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Yamaha Journey Vol.08

ヤマハFZ1 FAZERに乗るオーストラリア人男性ライダー、クレイグ・マッカーシーの日本ツーリング体験談です。

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ライダーを駆り立てる道がある、それが日本だ

クレイグ・マッカーシー

FZ1 FAZER

#03 日本:雄大な富士に魅せられて
富士 ― 伊豆

走らずにはいられない場所がある。クレイグ・マッカーシー氏にとっての日本です。今回はオーストラリアから移り住み、この国でのツーリングに身を捧げてきた氏が愛するルート3つについて語ってもらいました。

雲の絨毯、どこまでも、どこまでも。

富士山五合目、静岡、日本

よく走った僕を、 絶景が迎えてくれた。

箱根ターンパイク、神奈川、日本

潮の匂いと、波の音がある。それだけでいい。

下田 田牛、静岡、日本

ずっと眺めていたら、穏やかな気持ちになった。

三国峠、静岡、日本

世界遺産になった美しい富士山をめざして

富士山を目にしながら、山梨県や伊豆半島をバイクで駆けめぐる。首都圏に住む僕にしたら気軽に足を伸ばせる大好きなアクティビティです。このエリアにはライダーを惹きつけるものがたくさんありますが、お目当てはやっぱり世界遺産になった富士山。いろんな場所、いろんなアングルから眺められて最高です。初めて富士を見たときには、その圧倒的な存在感はもちろんのこと、アングルによって色んな表情を見せることに驚きました。

富士山に向かうときは「海老名サービスエリア」をスタート地点にして「道志みち」に入ります。谷間を縫うように続くこの道は、富士山の眺望ポイントに恵まれていて、ライダーに大人気。道沿いでは一時駐車したバイクをしばしば見かけますが、持ち主は近辺で富士山を眺めているのですよね。路傍のバイクが優れた眺望ポイントを見つけるひとつの手がかり…、と思っていたら、単にお手洗いを探していただけという肩すかしもありますが(笑)。この道の途中にはたくさんのレストランがあるほか農産物の直売所や道の駅もあって、道すがら地元名産のほうとうを味わったり、豊かな自然が生んだ特産品を目にできるので楽しく走ることができます。

コーナーを曲がるたびに、富士は異なる顔をのぞかせる

道志みちや富士山周辺からすると南側に位置する「箱根ターンパイク」も大好きな道です。ここではさまざまな公道レースが開催されるほど、ライダーを魅了するコースで知られています。頂上地点にはライダーやドライバーが集う素敵なカフェがあって、そこからは芦ノ湖沿いに富士山を臨む絶景が迫ってきます。このカフェはバイクファンには世界的に有名ですので、いろんな場所からライダーが落ち合う場所にも打ってつけなのですよね。

そこからは伊豆スカイラインへ。これも国内外でよく知られた道のひとつです。高低差のある、このクネクネ道では、コーナーを曲がるたびに太平洋と富士山が豊かな表情をのぞかせます。全長36キロ。全篇を通じて、たくさんの魅力に満ちたスカイラインを南下する途中には、築150年、合掌造りの民家にあるレストランに寄って腹ごしらえ。ここで味わえるのは地元のジビエで、鹿、イノシシ、ウサギ、穴熊と変わったものばかり。いずれも絶品でした。ここには昔ながらの土間があるのですが、床には灰をまくことでバクテリアや虫が侵入するのを防いでいるのだそうです。その日、そのとき偶然集まった他のお客さんたちと、巨木から切り出した大きなテーブルを囲んだこともいい思い出で、一期一会の会話にも大いに花が咲きました。ここでは出会いだって味わいのうちです。

