サッカークラブとつくる地域の未来〜「ジュビロサステナビリティ共創DAY 2025」イベント
サッカークラブを旗印に、企業・行政・市民が集いサステナブルな「欲しい未来」を共創する一日。ジュビロ磐田と地域が描くサステナビリティの現在地をレポートします。
サッカークラブを旗印に、企業・行政・市民が集いサステナブルな「欲しい未来」を共創する 一日。ジュビロ磐田と地域が描くサステナビリティの現在地をレポートします。
静岡県西部を舞台にしたサステナビリティと地域共創の新たなうねり、その起点となる一日だったのかもしれないーー。2025年11月にヤマハスタジアムで開催したワンデーイベント「ジュビロサステナビリティ共創DAY2025」には、そう予感させるだけの熱量と一体感がありました。
イベントはいずれも静岡県西部地域に居を構えるヤマハ発動機、静岡銀行、ジュビロ磐田の3者が、サステナブルなまちづくりの共創アクションを起こしていくことを目的に共同開催したもの。当日は地域の企業、行政、そして未来を担う子どもたちなど多様なステークホルダーが一堂に会し、「欲しい未来」に向けたまちづくりのアイデアを出し合いました。
この記事では、イベントの模様を振り返りながら、特にサッカークラブを要とした地域共創が持つ可能性について考えてみたいと思います。
地域共創の要としてのジュビロ
イベントは2部構成で、1部は静岡県西部地域に拠点を置く企業・行政関係者約50人が参加した情報交換やディスカッション、2部はそこにジュビロ磐田のファンクラブ会員や地域の子どもたちが加わって、まちづくりの具体的なアイデアを共創しました。
1・2部を通じてファシリテーターを務めたのは、長年Jリーグや各クラブの社会連携活動を支援してきたshikakeruの上井雄太さん。上井さんからイベント冒頭、次のような提案がありました。
「せっかくなのでみなさん、ジュビロのユニフォームを着てみませんか」
こうして参加者ほぼ全員が、配布されたサックスブルーのユニフォームに袖を通してディスカッションに臨むことになりました。そのことがどこまで一体感に寄与したかはわかりませんが、この日の参加者たちには、互いにほぼ初対面にも関わらず、最初から前のめりな熱量がありました。
ヤマハ発動機はこれまでにもリジェネラティブ、サステナビリティといったテーマで、新たな価値創造に取り組んできました。地球規模の難題に立ち向かう上で、企業・団体の枠組みを超えた共創は不可欠なものになっています。たとえば、イベントの発起人の一人である新ビジネス開発部・臼井優介が取り組む海ごみ収集機を使ったビーチクリーンにしても、多様な方々とのコラボレーションなしには成立しませんでした。
しかし、営利団体である企業が利害を超えて共創することは、簡単でないのも事実です。どうやってそのハードルを乗り越え、目的を等しくする熱のある集団にできるか。そこに、ジュビロのようなスポーツクラブを旗頭とすることの大きな意義があると、上井さんは言います。
「発信力と求心力、この二つがスポーツにはあると思っています。地域の象徴的存在であるスポーツクラブが旗を掲げることによって、まちづくりだったりサステナビリティだったりという難しいテーマだったとしても、いろんな企業さんや行政のみなさんが集まってくれる。さらには、世代を超えて子どもたちも集まってくれるという求心力があると思うんです」
国内トップリーグで複数回の優勝を果たし、日本代表の主力選手も数多く輩出してきたジュビロ磐田は、静岡県西部地域の人たちにとって紛れもない地域の誇りであり、シンボルのような存在です。そのことを改めて実感する一日となりました。
迫る「サッカーができなくなる日」
*見出しの写真は、ジュビロ磐田 加藤 真史氏
とはいえ、ジュビロ磐田は単なる象徴的存在というわけではなく、自ら主体的にサステナビリティアクションに取り組む動機があります。その背景にあるのが、気候変動の問題です。ジュビロ磐田の加藤真史さんによれば、この問題はサッカークラブにとっても他人事ではなく、むしろ喫緊の課題として迫っているのだと言います。
「豪雨や台風などの影響によるJリーグの試合中止数は、2018年を境に約5倍に増加しています。このままではサッカーができなくなる日が現実のものとなる。そうした危機感がすでに各クラブで共有されているんです」
こうした状況を受け、Jリーグは2026年から、国際的なイニシアチブである「Sport Positive Leagues(SPL)」へ、アジアで初めて参入することを発表しています。
