccを搭載しました。2重反転ローター式はテールローターが不要でコンパクトですが、ピッチ(前後)、ロール(左右傾斜)、ヨー(横回転)コントロールが一軸にあり、機構が複雑になる課題がありました。飛行テスト装置FTS(Flight Test Stand)(#2)も開発して実用化に取り組みましたが、当時のサーボモーターの特性もあり手動での操縦は困難を極めました。
そこで当時最先端だったジャイロセンサーを織り込み“全自動”でのフライトをテストで実証(#3)。これがヤマハ無人ヘリの「制御」開発の第1歩でした。しかし機体重量は100kgを超え、実用化は見送られました。

※ 同軸上のふたつのローターを逆回転させる仕組み

ベースモデル開発と進化

「RCASS」と並行して研究開発したのが「R-50」(#4)でした。メインローターとテールローター式でパワーユニットは水冷2ストローク2気筒98cc、1987年に完成させるとモニター販売を開始しました。有効積載量20Kgをもつ薬剤散布用無人ヘリとしては世界初。ただこの初期型には「制御」は入れませんでした。無人ヘリとしての基本プラットホームの確立を優先していたのです。

その後、「R-50」に“高さ制御”を織り込む研究開発を進めます。操縦者の散布作業集中を図るためヘリの飛ぶ高さを制御するのです。超音波センサーを試しましたが、稲が音波を吸収して成果は得られません。そこでレーザーセンサーを用いて高さ制御を行う高度制御装置YOSS(Yamaha Operator Support System)を開発、「R-50」に織り込みました。しかしYOSSは地表の凹凸を敏感に感知し生産継続とはなりませんでした。
進化は1995年。カーナビ用に開発された光ファイバージャイロを用い、操縦者レベルに合わせ操作意図を読み取るモデルフォローイング制御の姿勢制御装置YACS(Yamaha Attitude Control System)を完成、同年「R-50」に装備して販売しました。
初期型の「R-50」は、いちど空中に上がると着地しない限りオペレータが絶えず操縦スティックを操作しなければなりませんでしたが、YACSでは各3個のジャイロと加速度計から得た情報を演算処理するため、前後・左右・方位・上下の全舵の自動制御が可能となりました。扱い易さと散布効率の高さから累計約1,000台の普及台数に達し、産業用無人ヘリコプターユーザーを拡大していきました。

活動エリアの拡大

その後、新エンジン搭載の「RMAX」が1997年誕生。2000年には「自動航行型RMAX」(受注生産モデル/有珠山災害観測)を実用化、2003年には操縦の容易化を図った「RMAX Type II G/Type II」、2006年には自動航行・産業用「RMAX G1」、2013年に4ストローク搭載の「FAZER」(フェーザー)、2016年の「FAZER R」と熟成、進化を遂げています。
そして今日、農業分野での無人ヘリは既に日本だけで2,800機(2016年3月末現在)が利用され、述面積106万ヘクタール、収穫される米の36%を防除するところまでカバー。水稲以外への用途もあり、麦、大豆、れんこん、大根、栗への防除。さらに果実、野菜へも適用が拡大しています。
予めプログラムした飛行ルートで自動航行でき、その再現性も容易なので、同じ飛行ルートを複数回トレースできる「RMAX G1」は、生態系を調べる干潟観察、地形観察、放射線測量など様々な場面で威力を発揮。農業に、自然観測に、各種ソリューション活動に・・・空をゆくヤマハの「技と術」の姿です。

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