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2002 YZR-M1(OWM1)

2007年 企画展 Vol. 1

2007企画展 Vol.1
YZR-M1の挑戦 ~MotoGP第一章 2002-2006の記録~

2002 YZR-M1(OWM1)

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Specification
エンジン 水冷4ストロークDOHC
気筒配列 並列4気筒
排気量 942~990cc
燃料供給 キャブレター
最高出力 200PS以上
最高速度 310km/h以上
潤滑方式 ウェットサンプ
1次減速 ギア
クラッチ 乾式多板
変速機 6速
フレーム型式 デルタボックス
ホイールサイズ 17/16.5in(前後)
タイヤサイズ 17/16.5in(前後)
ブレーキ(前) 320mmカーボン
ブレーキ(後) 220mmスチール
重量(FIM規則準) 145kg以上
燃料タンク容量 24L


制動時の安定性に貢献するエンジンブレーキ制御システム搭載

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初代YZR-M1、その開発における重点テーマは「より扱いやすいエンジン特性と、扱いやすい車体特性」だった。GPレース用の高出力エンジンでは、出力値だけでなく扱い易さがラップタイムの向上に繋がる点に着目し、出力向上と合わせて扱い易さにも開発の重点が設定された。選択されたエンジン形式は並列4気筒。規則上は3気筒、5気筒、V型などの選択肢があったが、この形が選ばれた理由は二つ。一つは新フレームとの相互関係だった。新フレームはGP500で実績のあるYZR500の骨格をベースに開発が進められ、そのフレームにバランスよく搭載することを考慮したとき、並列4気筒エンジンが極めて適した形状だという技術者たちの判断によるものだった。二つめは、並列4気筒には長年にわたる技術進化の歴史があり、エンジン形式としてもっとも成熟した形式の一つであることから、「その可能性を極限まで追求したい」とするチャレンジ精神があった。
新エンジンの開発は排気量942ccでスタートし、シリーズ後半は上限990ccまでスケールアップするなど進化を果たしたが、そのなかでもっとも特徴的な技術開発がエンジンブレーキ制御システム(電子制御クラッチ)だった。これはスリッパークラッチ機構のなかで作動する制御システムで、ギアポジション、スロットルポジション、ブレーキ油圧などの情報を検出し、電子制御でエンジンブレーキの特性を最適化する機構。実際のレース中にエンジンブレーキが支配する時間が長いことに着目した結果のフィーチャーだった。レース中、アクセルを全開にしている時間は全体の20%以下であるのに対し、アクセルを全閉にしている時間は全体の35~40%程度(2002年MotoGP・ヤマハチーム調べ)。このエンジンブレーキ制御システムは、全閉エリアでの操縦安定性向上を目的としたものだった。開幕前からテストを重ね、実際の投入はフランスGPから。さまざまな制動状況に対して車体挙動の安定化を図り、特にコーナー進入時のマシン安定性に貢献した。
一方、フレームもシリーズ中に進化を遂げていった。エンジン搭載位置の変更やタンク形状変更などが施され、徐々に戦闘力を上げる。序盤はYZR500の流れを汲むフレームを使用していたが、第5戦イタリアGPからはその流れに決別し、エンジン搭載位置を微妙に高くした新型を投入した。新フレームは2軸クランクで熟成させたYZR500系のフレームではなく、並列4気筒のトルク特性とのバランス向上を図りながら縦剛性も大幅にアップされたものとなった。さらにリア3軸廻りの相互関係の最適化などの効果が加わり、加速・減速時のほどよいピッチング効果に貢献した。また第10戦のブルノでは、カウル形状も進化。操安性、プロテクション効果、冷却性、過給効率の向上に貢献した。
この年、YZR-M1は開幕戦でC・チェカ選手が3位となったのをはじめ、M・ビアッジ選手、チェカ選手の活躍で全16戦中11回にわたり表彰台を獲得。ビアッジ選手は2度の優勝でランキング2位、チェカ選手はランキング5位となった。

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