本文へ進みます

ヤマハ発動機×ETIC.×6人の実践者──「地球がよろこぶ遊び」はどうつくる?【イベントレポート】

「地球がよろこぶ遊び」を事業にする問いをめぐり、6人の実践者と参加者、ヤマハ発動機が仲間になりはじめた90分の記録。

「地球がよろこぶ遊び」を事業にする問いをめぐり、6人の実践者と参加者、ヤマハ発動機が仲間になりはじめた90分の記録。

2026年6月24日


2026年5月16日、虎ノ門ヒルズ森タワー4階の会場に、森・海・畑・地域に向き合う6人の実践者と、その問いに耳を傾けようと集まった参加者の姿がありました。

「今日のゴールは、仲間づくりです」

冒頭でそう語ったのは、ヤマハ発動機 技術・デザイン統合戦略部の嵩原安宏。「地球がよろこぶ遊び発見ラボ vol.1」と名付けられたこの90分は、NPO法人ETIC.(以下、ETIC.)が事務局となり、and Beyond カンパニーが主催する「Beyondカンファレンス 2026」内の1セッションとして開かれました。

嵩原が所属するチームが掲げるのは「地球がよろこぶ遊びをつくる」というミッション。「地球がよろこぶ遊び」とは、自然・コミュニティ・人間性の再生につながる遊びのことです。

マウンテンバイクで山を走ることが森の整備につながり、海藻を食べることが海の生態系を回復させていく──そんな「遊び」と「再生」が同じ方向を向く事業を、企業はどう作っていけるのか。6人の実践者と参加者が、ピッチとブレストを通じて問いを交わしました。

ヤマハ発動機が「仲間」を探しに来た理由

ヤマハ発動機株式会社 技術・デザイン統合戦略部 嵩原安宏

ヤマハ発動機には「遊び」のマインドが根付いています。バイクやボート、マリンジェット──手がけている製品は、自然の恵みのもとで成り立つ「遊び」を支えています。

その遊びのフィールドとなる自然が、いま危機に直面しています。気候変動や生物多様性の喪失、資源の枯渇――環境を取り巻く課題は年々深刻さを増しています。

嵩原は、ヤマハ発動機にできることは「地球を再生する遊びをつくることではないか」と問いを立てました。

「地球がよろこぶ遊び」をつくった一例として紹介されたのが、ヤマハ発動機の「ミリオンペタルバイクパーク」です。ヤマハ発動機社員の同好会が、静岡県森町の山中に、手作業でマウンテンバイクのコースを切り開いていた──そんな遊びからスタートしたミリオンペタルバイクパークですが、いまでは年間2,000人ほどが訪れる場所になっています。森町とは、地域活性化に関する包括連携協定の締結にも至りました。遊ぶことが森の整備につながり、森の整備がさらに遊びを呼ぶ。個人的な趣味から始まった活動が、いつしか地域を動かしていたのです。

そして、もう一つ、ヤマハ発動機の実践フィールドとなっている三重県尾鷲市の事例も紹介されました。ヤマハ発動機は、企業と地域の共創を進める株式会社paramitaとともに、ここで事業探索をしています。その中で、嵩原たちは一つの壁にぶつかります。

「製品や事業の単純な横展開は困難です。地域ごとに自然も違うし、住んでいる人も文化も違う。だからこそ必要なのは、各地に根ざしたパートナーとの共創であり、それぞれの地域の取り組みを学び合うコミュニティです。1社と地域をつないだ線の関係を、面の関係に広げていきたいんです」

「Beyondカンファレンス」のベースは、ETIC.が運営する 「Beyondミーティング」です。Beyondミーティングは、社会課題や新しい価値の創造に挑戦する人を「アジェンダオーナー」として迎え、参加者とのブレストを通じて全力で応援する場。これまで累計6,000人以上が参加してきました。

「今日のゴールは、仲間づくり」。嵩原がそう繰り返したとき、会場に集まった参加者は、すでにその「面の関係」の一部に組み込まれ始めていました。

6人の実践者が投じた、6つの問い

嵩原のプレゼンを受けて、6人の実践者が順にマイクを取ります。

今回の「地球がよろこぶ遊び発見ラボ vol.1」では、各領域の実践者が自分たちの活動を紹介し、参加者とのブレストを通じて新たな視点やアイデアを共有していきます。

「地球がよろこぶ遊び」は、各地域に拡がってこそ意味がある。そのため、この場を通じてヤマハ発動機が直接関わらないコミュニティが⽣まれることも期待しています。

森、海、畑、地域──フィールドも切り口も異なる6人の実践者は、各3分のピッチでどんな問いを共有したのでしょうか。

100年後も地球と生きる事業を、企業と一緒に作る

株式会社paramita Co-Founder 大澤哲也 氏
三重県尾鷲市を拠点に、企業・自治体・研究者・アーティストと共創し、地域の自然資本の再生と事業化に取り組む。

