| 巻頭言 | 10周年に寄せて “新しい価値の創造をめざして” PDF 長谷川 武彦 早いもので昭和59年に創立された技術会も本年で10年が過ぎました。この10年間の世の中の変化は予想をはるかに越えて、生き証人としての私達を驚かせています。特に東西冷戦構造が崩壊した後、秩序なき国際関係の現実に、民族主義の台頭が複雑にからみ、解決されるべき課題の輪郭は次第に明らかになりつつありますが依然として混迷しています。その中にあって日本の産業経済力が突出したことに伴い、貿易摩擦も激しくなり、相互理解が得られないまま国際協調や国際貢献でその成果を問われています。 冒頭を表示 |
| 技術論文 | 2サイクル船外機における複合分散めっきピストンリングの開発 PDF 寒川 雅史/奥村 滋雄 2サイクル内燃機関は、シンプル軽量コンパクトな特徴から現在の船外機の主流であり、当社でも一部の小型モデルに4サイクルが存在するのみで、ほとんどの小型から大型モデルにて2サイクル内燃機関を採用している。排気量の大きい高速大型2サイクル内燃機関では、ピストン系の焼き付きに関して技術的難易度の高い箇所でもあり、特に商品競争力を向上するために高出力化や低燃費化を進めると、ピストン系の熱負荷も高くなり、ますますピストンやピストンリングに影響を及ぼす。本論文では、ピストン焼き付きにも影響するピストンリングのスカッフ性を向上させるために、ピストンリングの表面に耐スカッフ性・耐摩耗性に優れたニッケル基の複合分散メッキを施し、ピストンリングのスカッフ発生までの寿命を倍増させた。また、シリンダーポートの存在する2サイクル内燃機関として、メッキ剥離に対処するためにニッケル基複合分散メッキの膜厚の最適値を実験と実機運転にて求め、メッキ膜厚を設定している。2サイクル内燃機関としてピストンリングに世界で初めて採用した本表面処理の技術的特徴と効果を発表する。 冒頭を表示 |
| XJR400における「走り感」の定量化手法の開発について PDF 水野 康文 二輪車の『走り感』を定量的、視覚的に捉える手法を開発した。『走り感』とは「数値性能+α」の“+α”の部分、すなわち数値性能で表すことのできない『走りの味』の部分のことをいう。今回開発した手法は、「走り」のコンセプトに合わせて適切な評価用語を選択する「評価用語選定プロセス」と、個人差を補正し『走り感』を定量化して、それを視覚化する「定量化プロセス」から成る。この手法を用いて、XJR400の『走り感』の開発を行った。まず最初に、アンケート調査からライダーが要求する「走りの楽しさ」を定量化し、開発目標を設定した。次に、この結果をもとに各試作車の「走りの特徴」を定量化し、この結果を検討して作り込みを行った。この結果、ほぼ目標どうりの『走り感』を作り込むことができ、専門誌のライダーからも高い評価を得た。この手法は、従来「感性」というあいまいかつ複雑な現象を目に見える形に表すもので、商品開発に大きな力となり得るものである。 冒頭を表示 |
| 技術紹介 | 当社のスーパーコンピューターとCAE PDF 藤田 嘉久/杉山 滋 当社では’91年11月にスーパーコンピュータCRAYY-MP2E/116を導入し、翌’92年2月より本格的利用を開始した。現在まで約1年半が経過し、この間、致命的なシステム障害は1件もなく安定稼働している。スーパーコンピュータの最大の特徴は、超高速な演算性能である。例えば、行列計算のプログラムを用いて処理速度を測ると、現在CADシステムが稼働しているIBM製大型汎用機の115倍に達する。単純に言えば、汎用機で1ヶ月を要する計算が、昼間の勤務時間帯内で終了することになる。本稿では、CRAYスーパーコンピュータの概要、利用状況などを中心に解説する。 冒頭を表示 |
