「感動」という日本語は、
多くの言語で翻訳することが難しい、
不思議な言葉。
「感動創造企業」である私たちが、
モノや体験を通じて「ヤマハ発動機らしい感動」を
届けるためには、
まず「感動」とは何かー世の中の人が
どんなことに心を動かされているかーを
理解する必要があります。
そこで私たちは2021年から3年間、
立命館大学とともに、「感動」とは何か、
人々はどんな体験に「感動」していて、
「感動」そのものはどんな体験なのかを、
研究してきました。その中で、
ひとことで「感動」と言っても、
文化によって捉え方や感じ方が
異なる可能性が見えてきました。
今回は、京都市立芸術大学と
共同で進めている、
「『感動』の文化差に関する研究」の
状況と今後の展望をご紹介します。
世界を見渡すと、「感動」にぴったりと当てはまる言葉は意外と少ないんです。 だから私たちは、 まずは日本人を対象に「感動」がどのような体験なのか理解するところから研究を始めました。
立命館大学との共同研究では、日本人4690人を対象に「どのような体験で」「どのように感動を」「どれくらい感じているか」を調査し、その「感動」がどのような体験だったかを測定することができる「感動反応尺度」を開発。感動反応尺度は、「幸せだった」「すっきりした気分になった」といった心の動きと、「涙が出た」「鳥肌がたった」といった身体の変化の2軸で構成されており、計11種類の感動時の心身反応を33項目で測定することができる尺度となっている。
研究の結果、日本人が感じる「感動体験」は、「対人関係」「家族」「アート」「達成」など、主に8つのカテゴリに分類できることがわかってきました。また、30代以降の女性は家族に関する出来事で感動するケースが多い一方、男性は年代を問わずスポーツに関する体験から感動を得やすいことがわかりました。さらに、感動した際の反応にも違いがあり、女性は「あたたかさ」や「涙」を感じやすく、男性は「鳥肌」が立つ感覚を覚えやすい傾向があります。つまり、同じ日本人であっても、感じやすい感動のカテゴリや反応には大きな個人差があることが明らかになってきました。
研究の結果、日本人が感じる「感動体験」は、「対人関係」「家族」「アート」「達成」など、主に8つのカテゴリに分類できることがわかってきました。また、30代以降の女性は家族に関する出来事で感動するケースが多い一方、男性は年代を問わずスポーツに関する体験から感動を得やすいことがわかりました。さらに、感動した際の反応にも違いがあり、女性は「あたたかさ」や「涙」を感じやすく、男性は「鳥肌」が立つ感覚を覚えやすい傾向があります。つまり、同じ日本人であっても、感じやすい感動のカテゴリや反応には大きな個人差があることが明らかになってきました。
日本人の感動体験や感動の個人差について理解が進んできたところで、個人より大きな世界という文脈で感動を理解していきたいと考えました。実際に感情の捉え方や表出の仕方は文化の違いがあるといわれているので、感動も体験内容や感じ方が文化によって異なるのではないかと考えました。そこで、京都市立芸術大学と共同で「『感動』は文化により異なるのか」という研究を進めることにしました。
まず予備的調査として、日本国内において文化と感動の関連を調査してみました。 具体的な手法としては、日本人6454名を対象に、感動した出来事について自由記述で回答してもらい、その感動した出来事がどのような体験であったかを測定する「感動反応尺度」に回答してもらいます。その後、国民文化の違いを相対的に比較できる指標として著名な「ホフステードの文化特性尺度」に回答してもらい、「感動反応尺度」と「ホフステードの文化特性尺度」の相間を見るということを行いました。そうすることで、「『感動の感じ方(感動反応尺度)』と『その人の文化特性(ホフステードの文化特性尺度) 』の関連」を見ることができます。
その結果、感動の種類によって、文化と感動には関連があることが分かってきた。 まず「達成」に関する感動を見てみると、ホフステードの文化特性尺度のうち「個人主義」と感動体験尺度の『ポジティブ感情』に相間が見られ、「個人主義傾向が高い人ほど、達成に関する感動ではポジティブ感情を抱きやすい」ということが示唆された。さらに「自然 / 旅行」に関する感動を見てみると、ホフステードの文化特性尺度の「長期志向」と感動反応尺度の「爽快感」に相間が見られ、「『長期志向』が高い人ほど、『爽快感』を感じやすい」ということも示唆された。 今回は国内データのため確定的な結論を導くことはできないが、これらの結果から「アメリカやオーストラリアといった『個人主義』が高い文化圏では、『努力の末に達成した』というストーリーが『ポジティブな感情』を喚起するかもしれない」といったことや「日本や中国など『長期志向』が高い文化圏では、『自然や旅行』といった非日常的な場面で『感情を解放する』ようなストーリーが『爽快感』を喚起しやすいだろう」といったことが考察できる。
今回は日本国内の調査でしたが、感動と文化には何かしら関連性があるということが分かってきました。各国のヤマハ発動機のスタッフから、「Kandoとはどんな体験なのか」という疑問も寄せられてきている中、文化を加味したKandoを表現して理解に繋げられるといいなと思っています。
「感動」の捉え方はさらに違うはず――
それが、この研究から明確になってきました。
ヤマハ発動機は「感動創造企業」として、世界中の文化からみた感動を理解する必要があると考えています。今後は、実際に文化が異なる国や地域で感動と文化の関連性の調査を行い、文化による感動の違いについて調査していければと思っています。実際に来年から様々な文化圏で調査を行っていく予定なので、その結果が楽しみです。
引用文献:
Shoda, H., Yasuda, S., Uemiya, A., Yuhaku, A., and Isaka, T.,
“Uncovering the essence of moving experiences in Japanese culture: Development and validation of a Kando Reaction Scale.” PLOS One, vol 19, no 12, Dec.2024.
川嶋 優衣,末神 翔,正田 悠,
感動体験の種類と文化的傾向-日本人におけるホフステード指数との関連- , 2025.
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