最初に登壇したのは、株式会社paramita Co-Founderの大澤哲也さん。三重県尾鷲市を拠点に、企業・自治体・研究者・アーティストと共創し、地域の自然資本を事業につなげる挑戦を続けています。市の92%が森に囲まれた尾鷲では、「尾鷲ヒノキ(三重県尾鷲地方産のブランド木材)」の活用や、ブリ・マダイの漁業、甘夏農業、そして開校を予定するオルタナティブスクール(既存校種にとらわれない多様な学びの場)など、さまざまな取り組みが進行中です。

「皆さんの会社が持っている事業やアセットを使えば、地域の未来につながる事業がきっと作れます。そんな議論を、ぜひ一緒に。地球がよろこぶ事業を一緒に作りませんか」

これが大澤さんが投じた問いでした。

体験を通して、人の価値観は一瞬で変わる

株式会社シテコベ 代表取締役 嘉山淳平 氏
神奈川県横須賀市長井の体験農園「シテコベ サステナブルファーム」(ソレイユの丘内)で、農薬・除草剤を使わない野菜づくりと、学校・企業団体・個人向けの自然体験プログラムを展開する。

森の話から、続いて畑へ。

神奈川県三浦半島で農業体験を展開する嘉山淳平さんが、活動現場の1枚の写真について語り始めました。

「春のキャベツ収穫体験での話です。普段、野菜が食べられないという子がいたんですが、周りの子たちが収穫したてのキャベツをバリバリ食べ始めたら、つられてその子もバリバリ食べ始めた。親御さんも私たちも、びっくりしたエピソードがありました」

横須賀市長井で運営する体験農園「シテコベ サステナブルファーム」(ソレイユの丘内)では、農薬や除草剤を使わず多種の野菜を育て、学校や企業団体、個人向けの体験を受け入れてきました。体験のフィールドもリソースも地域には揃っている。けれど、都心の企業とのつながりはまだ少ない──そこが課題だといいます。

「体験を通して、人の価値観って一瞬で変わるんだな、と感じました。家族や会社の社員の皆さんが、また来たいと思うような自然体験プログラムを、一緒に考えたい」

嘉山さんが投じたのは、この問いでした。

海藻を食べれば食べるほど、海が豊かになる

合同会社シーベジタブル 事業開発マネージャー 高山奈々 氏
海藻の種苗の研究から生産、加工・料理開発までを手がけ、海の生態系の再生と海藻の食文化の刷新に挑む。

畑から海へ、実践者たちのバトンが渡ります。

海藻の種苗の研究から、陸上・海面での生産、加工・料理開発までを一貫して手がける合同会社シーベジタブルの高山奈々さんです。シーベジタブルが着目してきたのは、海藻を海で育てることで生態系そのものが豊かになっていくという事実でした。実際、一般社団法人グッドシーの調査では、海藻を海面栽培した海域において、わずか1年で魚類の個体数が、養殖藻場外と比べて最大36倍も増えたというデータもあるといいます。

また、世界銀行が2023年に公表したレポートは、海藻の新たな市場が2030年までにおよそ118億ドル(約1.7兆円)規模に成長する可能性を指摘しています。日本では「食べるもの」のイメージが強い海藻ですが、海外ではバイオプラスチック、燃料、化粧品など、多用途への展開が進んでいるそうです。

「皆さんが海藻を食べれば食べるほど、海が豊かになっていく。そんな世界を目指して活動しています」と話す高山さんは、2つのお題を投げかけました。

「海藻×〇〇でどんな新規事業ができるか」
「海藻でどんな新しい加工品が作れるか」

走水の環境資源で、子どもの想像力を育む

株式会社Kaneyo Art Studio 代表取締役 金澤等 氏
横須賀市走水で家業の漁師を続けながら、地元の食材を出す飲食店「かねよ食堂」を営み、流れ着いた素材でつくる造形作家としても活動。「社会彫刻」をビジョンに掲げ、「海とミライのがっこう」を発起。

4人目の登壇者は、横須賀市走水(はしりみず)で漁師をしながら、子どもたちの未来を見据える実践者、株式会社Kaneyo Art Studioの金澤等さんです。

家業の漁師を続けながら、地元の食材を出す飲食店「かねよ食堂」を営み、流れ着いた素材で作るDIY造形作家としても活動しています。掲げるのは「社会彫刻」というビジョン。