| 製品紹介 | ディーゼルスタンドライブ SX420KSH PDF 塩澤 茂紀 ヤマハ発動機におけるスタンドライブは、1981年に業務用のMU-1型スタンドライブの販売に始まり、1988年にはプレジャー市場向けの小型ガソリンエンジンスタンドライブのラインナップ(直4-3.0L〜V8-5.7L)、1991年には同じくプレジャー市場向けの大型ガソリンエンジンスタンドライブ(V8-7.4LHYDRA-DRIVE)を市場へ送り出し、国内・外市場より好評を博してきた。しかしながら、特に国内および欧州の市場より、主として燃料のガソリンと軽油の価格差、燃費率の差による航続距離の長さという点から、ディーゼルエンジンモデルの開発要望が強かった。今回、これらの要望に応えるべく、ディーゼルエンジンスタンドライブSX420KSH(ME420DTI)、その低馬力仕様のSX420KSを開発、昨年9月より生産を開始したので、ここに紹介する。 冒頭を表示 |
| VX500/600の開発 PDF 袴田 朗道 ヤマハ発動機がスノーモビルの開発生産を開始して以来、25年を迎えようとしている。この間、幾多の荒波を越えて業界トップシェアの座を得た良き時代もあったが、ここ数年間で急激なシェアダウンを味わうこととなってしまった。競合メーカーがアメリカ(P社、A社)とカナダ(B社)の3社であったため、円高によるコスト競争力の低下が商品競争力に直接的な影響を与えたことも、この大きな要因の一つであった。しかしながら、市場や競合メーカーが変化していく中で、商品自体にも多くの課題が芽生えていた。この課題への対応が、VX500/600の開発そのものであった。 冒頭を表示 |
| YE50開発にみる現地開発の実態と将来 PDF 水野 孝義 YMC、MBK間の共同開発にて、'90後半にスタートを切ったスクータープロジェクト「EUROSCOOTER」は、'92春に「YE50」としてMBK工場にて生産開始し、フランス・イタリヤ向を中心に、スクーターに求められるベーシックな機能とファッション性に豊んだスタイリングが受け入れられ、堅調な販売を続けている。
YAMAHAブランド名ZEST
MBKブランド名EVOLIS
その後、現在に至るまでにすでに他の欧州域内5ヶ国への仕向地展開を実施し、PAN-EUROPEANSCOOTERとしての役割を担っている。これは、MBK工場においてもCW50(BW’S)に次ぐ旗艦商品として製造・販売活動の重要な位置付けにある。また、フランスにおいて40年の歴史を持つデザイン賞である「Janus(ジャヌス)賞」を受賞し、YE50の総合的な商品性の高さが立証され、専門誌などにより広く公報されている。ここでYE50の商品紹介と共に、我々海外でのR&D活動の一端を紹介させていただく。 冒頭を表示 |
| TT600製品紹介とイタリアの開発 PDF 中田 司郎 自由な発想を持ち、陽気で情熱的なイタリア人と開発したTT600の製品と、その開発の概要を紹介します。まづ最初に、ヤマハ発動機のイタリアにおける本拠地であるベルガルダについて紹介します。1980年にイタリアの輸入代理店として創立され、経済の中心地ミラノから北へ約30km、F1で有名なモンツァサーキットのすぐ近くに位置している。現在、従業員は約200名で、オートバイ、特機、船外機およびMBKの商品を輸入販売しており、92年売上げ高約3000億リラ(邦価約215億円)となっている。そして86年からは、イタリア国内への380cc以下の小排気量オートバイの輸入規制への対応として、現在の組立て工場が操業開始した。当初はDT125のライセンス生産からスタートし、現在では少量ではあるが個性的な独自商品を創り出している。また当社は、84年よりパリ〜ダカールラリーにフランコ・ピッコ選手などのオフィシャルライダーをサポートしており、レース活動への理解と、特にオフロードに対する情熱が、今回のTT600の大きな原動力となった。 冒頭を表示 |
| 台湾自主開発モデル「JOG50」の紹介 PDF 秦 伊 威/周 根 福/呉 明 俊 ヤマハ技術会技報は、ここ台湾ヤマハの開発本部内でも興味深く読ませていただいている。今回、編集委員会の方々から執筆の依頼を受け、少々戸惑いを感じたが、YMCとの相互の情報交換の場の1つとして、また当方の実情を理解していただく良い機会と考え、無い知恵を絞って執筆に悪戦苦闘した。今回は、本年2月に生産を開始した台湾ヤマハの自主開発モデル「JOG」の製品紹介をしながら、台湾という国と台湾ヤマハ開発本部の実情もあわせて紹介したい。 冒頭を表示 |
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