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3つの技術を集約する産業用無人ヘリコプター

ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。

ヤマハの産業用無人ヘリコプターとは、薬剤散布を主に行う農業分野や、研究機関などによる学術調査、防災業務、測量・観測業務などに活用されている無人航空機のことです。
新型の「FAZER R(フェーザー・アール)」は2016年10月に発表した最新モデル。これは農業を取り巻く環境変化と、“攻めの農林水産業”政策に基づく航空機製造事業法改正を踏まえ次世代モデルとして開発したもの。従来型「FAZER」をベースに、1)出力向上、2)テールローター形状変更による回転ロス低減などを行い、従来比1.5~2倍となる大容量32L薬剤タンク装備が可能になり、1フライトでの散布可能面積も大幅に広げ4ヘクタールとなりました。

※2014年航空機製造事業法改正:離陸時最大重量が100kgから150kgに変更

また、同機をベースに可視外での自動航行可能な装備を備え、危険エリアでの測量・監視・動画収録等業務に対応できる「FAZER R G2(フェーザー・アール・ジーツー)」の実用化を発表。従来の自動航行型「RMAX G1」に較べ許容積載量は10kgから35kg、運用高度は1,000mから2,800mとなり、標高の高い火山(浅間山、十勝岳、草津白根山、阿蘇山等)の観測にも対応できるようになりました。
これら2機種に織り込まれ信頼性を支えているのが、小型エンジン技術、FRP技術、制御技術の3つに他なりません。

例えばエンジン。無人ヘリに求められる性能は、薬剤などの重量物を搭載し、つねに安定した飛行ができる粘り強い駆動力と耐久性です。一般にヘリコプターは、ローターの外側が音速以上で回転すると揚力効率が減り失速するので、ある回転数を維持し続け、ローターのピッチを変えて揚力を調整する仕組みになっています。そこで「FAZER」「FAZER R」では、通常運転のローター回転数を毎分840回転に設定。特に活躍する場面が多い、高温・多湿な真夏の水田でも安定した性能を発揮できるよう、FIシステムを採用した専用開発の390cc・水冷・4ストローク・2気筒エンジン(#1)を搭載しています。
シリンダー配列は重量バランスに優れ、コンパクト設計とマス集中化に有利な水平対向型で、住宅地や市街地に近い農地が増えているため、環境にも配慮。アルミ鍛造ピストン、クランクケース一体めっきシリンダー、センタージャーナルレスのクランク、樹脂製インテークマニホールド、チタン製マフラーなど機械好きの人の興味をそそる盛りだくさんのパーツと、長年培ったエンジン技術が詰まっています。
FRP製のローター(#2)やカウルも特徴です。その理由はまず、軽くて強く、障害物と接触した場合でも粉々にならないので二次災害の抑制にも役立つという素材特性が挙げられます。また通常ヘリコプターのローターには金属製、木製、カーボン製など様々なものが使われますが、ヤマハは片側約1,700gの二枚翼ローターで両側の重量差を5g以下に抑え、形状やサイズはもちろん重心位置、各部バランス、捩れ特性など高い精度で均一なプロフィールを実現するため、舟艇で培ったFRP技術をフルに活用しているのです。
しかしもっとも大切なのは、ラジコン操縦の無人ヘリを、多くの人が容易に、運用できるようにすること。そのために、ヤマハは制御技術の開発・進化に最大限の時間と努力を費やしてきました。まず1990年、レーザーセンサーを利用した高度制御装置YOSS※1を「R-50」に採用。続いて3個のジャイロセンサーと加速度センサーを備えた画期的な姿勢制御装置YACS※2を開発。1995年から「R-50」に搭載して操縦の容易化を図り、1997年発売の「RMAX」でその精度をアップ、さらに2003年発売の「RMAX Type II G 」にて、GPSを付加することにより操縦性を大幅に向上させました。そして「FAZER」では、GPSアンテナと方位センサーの一体化、および周波数を制御するPLLによる電波受信の安定性向上、改良を重ねた制御システムと速度制御モード採用などにより、容易でスムーズな離着陸、速度維持の自動化を図っています。

一方、火山観測など可視外での撮影・測量を目的とした自動航行可能モデルは、2000年に実用化しました。RTK-DGPS※3という高性能GPSを採用した「RMAX G0」で、あらかじめプログラムした飛行計画による自動航行を実現。さらに制御プログラムの改良により、強風時などの飛行環境が厳しい条件でも高精度の飛行精度を実現した「RMAX G1」(2006年)で自動航行の有用性を広げました。こうしてヤマハの無人ヘリは、火山活動や災害現場の観測・調査など農業以外の分野にも活躍の場を広げています。

※1
YOSS:Yamaha Operator Support System/レーザーセンサーを用いて高さ制御を行う高度制御装置
※2
YACS:Yamaha Attitude Control System/姿勢制御装置
※3
RTK-DGPS:Real Time Kinematic Differential GPS/リアルタイムキネマティック・ディファレンシャルGPS
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