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デザイナーのキャリアとしごと 八窪 寛明

デザイナーが語る、キャリアのこれまでとこれから。

デザイナーと設計の懸け橋となって、より良い造形を追求する キャリア採用 2018年 入社 デジタルモデラー 八窪 寛明

こだわりのものづくり
もっと深く関わりたい

ヤマハ発動機に転職して、今年で8年目になります。昔からクルマの造形が好きだったので、専門学校で自動車のデザインを学び、卒業後はデジタルモデリングを専門的に請け負う会社に就職しました。そこでデジタルモデラーとして約10年間経験を積みながら、国内の二輪・四輪メーカーさんと幅広くお仕事をしてきました。じつは前職で働いていたころからヤマハ発動機のお仕事に関わっていたこともあり、「ヤマハのデザイナーはこだわりの強い人が多いな」と感じていました。「何とかしていい製品にするぞ」という気概に溢れていて、細かいところまで妥協しない。そんなこだわったモノづくりに携わるのはとても楽しかったですし、自分も一緒にもっと深く開発に携わっていきたいな、と考えたことが転職のきっかけになりました。

私が担当しているデジタルモデリングとは、デザイナーがスケッチやクレイを経て追求した造形を、設計の技術的な要件を織り込みながらCADで3Dデータを作成する仕事です。このデータは造形の意匠と設計的な内部構造の両方に関わるため、時には設計側から「このままでは構造的に難しいので、こんな感じで変更できないか」と要望を受けることもめずらしくありません。時には変更することで造形に影響が出ることもあります。そんなときは要望をそのまま受け入れるのではなく、「何か他に方法はないか」と常に模索します。何とか要望をすり合わせて設計の品質を満たしつつ、より良い造形を提案していく。大変ではありますが、そこがデジタルモデラーとしての醍醐味だと思います。提案内容が良ければデザイナーも設計者も「いいですね!」と受け入れてくれたりと、ヤマハ発動機ではモデラーの裁量が大きいところもやりがいにつながっています。

インテリアとエクステリアが融合する、
二輪ならではのモデリング

前職では自動車とモーターサイクルともにデジタルモデリングを手がけてきましたが、いまはモーターサイクルが中心ですね。YZF-R7やTMAX560などの量産モデルや、MOTOROiDなどコンセプトモデルも担当してきました。作業内容としては自動車のモデリングとほとんど変わりませんが、モーターサイクルならではの特徴もあります。それは人が手足で触れる部分が多いということ。自動車はエクステリアと人の接点がほとんどないので、感覚的にはインテリアのモデリングの方が近いのかもしれません。モーターサイクルは自動車のインテリアとエクステリアが融合しているかのような、独特の感覚が非常に面白いなと感じます。造形は研ぎ澄ませつつも、人が快適に運転するためにどうすればいいか、そういうことを加味しながらデータを作り上げていくのが楽しいですね。ユーザーにとってうれしいカタチって何だろう、という視点は常に大切にしています。

逆に仕事で大変なのは「端面」というパーツとパーツの接合するところで、普段ユーザーが注目しないような細かい部分なんです。例えば外装パーツなどの構造物を配置しているのは設計側ですが、その端面のかみ合わせ部分はデジタルモデラーが作っているんです。造形を崩さず、それでいて内部構造に干渉しないように端面を構成するのは、非常に骨の折れる作業なんですよ。また見栄えの面だけでなく、触れたときに違和感がなく心地よいかどうかもユーザー体験を大きく左右しています。なにげない部分だと思われがちですが、とても大事にしているところですね。だから外装パーツの接合部分が多いカウリングされたスクーターやスーパースポーツバイクは、デジタルモデラーにとってなかなか手強いカテゴリーです。ほんの少し面の造形を変えただけで周辺の広範囲に影響が及ぶので、モデリングにものすごく手がかかりますから。個人的に一番好きなのは、シンプルなネイキッドタイプ。ごまかしの利かないパーツ構成だからこそタンクをとことん綺麗な造形にして、最高の品質で仕上げたい、という気持ちにさせられるんです。

デジタルからフィジカルまで
シームレスに造形と関わりたい

デジタルモデラーに向いていると思うのは、まずはカッコいいものをカッコいいな、と思える造形センスがある人。そしてモノづくりが好きで、細かい作業を楽しめる人は適性があると思います。細かい作業といってもデジタルの話なので、求められるのは手先の器用さよりむしろ作業のスピード。少し調整してみてうまくいかなければすぐに戻したりと、手際の良さのほうが重要です。

次に忍耐強い人。デザイナーが「こう作りたい」と求めている造形に対して、設計側は「それでは要件に合わない」と主張して、デジタルモデラーがその板挟みになることもあります。そんなときは両者の間で粘り強く折衝して、より良い造形に着地させるのもデジタルモデラーの腕の見せどころだと思います。そのためにも今後はクレイモデリングやスケッチなど、直接関わっていない業務についても知見を深めていきたいですね。これらの領域は専門学校でも学びましたが、数年前にあるプロジェクトでクレイモデリングに携わる機会があり、造形とより深く向き合ういい経験になりました。やはり一つのモデルに対して関わる作業領域が広いほど、デザインと設計要件をより深く理解し、長い時間をかけて造形を磨いていくことができます。いろんな立場の視点から造形を追求し、デジタルからフィジカルまでシームレスに造形と関わっていけるモデラーになりたいですね。

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