デザイナーのキャリアとしごと 諸井 千倖
デザイナーが語る、キャリアのこれまでとこれから。

「製品デザイン」と「社員の個性」が印象的な会社
ヤマハ発動機に興味を持ったのは、大学1年生の就職セミナーでした。実際に働く大学の卒業生が説明に来てくれて、そこで初めてこの会社がいろんな商材を扱っていることを知り驚きました。また、そのときに紹介された「02GEN」という車椅子のコンセプトモデルが、とても印象に残りました。

私は製品デザインを専攻し、大学院では「宇宙空間で使う家具」について研究していました。宇宙では我々が当たり前にできていることができず、むしろ行動の概念自体が違っていて、宇宙らしい生活様式から新しい価値を見つけてデザインしていました。そういった身の回りの当たり前とは異なる環境や文化にフォーカスして理解し、新しい世界観を作り上げていくことが、世界各国で幅広く商材を扱っているヤマハ発動機でも活きてくるんじゃないかと思いました。
そして、大学院1年の時にインターンシップに参加してみると、社員が個性豊かな方ばかり。私の意見に真摯に耳を傾けアドバイスをくださったときに感じたのは、好奇心旺盛で人の面白がっていることを掘り下げることが上手な人が多いということです。私だったらここで自分の持ち味をどう発揮していこうかと考えて、「ここで働きたい」という思いが強くなり、入社に至りました。
「空振りしてもいい」と思える、
若手を育てる文化
入社2年目の現在は、スクーターのスタイリングデザイナーとして働いています。日々の仕事は、会議で情報共有や進捗確認を行い、それ以外の時間は製品スケッチを描くことが中心です。ひとくちにスケッチと言ってもいろんなものがあります。アイデアの種を最大限に表現するスケッチや、お客さまが乗車した姿を想像できるようなスケッチ、一緒に開発していくメンバーに詳細を伝えるための精密なスケッチなど、それぞれの場面に合わせて全く違うテイストのスケッチを描いているのです。あの手この手の表現手法を使ってプロジェクトの議論を進めていくところが、とても面白いです。
時折インプットの出張に出ることもありますね。これは情報収集のためやデザイナーとしてアイデアを枯渇させないためなど目的はさまざまで、美術館鑑賞やモビリティ関連のイベント、時には工場見学に行くこともあります。

業務はチームでプロジェクトを進めるスタイルで、OJTリーダー(※)や、ベテランの先輩がたが常に気にかけてくださいます。私の意見も「若手だから」というフィルターをかけず、「経験値にとらわれない新鮮な視点」として大事にしてくれる雰囲気がとてもありがたいです。何が正解かは発信して確認してみないとわかりません。「失敗や空振りをしてもいいから、自信を持って発言してみよう」と思えるようになりました。そして「こんなアイデアがあったのか~」と新しいひらめきを提示できたときには、モチベーションが上がります。本当の失敗は「やらないこと」だと気づけたのも、挑戦を恐れない社風のお陰かもしれません。
※OJT…On the Job Trainingの略。実務を通じて行う人材育成制度であり、入社数年は先輩社員が1名リーダーとして指導にあたります。
仕事以外でも、ヤマハ発動機で働いてよかったなと思うことがあります。それは休日も会社の仲間と楽しく過ごしていることです。入社1年目に二輪免許を取ったので、同じように免許をとった寮の同期とよくツーリングに出かけます。浜名湖へたきや漁を体験しに行ったときは、乗せてもらった船にヤマハ発動機製の船外機がついていて盛り上がりました(笑)。


製品を通じて、
ユーザーの暮らしに「ときめき」を届けたい
社会人になってからは、プライベートの旅行でベトナムに行く機会がありました。スクーターのデザインに関わるようになったので、現地でのスクーターの使われ方も少し観察してみたところ、衝撃を受けることがありました。
二輪はインテリアとエクステリアの要素が一体となり、なおかつ乗り手の姿勢、マインド、表情までもがプロダクトの印象として外に現われる点が面白いのですが、姿勢に加えて服装や持ち物の違いによって、スクーターが乗り手の身体の延長にも見えたり、時には家のような空間にも見えたりしました。日本とは異なる使い方や価値観を体感し、なぜ国によって求めるものが違うのかを理解できました。ヤマハ発動機らしい魅力を製品に込めるには、ユーザーの生活を好奇心をもって自分の目で見て、「数年後にどうなってほしいか」を見据えてデザインすることが不可欠なのだと感じた出来事でした。
現在は特定の国や地域で販売するローカルモデルのスクーターのデザインを担当しているのですが、いずれは世界中で販売される「グローバルモデル」に挑戦したいと思っています。好奇心をもって得た気づきを活かし、より多くのユーザーのライフスタイルにときめきをプラスできる製品をデザインしていきたいです。
