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人の役に立てるは無上の悦び!佐藤恭彦 三島市オフロードバイク隊

三島市オフロードバイク隊『モーグル』。隊を率いる佐藤恭彦さんにインタビューを申し込み、バイクレスキューのノウハウや、我々ライダーに対する思いなどを語ってもらった。

装備品はほぼ自腹、訓練は業務外!?

ーー三島市オフロードバイク隊『モーグル』はどのような活動をされるのですか?

佐藤隊長: 三島市内で震度4以上の地震が発生した場合に直ちに参集する、三島市役所災害対策本部直轄の部隊で、緊急輸送路や救護病院等の被害状況の情報収集にあたります。
Mishima:三島
Off-road:オフロードバイク
Group:隊(グループ)
Lead(er):率先(者)する、先導
Emergency:緊急・非常事態

 「災害時に率先して情報収集にあたる部隊」を意味する英語の頭文字をとって「MOGLE(モーグル)」としました。モーグルには同音異語でスキーにモーグルという競技があります。コブの急斜面をいかに巧く早くこなせるか競う競技で、バイク隊も災害時は平常時と違い倒壊家屋等の障害の中をすばやく的確に情報収集にあたらなければならないという共通点があります。毎月1回、バイクの走行訓練、情報伝達訓練、無線通信訓練等を行う定例訓練や、各隊員が自主訓練を行うとともに、三島市総合防災訓練への参加や陸上自衛隊との合同訓練などを通じ、走行技術の向上のみならず、災害時に効果的に活動ができるよう努めています。

ーー陸上自衛隊との合同訓練までされているんですか!三島市役所の職員でありながら、皆さんプロなんですね。

佐藤隊長: いえ、決してプロではなく、三島市役所職員有志による活動です。メンバーは市役所の中でバラバラの部署に在籍しております。ちなみに私は市税収納課の職員で普段は市民の皆さまから納めていただいた税金の収納・管理を行っています。災害対策本部直轄部隊でありながら有志ボランティアでもあるので、プロと一般ライダーの両方の気持ちがわかるので、橋渡しのお手伝いができると思っています。また、定例訓練以外は業務外活動として、退庁跡や、休日、有休のなかで実施しています。バイク以外の装備品のほとんどを自費でそろえています。

ーー自腹ですか(驚

佐藤隊長: 我々が現場で使う装備品は高額ですので、趣味と結びつけないと難しいですよね(笑) 家族の理解を得るのに苦労している隊員もいます。ただ、良い面もあります。支給品では自分が納得するもの、使いやすいものを揃えられません。現場に背負っていくリュックサックやファーストエイドキット、GPS、読図用のコンパスなど、個人装備は日常的に使い慣れておくことが大事なんです。

ボランティア=自由意志/喜びの精神

ーー隊員選抜はどのようにされているのですか?

佐藤隊長: 基本は勧誘です。バイク好きや、登山好きだったり、アウトドア派の職員に声をかけます。特に、単独でのキャンプや登山の経験があれば、災害下の環境に耐えたり、迅速な判断・対応できる素養が備わっていることが多いです。 有志とはいえども遊びではありませんので、訓練は厳しい。訓練後、二度と来ない方もいますが、決して責めたり追ったりはしません。
ボランティアというと日本では『善意をもって誰かのために行う奉仕活動』というイメージがありますが、実は世界からすると少しズレています。「ボランティア(volunteer)」の語源はラテン語の「ボランタス(自由意志)」やフランス語の『ボランティ(Volunte):喜びの精神』です。「奉仕:利害を考えずにつくすこと」のような意味とは異なります。日本のボランティアは歴史が浅く、 租庸調という雑役のイメージがあるのではないでしょうか。例えば、戦時中の勤労奉仕のように組織や周囲の空気からの圧力により、自身の意思に反して、仕方なくやっていることもボランティアと言われています。また、お金をもらうとボランティアではないという考えも日本にはありますが、国境なき医師団などの『有償ボランティア』は海外では当たり前です。ボランティアは『自由意志/喜びの精神』があるかが本来のポイントで、私たちもその考えに沿って運営しています。

Dance with Wolves と Stands With a Fist​

ーー厳しい訓練を乗り越えてまでやり続けれらるのはなぜでしょうか?

佐藤隊長: もちろん辛いこともたくさんあります。それでも、充実したやりがいを感じる瞬間があるから、やめられないんです。交通渋滞や倒木を乗り越え、土砂崩れの隙間をすり抜け、バイクをまるで馬のように扱い、取り残され困っている方の元へ迅速に駆け付ける。そして人々に感謝される。これは他にない無上の悦びです。まるで、子供の時に憧れた仮面ライダーや映画『ダンス・ウィズ・ウルブス』のケビン・コスナーになれるのです。

ーーダンス・ウィズ・ウルブスですか!?本プロジェクトは『防災ライダーFIST-AID』ですが、ダンス・ウィズ・ウルブスには『Stands With a Fist(拳を握って立つ)』というヒロインがでてきますね。

佐藤隊長: ネイティブアメリカンのスー族に育てられた白人女性で、つたない英語で主人公の“ダンス・ウィズ・ウルブス”とスー族をつなぐ人物ですね。

ーー彼女のように持てる力を生かして、強い思いで人々をつなげるプロジェクトでありたいと思います。

佐藤隊長: ネイティブアメリカンの視点で描かれた『ダンス・ウィズ・ウルブス』は、原作者とケビン・コスナーが資金確保に奔走し、足りない分は彼自身が私財を継ぎ込み完成させたそうです。その結果、アカデミー賞で7部門を受賞し、西部劇で歴代最高の興行収入を達成しました。ライダーもともすると今の社会で悪者だと捉えられているかもしれませんが、いざという時に、自分たちの手でできることがたくさんあります。バイクで活躍される方が増えるのは、行政としてもありがたいですし、一人のライダーとしても喜ばしいと感じます。

>>>『地元ライダーにしかできないこと』へ続く。

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