技術論文 二輪車の快適シート PDF
谷垣 聡/金子 和佳
二輪車ライダーの長時間走行時の疲労を低減するために、新開発の衝撃吸収材を用いたシートを試作した。走行評価の結果、試作シートは疲れにくく快適であることがわかった。また、その理由を振動伝達率や座圧分布などを用いて人間工学的に考察した。
冒頭を表示
エンジントルクの簡易計測法 PDF
佐野 武俊
エンジンの出力トルクを簡易的に計測する手法について研究を行った。テストコースでの走行試験、および動力計による単体試験を行った結果、特定のクランク角度における燃焼圧の増加量から出力トルクの大きさを算出可能であることが判明した。燃焼圧の増加量を計測するクランク角度は、エンジン回転速度の変化に応じ、またエンジンの形式・種類により異なる。今回使用したエンジンでは、1500rpmで上死点後約9~21度、5000rpmでは約5~16度の間における燃焼圧の増加量と出力トルクとの相関が高い。今後は理論的検証を行っていくとともに、エンジンの制御システムなどへの利用について検討していく予定である。
冒頭を表示
小型エンジン開発における熱応力解析の適用 PDF
鈴木 大介/吉村 昇一/安藤 剛廣
ヤマハ発動機において小型エンジンの開発に有限要素法(FEM)による熱応力解析を適用した事例を示す。それは、シリンダヘッドの熱変形解析によりバルブシートの熱変形量を明らかにし、バルブの着座衝撃による異音の発生要因を検討した例、ピストンの熱変形・熱応力解析を実施し、爆発圧力による変形・応力と比較した例、自動車エンジンのエキゾーストマニフォールドに非定常熱伝導解析を用いて熱応力分布の時間変化を求めた例、そして、組立クランクにおける圧入状態をFEMモデルに表現するために熱膨張を利用した例である。熱応力解析に必要な温度分布のデータは熱伝導解析により得ている。最後に、熱応力解析を商品開発に適用する上での問題点を示す。
冒頭を表示
心電図RR間隔による運転疲労評価法の研究 PDF
水野 康文
心電図R波の時間間隔(RRI)から運転疲労を評価判定する方法を検討した。被験者1名を対象に、四輪車で高速道路を主体に400kmの走行実験を3回繰り返した。計測されたRRIからトレンド成分と変動成分を表す統計指標を算出し、オフィスワーク時のRRIおよび主観評価結果と比較した。5分間毎のRRIの平均値(RRM)をトレンド成分を表す指標とした。変動成分を表す指標として標準偏差(SD)を採用した。SDは一時的緊張等のトレンド成分の影響を受けるため、SDからトレンドに対してロバストな指標RRV15を定義した。RRM、RRV15から以下のことがわかった。1運転疲労によりRRMは減少する。2休憩時と運転時のRRV15の差から定義した新しい指標RER(回復率)は、運転疲労が蓄積すると激減する。また、RRM、RERの経時変化の統計的有意性も確認できた。
冒頭を表示
残留応力分布を持つ表面硬化材料の疲労強度推定手法 PDF
伊藤 寿浩/安達 修平
"表面硬化処理を施した鉄鋼材料は、表面から内部に向かって変形抵抗の分布を持つと同時に、残留応力の分布をも持つ傾斜機能材料と言うことができる。本稿ではガス軟窒化処理を施したJISSCM440について、その疲労強度を推定する方法として、次の手順を踏むことを提案した:
1硬さ(Hv)分布曲線と残留応力(σR)分布曲線を基に、疲労強度(σw)分布曲線を計算する。関係式には「σw=1.6×Hv−0.5×σR」を用いる。
2各応力レベルにおける深さ方向への応力振幅分布を計算する。これは試験片の形状(形状係数)、荷重モード(曲げ、引張、ねじりなど)によりFEMまたはNeuberの式から決定される。1、2の計算に際しては同じ応力比に換算した値を用いる。
3計算より求まった疲労強度分布曲線と外力による応力分布曲線の内野1つが最も低い位置で接する点を見つける。この接点の深さ位置が疲労クラックの発生位置となり、接している応力勾配で代表される応力レベルが疲労強度となる。
より正確な推定を行うには、正確な表面下の疲労強度を知る必要があり、これは意図的に表面からクラックが発生するようにした試験片を用いた疲労試験により得ることができる。この手法を用いれば、ショットピーニング処理などで得られる急勾配の残留応力分布を持つ表面硬化材についても、疲労強度ならびにクラック発生位置の予想が可能となる。この考え方は、浸炭焼入れや高周波焼入れなどの処理を施した表面硬化材料の全般的な疲労現象への適用が可能である。"
冒頭を表示
低圧鋳造の湯まわり不良低減 PDF
藤原 彰人
低圧鋳造にて生産しているモーターサイクルのシリンダヘッドにおいて、フィン先端に発生する湯まわり不良を低減するため、Al溶湯の流動性とそれに影響する要因との相関を調査した。Al溶湯の流動性は、同一条件で鋳造した場合、鋳造ショット数が経過するとともに低下する。また、現生産で管理している条件の中では、溶湯温度・加圧流速の影響が大きい。さらに、不活性ガス雰囲気での効果も確認できた。その結果から、影響の大きい溶湯温度と加圧流速の設定値を鋳造ショット経過に対して補正することで、常に一定した流動性を得ることができ、製品の湯まわり不良を低減できた。