SPLとは、サッカークラブの気候変動対策や環境アクションをスコア化し、その進捗や方向性を可視化する仕組みです。2018年にイングランドで始まり、現在はプレミアリーグ、ブンデスリーガ、リーグ・アン、EFLなどが参加しています。「再生可能エネルギー」「廃棄物管理」「輸送手段」「教育」など12項目以上の指標に基づき、各クラブの取り組みが評価・公開されます。
第1部「サステナアクション・ミーティング」で行われたグループワークでは、このSPLの12の分類を基にして、具体的なアクションアイデアを検討・発表しました。
SPLへの参入により、Jリーグ各クラブの価値は今後、「勝敗」という従来の尺度だけでなく、環境や社会、未来への貢献度によっても測られるようになります。Jリーグの理念に基づき、これまでも地域に密着した活動を続けてきたジュビロ磐田ですが、さらに「地球に必要とされる存在」へと進化することを求められているというわけです。
「けれども、そうした活動をクラブ単独で実行するのには限界があります。地域のみなさんとの共創は、ジュビロにとっても不可欠な要素なのです」と加藤さんは訴えます。
静岡銀行が構想する共創エコシステム
続く第2部「サステナトレセン・セッション」では、地域の未来を担う子どもたちが主役となりました。ジュビロ磐田のファンクラブ会員や地域の子どもたちと、第1部に参加した大人たちが混合チームを組み、「地球と地域がよろこぶ遊び」をテーマにアイデアを共創しました。
このセッションで実施されたのは、スポーツの力を活かした共創を進めるshikakeruがJリーグ各クラブと推進する「サステナトレセン」のプログラムです。このプログラムは、日本サッカー界の人材育成を支えてきた「トレセン制度」をモデルに、地域の未来を支えるサステナビリティ人材の育成を目指しています。
shikakeruの上井さんは、「子どもたちは地域の未来を生きる当事者であり、大人にはない自由な発想が期待される存在でもある」と語ります。その言葉通り、芝生に寝転がりながら行われた対話は、大人と子どもが同じ目線で考える場となり、自由な発想を引き出す大きな要因となっていたようにも映りました。
そして、重要なのは、この場で生まれたアイデアと熱を形にすることです。その点でカギを握るのが、「地域とともに夢と豊かさを広げる」を基本理念に掲げ、社会価値創造と企業価値向上の両立を目指す静岡銀行の存在です。
「地方銀行は地域・企業・行政との幅広い接点を持っています。クラブと地域をつなぎ、取り組みを横断的に支える存在として非常に相性が良いと思うんです」。そう語るのは、同行の海野裕晃さん。同行では継続的な共創を具体的に支える仕組みとして、2026年7月に一般財団法人「静岡ミライ共創」の設立を予定しています。
株式配当を原資に、地域の産業創造や課題解決プロジェクトへの投資・助成を行う同財団の存在は、アイデアを「構想」で終わらせず、持続的な取り組みとして根付かせるための重要な基盤となるはずです。
「まず、やってみる」ことから始まる
ジュビロ磐田の加藤さんは、SPL導入に先立ち、リヴァプールやスパーズ、さらには「世界一グリーンなフットボールクラブ」として国連からも認定されているフォレストグリーン・ローヴァーズなど、イングランドの環境先進クラブの視察を行っています。
加藤さんはそこで得た学びを「第一に、失敗を恐れず、できることから始める姿勢。第二に、取り組みを数値化し、進捗を管理すること。第三に、クラブ単独ではなく、地域全体を巻き込む共創の重要性」と振り返りました。
中でも強調されたのが、「身の丈に合った一歩を、まず踏み出すこと」の大切さ。世界のトップクラブが本気で行動している姿を目の当たりにし、行動の重要性を強く実感したのだと言います。
「ジュビロサステナビリティ共創DAY 2025」は、地域共創に向けた確かな第一歩となりましたが、この熱量とアイデアを具体的な行動へとつなげられるかどうかが、この一日の価値を決めると言えそうです。
イベント開催からはや3カ月。すでにいくつかのプロジェクトが動き始めています。ヤマハ発動機としては、今後さらに多くの仲間を巻き込んで、このうねりを一層大きなものとしていきたいと考えています。
当日の様子がわかる動画はこちら:
https://www.youtube.com/watch?v=OrOo9ka-4KE
関係者の想いに迫った記事はこちら:
https://leaph.co.jp/shizuoka-pr/pr-nextera/sustainability-co-creation/
執筆:鈴木陸夫
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