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Vol. 7 メイド・イン・モーリタニア、国境を越えた師弟関係。

ヌアディブ - モーリタニア - 2014年5月28日

ヌアディブ - モーリタニア

モーリタニア北部の港町に完成したばかりの造船工場。ここでは人びとの大きな期待を背負って、地域の産業振興を担う新型漁船の造船が行われています。この新工場で造船の指導を行うのは、職人気質の熟練日本人技術者。時には厳しく、時には包み込むようなやさしさをもって、船づくりの難しさとそれを乗り越えた時の感動を伝えています。

漁船やプレジャーボートの船体に用いられる素材FRP(Fiber Reinforced Plastics)は、軽量かつ強度に優れ、精度の高い加工が可能な繊維強化プラスチックです。1960年に最初のモーターボート製品を発売して以来、ヤマハはすでに半世紀以上もFRP加工の研究を続けており、現在ではコア技術の一つとしてプールの製造などにも役立てられています。

FRP漁船製造の第一歩は日本から始まりました。それまで主流だった伝統的な木造船の機能や形状を残しながら、ヤマハはその加工技術を用いて耐久性の高いFRPに切り替えていったのです。日本の津々浦々で活躍をはじめたヤマハFRP製ボートは長い年月を経て鍛えられ、漁業従事者のパートナーとしての漁船や汎用性の高いワークボートの基本型を極めていきました。

日本の海で鍛え抜かれたFRP製ボートは、やがて船体を成形するための「型」と、それを使って加工する職人の「技」を伴って、技術援助の名のもとに世界に広がって行きました。現在では中東、南米、アジア、そしてアフリカなど合計14か国のボートビルダーがヤマハの「型」と「技」を受け継いで、漁船やワークボート、プレジャーボートなどの製造を行っています。1974年から始まったこうした技術援助の展開により、これまでに合計約7万8,000隻もの船が製造されています。

モーリタニア北部の港町、ヌアディブ―。2014年、この地にヤマハの技術援助による新たな造船工場が完成しました。ここで造られるのは、全長14mの漁船。その核となるのは、やはり日本から届けられた「型」と、デリケートなFRPの加工を実現する職人による「技」でした。

野崎常茂さんは、これまで世界各地で造船技術の伝承に力を尽くしてきたFRP加工のプロフェッショナル。新工場の建設・稼働にあたっては約230日間ヌアディブに滞在し、モーリタニア政府系企業のComeca社の技術者に対して日本品質・ヤマハ品質の技術の伝承に取り組みました。時折見せる指導の厳しさは、「(私が帰った後にも)彼らに自信と誇りを持って仕事をしてもらうため。そして造船や漁業の振興によって、モーリタニアの人びとの暮らしを豊かにしたいと思うからこそ」。

国境を越えた師弟関係が織りなす技術の架橋。近い将来、ヌアディブの港には100隻あまりの新造漁船が浮かび、水揚げされた水産物を囲んで人びとの笑い声が響いているはずです。

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