冒頭を表示
技術紹介 スクータエンジン自動組立ライン PDF
大橋 幸生/佐野 優視
当社の自動組立の歴史は、’75年に開発された多軸ヘッドのX-Yロボット、フリーフローコンベア、多重式パーツフィーダに始まる。これにより、2サイクルエンジンのクランクケース周辺へのベアリング圧入、ビスの供給、締付エリアが自動化された。その後、スカラ型の単軸ヘッドのロボットを開発し、スクーターの「パッソル」エンジン組立ライン、4サイクルエンジンのシリンダヘッド組立ライン、ユニット組立職場等の自動化しやすい所に導入されてきた。しかし、二輪車業界の生産量は’82年に急激に落ち込み、大量生産向きのレイアウトの工場では、人と設備の稼働率は大きく低下した。当時の工場レイアウトは商品別工場であり、部品加工ライン、エンジン組立ライン、完成車組立ラインが1対1で結ばれていた。これに対応するため、’85年に4工場を機能別工場に再配置することを決め、新たにエンジン組立工場が建設されることになった。従来のように、自動化できる所に自動化を進めるという考え方を反省し、比較的多量な生産量が見込めるスクーターエンジンについては徹底的に自動化し、他の少量エンジンについては手組みを前提に合理化を進めることにした。スクーターエンジン自動組立ラインは構想から1年で完成し、’87年2月から稼動を開始した。今回は、このライン設置の背景と8年の活動を整理して紹介する。
冒頭を表示
FRP廃材の再活用について紹介 PDF
矢口 和雄
当社のボート工場から排出されるFRPの廃棄物量は、月間でトラックに約80台分にもなり、年を追うごとに埋立処理場の枯渇、費用の高騰などの問題に悩まされている。この解決の一助として、FRP廃棄物の減容および種々の再活用方法を研究してきた。そのうち、今回はFRPチップを充填材として利用することにより、再生プラスチックを強化して、物流改善用の容器、パレット、トレイなどに利用する方法の開発を紹介する。
冒頭を表示
舟艇用型製作におけるCAD/CAMの適用事例 PDF
小杉 隆司/三輪 吉郎/山田 将也
小型船舶の開発から製造において、三次元CAD/CAMシステムを利用した業務効率や設計・製作精度の向上を図った事例と、今後のマリン技術電算システムの展開の一端を紹介する。
冒頭を表示
海洋観測用自動帆走ヨットの開発 PDF
永海 義博/原 以起
地球環境の変動が国際的な問題になっており、これへの対応策のひとつとして世界海洋観測システムの構築が提唱されている。科学技術庁は、これを推進するため、平成5年度より予算をつけて、画期的な観測ブイシステムの開発実施計画を立てた。開発の内容は、自動観測ブイ本体の開発、センサの開発、観測データ処理方法などからなる。東海大学の千賀研究室は風力推進による自己移動型ブイを提唱し、依頼を受けた当社ほか3社と共同開発を行った。
冒頭を表示
マリンギヤクラッチの焼損性評価 PDF
津野 建一郎
マリンギヤのクラッチに対する要求特性の中には、摩擦特性(絶対値・吸収トルク特性)はもちろんのこと、耐焼損性がある。小型舶用マリンギヤの耐焼損性の要求レベルは、プロペラにロープが巻き付いた(焼け発生)後でも動力が伝達できることである。クラッチメーカーは国内に数社あり、当然ながら独自の評価試験を経て作り上げられている。そのため、どのクラッチ材が焼損に対して優位であるかを、提示されたデータの単純な比較で述べることはできない。また、各クラッチ材全てを実機航走にて評価して優位性を求めることは、時間・効率などの面から、最も良い方法とはいえない。この問題を解消するために、各クラッチ材の摩擦特性を同一条件で横比較評価し、確認できる試験機を製作し、さらに台上試験にて耐焼損性を評価できるような評価法を考案した。
冒頭を表示
ACEP(エースプラント)産業廃棄物焼却熱回収施設 PDF
高橋 邦武/内藤 隆明/宮沢 二三治/笹田 尚利/戸崎 勝博/河田 文男
"ヤマハ発動機㈱では、経営理念の中に「地球環境重視の経営」を掲げ、幅広く環境問題に取り組んでいる。中でも産業廃棄物の削減は最重要課題の一つである。そこで、「3つの工夫」のもとで全社活動を実施している。
(1)廃棄物を出さない
(2)廃棄物を再活用する
(3)廃棄物からエネルギーを取り出す
このたび、本社工場内に新設した産業廃棄物の焼却熱回収施設「エースプラント」(ACEP:Amenity Clean Energy Plant)は、「エネルギーを取り出す工夫」の中で誕生したクリーンな焼却処理プラントである。1995年4月より稼働しており、ここにその概要を紹介する。"
