ドローン運用を拡げる電源供給ユニット
ドローン用シリーズハイブリッドシステムの開発についてご紹介します。
ドローンの運用が直面する課題
ドローンの普及によって無人航空機が身近なものとなり、私たちの暮らしは大きく様変わりしていくと言われています。ヤマハ発動機のこの分野における取り組みは1980年代に農業における自動化・省人化をめざした産業用無人ヘリコプターの開発で始まり、現在では薬剤散布や観測のプロの現場でなくてはならない重要な役割を担っています。
ここ数年さまざまな仕事の現場で急速に活躍の場を広げてきたドローンは、扱いが手軽で導入コストも比較的割安なバッテリー方式が主流です。強大なトルクを瞬時に発生し、レスポンスに優れ、制御しやすいパワー特性というモーターの優位点も普及が進む理由になっています。
しかし、実際の運用ではバッテリーを交換しながら1日の飛行を行うことも多く、充電ができる環境・かかる時間も運用条件として考慮しなくてはいけません。つまり、より長い航続距離と航続時間を望むのであればバッテリーの容量を増やさなくてはならないのです。
そうした場合、バッテリーの大きさや重量も増えていき、機体全体も重くなっていくという別の課題が浮上してきます。バッテリーとモーターのみで飛行するドローンには、エネルギー源を増やすことが航続距離や時間、ペイロード(可搬量)が増えることに必ずしも比例しないというジレンマが存在しているのです。
そこで「いかに電源を得るか」が鍵となってくるのです。
バッテリーではなく、エンジンを電源に
近い将来に期待される、物流・インフラ点検・監視業務・災害支援などでドローンが活躍する社会の実現は、「より長く」「より遠くへ」そして「よりパワフルに」飛べる機体があることが前提になっています。ドローンが仕事や暮らしをきめ細かに支えるインフラとなるには1機でカバーするエリアとそこでの飛行頻度も考慮しなくてはなりません。
電源供給の効率を今よりも飛躍的に高めることが求められているのです。
そこでエンジンがもつ利点が浮上してきます。ガソリンとバッテリーを比較した場合、エネルギー密度の違いは歴然としています。エンジンを飛行のための「動力」ではなく「発電」だけに使うのであれば、燃焼効率が最大になる領域で定常回転することが可能になり、エネルギー密度の違いと燃費向上の掛け算によってバッテリーよりも「効率的な電源」となる可能性が出てくるからです。
ガソリン給油の方が充電よりも時間を要しないこと、携行缶で持ち運べば移動先でも供給できることもエンジンがもつ優位点です。今後ニーズが高まることが予測される山間部や過疎地域でのドローン運用や長距離や重量がかさむ物資運搬というシーンを考えれば、エンジンを電源として使う「シリーズハイブリッド」の優位性・可能性は無視できないという発想に至るのは、技術的には自然な帰結と言えるのです。
シリーズハイブリッドを提案する理由
ヤマハ発動機には軽量コンパクトで信頼性に優れたエンジンを開発する技術があります。長年にわたる産業用無人ヘリコプターのビジネスを通じて無人航空機の運用における知見とノウハウを培い、実際の運用に欠かせないメンテナンスの体制・ユーザー対応のネットワークも既に構築されています。
ドローンに限らず他の分野でもさまざまなモーターを使った製品の開発や制御に関する技術を持ち、ユーザーが実際の運用で向き合う課題を知っているがゆえに、新たなニーズへの気付きを得る機会にも恵まれています。
エンジンとモーターの両方で多くの技術と製品をもつ当社がエンジンを「動力」ではなく「電源供給ユニット」として使う「SHEV(シリーズハイブリッド)」で飛ぶドローンを提案する背景には、現実を知る強みと課題を解決に導く発想とそれを支える技術の裏付けがあるのです。
シリーズハイブリッドコア(ドローン用コンセプト)
諸元 | |
---|---|
エンジン定格出力 (発電電力) |
20.6kW (17.1kW) |
使用燃料 | レギュラーガソリン |
ユニット重量 | 約70kg |
供給電圧 | 300V |
連続飛行時間 | 最大 約4時間 |
ペイロード (燃料+積載物) |
最大 約25kg |
価格 | 未定 |
- ※
- 数値は開発段階のもの
- ※
- コンセプトユニットには発電エンジンユニット/バッテリー(補助動力)/インバーター/配線配管類を含む