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デザイナーのキャリアとしごと 江原 次郎

デザイナーが語る、キャリアのこれまでとこれから。

焚きつけて熱を上げていく、「デザイナーの機能」を再発見 キャリア採用 2017年 新卒入社 スタイリングデザイナー 江原 次郎

クリエイティブ・ハッカソンで感じた
“遊びを糧にものを生み出す”風土

私は大学時代、企業のインターンに積極的に参加しました。特に二輪車メーカーのリクルートイベントには、ほとんど参加したんじゃないかと思います。ヤマハモーター・クリエイティブ・ハッカソンに参加したのは3年生の時です。浜名湖で社員と学生が一緒にマリンアクティビティを楽しむなど、明らかに他の企業のアプローチとは違っていて、少し戸惑ったのを覚えています。

私たち学生に与えられた課題は、「段ボールで水上の乗りものをつくり、プールの端から端まで人を乗せて渡りきる」というものでした。いま思えば、「手を動かすことによって得られる気づき」など、デザインに対してもプロセスを大切にする会社ならではの課題だったのだと理解できますが、その時は問われていることの真意をつかめず悩みました。
おもしろかったのは、参加している学生の幅広さです。他の会社では、就職期を迎えているプロダクトデザイナー志望という共通項があったのですが、このハッカソンには畑の違う意外な学部の学生がいたり、1年生がいたりしました。そうした多様なメンバーと意見交換しながら役割分担をして、なんとか与えられた課題をクリアすることができました。フネの重心は水面近くのほうが安定するのですが、マリンアクティビティで体験したボートのフライブリッジからの気持ちのいい視界を再現するために、あえて視点の高さをもたせたデザインにも「おもしろい!」という評価を受けました。 入社前のこうした体験もあって、ヤマハ発動機には、“遊びを糧にものを生み出していく会社”という独特の風土を感じていました。

製品の届け先である、人や社会
その変化が実感できるプロダクト

仕事に向き合う私の姿を見て、ある人から「アスリートみたいだね」と言われたことがあります。彼によれば、スポーツ選手は目標とする記録に到達するために、まず自分の現在地を客観的に把握する。そして、不足している筋肉や反射能力を反復トレーニングによって積み上げていく。私の仕事へのアプローチがそう映るそうです。

漠然とした言い方になりますが、私にとってありたい姿は「その時代を代表する製品にデザインで寄与する」というものです。製品のお届け先である人や社会が、どんなふうに変わったか、どんなふうに幸せになったり喜んでくれたりしたか、それを実感できる仕事をしたいと思い描いています。
ただ、そうした目標値と、現在の自分の間には明らかなギャップが存在します。たとえば先日もクレイモデラーとの会話の中で、彼には見えているものが自分には見えていないと自覚する瞬間がありました。簡単に言ってしまえばそれが「経験の差」なのかもしれませんが、私はその差を時間が埋めてくれるとは考えていません。プロダクトデザイナーとしての筋力や反射神経を鍛えるために、とにかく手を動かすことを意識しています。さらにそのアウトプットを上司のところに持って行っては、評価と助言を繰り返し求めています。その姿が「まるで筋トレのよう」であり、「アスリートみたいだ」ということでした。

バイタリティを期待されての抜擢
成長を続けながら全力で応えたい

いま、とある大きな仕事に取り組んでいます。そのメンバーにアサインされたのは、ある意味、組織が私のバイタリティに期待をかけてくれたんだろうと解釈しています。繰り返しになりますが、私にはまだ補わなければならないスキルがあると考えています。それを自覚しているからこそ、アウトプットの力を高める取り組みを続けてきました。若く経験の少ない自分にこの大役を担わせてくれた会社の期待に、成長を続けながら全力で応えていきたいと思います。
仕事の経験値が高まっていく中で、デザイナーが担うべき役割が自分の中でより明確になってきました。それと同時に、一つの製品を世に送り出すまでに関わるたくさんの人々、その一人ひとりへの理解や敬意が深まったとも感じています。造形や機能・性能を成立させる設計者、製品に昇華するために小さな部品の一つひとつまで細かく原価を計算する部門、そしてそれを実際に形にするための製造技術まで、皆でつくり上げるという意識が日に日に高まっています。
そうした中で、デザイナーの最も大切な機能は、「焚きつけ」だと確信するようになりました。きっともっと良くなるはずだ、そのためにもう一度試してみよう、くそだめか、じゃあこんなアイデアはどうだろう……。あの手この手で焚きつけながら、徹底的にチームの熱を上げていく。ものづくりの現場で発見した、プロダクトデザイナーとしての新たな喜びでもあります。

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