冒頭を表示
産業用無人ヘリコプター フライトシミュレータの開発 PDF
鈴木 弘人/中川 伝一
産業用無人ヘリコプタの飛行特性は、運動方程式により表される。従来、飛行安定性を確保するための設計パラメータの最適値は、理論式より求めることが困難であったことから、実機での繰り返し評価によって検討をしていた。今回、精度の良いフライトシミュレータの開発と品質技術の活用により、机上での評価で概略設計仕様の検討が可能となった。実機テストは、ほぼ確認レベルでよいという見通しが立ったので、その概要を紹介する。
冒頭を表示
製品紹介 産業用無人ヘリコプター用姿勢制御装置(YACS) PDF
大西 陽一/杉田 正夫/鈴木 昭彦/佐藤 彰/森下 達也/平見 育彦
産業用無人ヘリコプタは、その有用性については十分に検証されているが、操縦の難しさが普及の大きな障害となっていた。「免許を取っても散布フライトができない人もいる。」「操縦を誤って墜落させてしまった。」など、操縦を容易にする制御の必要性は年々高まっていた。今年4月に発売されたYACS(Yamaha Attitude Control System)は、このような市場の声に応えるために開発された。
冒頭を表示
YP250 MAJESTY PDF
小林 正典/高橋 博幸/冨田 稔/寒河江 寿/森田 敏正/中村 成也
都市部の慢性的な交通渋滞を背景に、片道15~20kmといった遠距離通勤を目的とした二輪車需要が増加傾向にある。こうした用途では、毎日の長距離走行ゆえに、商品に対する主な要望は「長く乗っても疲れない」という点に集中している。このようなお客様の要望に応え、拡大傾向にある遠距離二輪車通勤需要への参入を図るとともに、このクラスの需要を拡大する商品としてYP250 MAJESTYを開発した。
冒頭を表示
スーパーミディアムマウンター YV112 PDF
岩塚 佳久/鈴木 克彦/民輪 剛志
IM事業部発足後、X-Yロボットのアプリケーションとして生まれたヤマハサーフェスマウンターも、順調に定着し、最初に開発されたYMシリーズから数えて10年経過した。現在では、IM事業部内の総売上の7割を超えるまでの主力商品に成長し、バリエーションも増え、メカニカルな部品センタリング機能を有するYMシリーズに加え、ビジョン認識による部品センタリング機能を特徴としたYVシリーズの開発に拍車がかかっている。今回は、その中でもフルビジョンマシンとして最初に開発されたYV112について製品紹介を行う。
冒頭を表示
19mアルミ製小型実習船「リサーチ」 PDF
永富 忠良/木村 嘉浩
近年、アルミ船の特需市場での需要が大きく伸びている。当社でも、アルミ船市場に参入することを目的として、建造に関しての情報収集、技術ノウハウの蓄積を行ってきた。幸いにも、入札を経て静岡県焼津水産高校向け実習船の建造資格を得ることができ、当社アルミ船第一号として建造・引き渡すことができた。今後の本格的なアルミ船市場参入に向けての記念すべき船として、意味深いものになると考える。
冒頭を表示
ニュー発電機EF2300の紹介 PDF
戸塚 攻
発電機ビジネスは、ここ数年、途上国中心に安定した需要に支えられ、安定的な収益を得ているが、一方では世界的に環境重視の要請が小型エンジン(発電機等)にも大きくなりつつある。また、従来の当社OHVエンジン発電機は、エンジン本体を外部依存しており、O.P.E.(Outdoor Power Equipment)商品群としての将来の商品展開が限定されたものとなっていた。そのような状況の中で今回、コスト競争力があり、かつ次世代をねらった環境重視型エンジンを開発・内製化し、そのエンジンを搭載したニュー発電機を投入したので、ここに紹介する。
冒頭を表示
2サイクル船外機「9.9F/15F」 PDF
小笠原 滝男/野末 季宏
9.9/15HP船外機はプレジャー、業務の用途を問わず、世界各国で用いられているモデルである。ヤマハ船外機は1968年にP-200/250として12/15HP市場に参入して以来、その卓越した信頼性と動力性能において、常にこのクラスをリードしてきた。しかし、近年競合他社より相次いで発表された新商品に対しては、見劣り部分も目立ってきたことから、この度16年ぶりの全面的な見直しを行い、商品力の強化を図ることとした。
冒頭を表示
二重反転プロペラスターンドライブ PDF
鈴木 孝叔/雪嶋 賢司/住野 吉胤
独自の油圧クラッチを搭載したディーゼルエンジン用スターンドライブを1992年より発売し、その先進性について各種の賞を受け、また市場においては性能、シフト操作性およびフィーリング、クラッチ耐久性等について好評を頂いている。一方、近年スターンドライブ業界の流れとして二重反転プロペラシステムに移行しつつあり、今般、この流れの中で現行機の特徴・性能のさらなる向上を目指し、二重反転プロペラドライブを開発した。
冒頭を表示