走水は、東京湾の入り口にある小さな漁村。観音崎を境に景色が一変し、片側には自然豊かな三浦半島の海岸、もう片側にはスカイツリーまで見える都市の埋め立て地が広がります。歴史ある神社、湧水、磯や漁港──。豊かな環境資源が、端から端まで歩いて回れるほどの小さな街に凝縮されています。

「日本と世界の未来をつくるために大切なのは、子どもたちにたくさんいい経験をさせ、育んでいくこと。走水の豊かな環境資源の活用について、皆さんと一緒に新しいアイデアを生み出せたら」

金澤さんはそう投げかけました。

100年先をみすえて、保育の日常を変える

NPO法人もあなキッズ自然楽校 理事長 関山隆一 氏
横浜市都筑区と西湘エリアに計6拠点で「森のようちえん」を展開。「100年先をみつめる保育園プロジェクト」を主宰し、保育の現場から社会の意識変革を目指す。

「子どもたちが毎日外に行って、自由に遊んでいる。そういう保育園をやっています」

子どもの未来を見据えるもう一人の実践者、NPO法人もあなキッズ自然楽校の関山隆一さんは、横浜市都筑区と西湘エリア(茅ヶ崎・大磯・小田原)で「森のようちえん(自然のなかでの保育・自由遊びを軸に据えた保育スタイル)」を6拠点運営しています。「100年先をみつめる保育園プロジェクト」をスタートし、オーガニックの給食や地産食材の活用といった日常の選択を通じて、保育の現場から社会の意識をシフトさせる挑戦を続けてきました。

スクリーンに映し出されたのは、5歳児が大人と同じ仕様のジーンズを履く動画。15オンスの硬いデニムが、毎年の洗濯を重ねるうちにクタクタに馴染んでいきます。お兄ちゃんが履いたものを、次は弟へ。あるいは、卒園した子のものを、新しく入園した子へ。

「ピカピカの新品の硬いデニムが、何年か後にはきっとクタクタになって、穴も開いて、それでも履いてもらえるのっていいなって思いました。ジーンズは色褪せていくけど、その思いは積み重なっていく

そして話題は、保育園業界全体へと広がります。

「100年先の地球・自然がより豊かになるために、幼児教育事業に採り入れられそうなアイデアとは?食や空間、衣類や電力、おもちゃといった観点から、ほかの業種の事例や“遊び心”のあるアイデアを聞きたい」

と投げかける関山さん。全国に4万あるという保育園に、社会変革を広げていきたいといいます。

人と自然が育み合う田んぼをつくる

株式会社エーゼログループ たねラボ・事業開発担当 太刀川晴之 氏
岡山県西粟倉村で「ビオ田んぼプロジェクト」を推進。生物多様性に配慮した米づくりと「ビオ田んぼパーク」構想を通じて、人と自然が育み合う風景をつくる。

岡山県西粟倉村、中国山地の真ん中にある人口約1,300人の村。6人目の実践者、エーゼログループの太刀川晴之さんは、西粟倉村で「未来の里山をつくる」をビジョンに、地域資源を活かした事業づくりに取り組んでいます。

なかでも3年ほど前に始めた「ビオ田んぼプロジェクト」は、田んぼにビオトープを作りながら持続可能な米作りを目指す試み。3年経った現在、絶滅危惧種のタガメが爆発的に増え、コウノトリまで飛来するようになったといいます。

人と自然が育み合う、というテーマでやっています。人が関わることで自然の質が下がったり、自然が失われるっていうことがあってはならない。そのためには自然に対して愛着を育むことが重要かなと思っています」

CSA(消費者が農家と直接つながる地域支援型農業)のような仕組みで「ビオ田んぼクラブ」を運営しつつ、誰もが遊べる「ビオ田んぼパーク」を構想中。太刀川さんが投じたのは、こんな問いでした。

「みんなで自然や生きものを育む『遊び』を、どうつくるか。地域やそこの自然と関わるとき、どんなふうに関わってみたいか、何をしたいか、そこにはどんな理由や動機があるか──皆さんと一緒に考えたいです」

遊びが、再生につながるとき

ピッチが終わり、場の空気が切り替わります。6人の登壇者がそれぞれの場所に散らばり、参加者が5〜7人ずつのグループに分かれていきました。進行役から「ぶっ飛んだアイデアでもいい、人のアイデアに乗っかってもいい、とにかく楽しもう」とブレストの心得が伝えられ、20分×2回のセッションが始まります。

ピッチで投げかけられた6つの問いを、それぞれのグループで、深めていきます。

金澤さんを囲んだグループでは、走水という土地の話から参加者の発想が広がっていきました。「防衛大学があるなら、電気も水も使えない環境で災害時の過ごし方を学ぶ防災キャンプはどうか」というアイデアが出ると、金澤さんはそこに「遊び」と「再生」が出会う可能性を見いだします。

「インフラが遮断されたとき、海から食べ物を確保できる場所がどれだけ貴重か、気づくんですよね。地域が自然をしっかり維持していることが、いざというときの強さになる。そうやって自然との共存への意識が、もっと広がっていく気がします」

走水の環境資源の新たな活用方法について、金澤さんと参加者でアイデアを出しあう

別のグループでは、高山さんの「海藻×〇〇」というお題が、思いがけない方向に走り出していました。パンに練り込む、塗料の素材にする、いっそコンクリートに混ぜてみたら──食材としての海藻が、次々と別の姿に変わっていきます。そんな勢いのなかで、高山さんがふと口にしたのはこんな視点でした。「ただ体験しに来たつもりが、実は海の環境保全につながっていた──そんな仕掛けにできたら」。

「海藻×〇〇」のお題に、参加者から次々とアイデアが挙がる

太刀川さんを囲んだグループでは、参加者が自身の経験を持ち寄りました。地元のラグビーチームと組み、田植え前の田んぼで子どもたちが泥だらけになる「田んぼラグビー」。生き物好きが集まったメンバーらしく、話は「田んぼを遊び場にしながら、そこに棲む生き物への愛着をどう育てるか」へと深まっていきます。嘉山さんのグループでは、規格外で捨てられてしまう野菜を、子どもたちが遊びながら味わう体験に変えられないか、というアイデアが交わされました。

参加者のアイデアに、太刀川さんが耳を傾ける

具体的な事業案が立ち上がったのは、大澤さんのグループ。ヤマハ発動機のマウンテンバイクにセンサーを積み、子どもたちが尾鷲の森を走るほどに、どんな鳥がどこにいるか、生態系のデータが集まっていく──遊ぶことが、そのまま自然を知り、守る行為になる。企業のアセットと地域の自然を組み合わせた、具体的な事業イメージが語られました

ブレストから新規事業の企画会議になっていく

一方、関山さんのグループがたどり着いたのは、もっと先の話でした。「猛暑で子どもが外に出られない。木陰を増やせないか」という声から、話は明治神宮へ。100年前に植えられた木々が、いまは夏でも体感で5度涼しい森になっている。子どもファーストで街に木を植えるのは、100年先への投資ではないか──。

保育の現場から100年先の社会へ、関山さんと参加者の話が広がる

すぐに動きだせる事業もあれば、100年かけて育てる風景もありますが「遊び」は、そのどちらの入り口にもなります。

「いい具合の不完全燃焼」から、次のフィールドへ

今回のイベントは、「地球がよろこぶ遊び」のアイデアを、実践者・参加者のみなさんと引き続き検討していくためのキックオフ。「いい具合の不完全燃焼」が、次回の議論につながっていきます。

続編となる「地球がよろこぶ遊び発見ラボ vol.2」は、2026年7月9日にリジェラボで開催されます。

参加者のみなさまとは、Slackコミュニティで議論を深め、2026年の夏には、実践者のフィールドを実際に訪れるフィールドワーク、冬には事業仮説に落とし込む「発見委員会」も予定されています。

6人の実践者と参加者、そしてヤマハ発動機が、今日この場で深めた問いは、確かに「面」へと広がる種を蒔きました。次の場は、7月9日。この日の「不完全燃焼」が、また次の一手につながっていきます。

セッション後も、会場のあちこちで対話が続く

次回のイベントは、下記Peatixからお申込みいただけます。
地球がよろこぶ遊び 作戦会議〜三浦と尾鷲の森と海を舞台にした遊びを一緒につくろう〜 (地球がよろこぶ遊び発見ラボvol.2) | Peatix
Beyondミーティング 公式サイト

※所属部署・役職は公開当時のものです。
※本記事は公開当時の取材内容および情報に基づいて構成しており、現在の状況とは異なる場合があります。

RePLAYでは
メールマガジンを配信中!

公開記事やイベント情報を
月に一度のペースでお届けしています。
ぜひご登録をお願いします!

メルマガ登録
記事をシェアする
LINE
X

私たちは共に遊びをつくる
パートナーを探しています

お問合せ

地球がよろこぶ、
遊びをつくる

ページ
先頭へ