よく走った日の疲れは、露天風呂で吹き飛ばそう

さらに伊豆スカイラインを南下し、天城峠を越えると大滝温泉に到着。この界隈の温泉宿には、宿泊せずとも入浴できるところもあります。これはライダーにとっては嬉しいところ。泉質が異なるたくさんのお風呂を持つ宿もあって、なかには洞穴の中で楽しむ湯もあります。建物内のお風呂もありますが、ほとんどは露天風呂。広大なエリアに温泉が点在していたことが印象に残っています。この界隈を走っているときには、たくさんのワサビ田も目にしました。きっと伊豆内陸部のきれいな水が最高級のワサビを育むのでしょう。日本のワサビは西洋のワサビとは違って鼻からツーンと抜ける辛さが特徴的です。今となっては日本のワサビも世界的に知られてきましたが、練りワサビではなく本ワサビを味わえる場所はまだまだ限られていますし、私のような外国人にしたらワサビが岩清水のある場所に育つこと自体も驚きでした。思えばワサビがどんな植物なのか、想像したことすらありませんでしたしね。

大滝温泉エリアのすぐそばには、もうひとつ走っていて楽しいスポットがあります。七滝高架橋というループ橋です。これは緑豊かな森の中に、突如としてあらわれる巨大な人工物。首都高速や海岸道路ならいざしらず、森の中にあるなんてビックリですよね? 考えてみれば、そこに高低差があるから建っているのでしょうけど、はじめて目にしたときはこの大きなコントラストに驚かされました。

海も山も、どちらも欲ばりたいから伊豆へ

そのまま南下すると、いよいよ下田のビーチです。僕はここが関東一のビーチだと思います。サーフィンは楽しめるし、砂浜も美しいし、おまけに魚介類が旨い。夏場なら南伊豆町でゴージャスに咲き誇る、有名なヒマワリ畑も驚くほどの美しさ。初めて訪れたときと比べると、下田はいい意味で観光地化されてきました。今では地元の人たちは私のような外国人にも慣れていて、かつて以上に旅行者には居心地がいいのですよね。

下田からは、伊豆の西側へ。右側に山、左側に海、そして富士山に向かってひた走る大好きなコースです。ここには高低差もありますし、曲がりくねったコーナーもたくさんあります。道沿いには小さな町がたくさんあるのですが、住んでいるのは地元の人たちばかり。ファーストフード店やデパートといった現代的な風景とは、あまり縁のないこのエリアを気持ち良く走り抜けながら、土地に根ざした人々の暮らしぶりや仕事ぶりに触れる。僕はそういった風景を目にするのが大好き。そんなひとときを心ゆくまで愉しんだ後は、芦ノ湖スカイライン、箱根スカイラインを経て、このツーリングを締めくくります。

かけがえのない経験を、バイクとともに

僕はやっぱりバイクで旅をするのが好き。長距離ライダーなら誰だってそうだと思うのですが、ツーリングをスタートして数日が経つとバイクの上がホーム、つまり「帰る場所」のように感じはじめます。同時に感じるのは、クルマが「移動する部屋」で自転車が「走る道具」だとしたら、僕にとってバイクは「馬」であるということ。ガソリンというエサを与えなければ走りませんし、オイル交換をはじめとしたケアも不可欠ですが、またがればいろんな場所へと連れて行ってくれる良き相棒です。

キャンプ場などに滞在する場合、クルマだと少し離れたところに駐車しなければならないことも多いのですが、バイクだと寝泊まりする場所のすぐそばに置けますので、いつも一緒にいられます。そばに馬をつなぎとめておく感覚にも近くて、そうなると愛着もひと際です。雨の中を走っているときも同じで、単なる乗り物ではなく、相棒である馬とともに自分自身も雨に降られる感覚。僕にとってバイクはかけがえのない存在で、乗れば乗るほど好きになります。バイクで経験したことは、バイク自体の経験にもなっていて、ともに旅をしている気分です。この感覚はライダー特有のものでしょう。それが僕にとっては大切な意味を持つことなのですよね。


クレイグ・マッカーシー

オーストラリア出身。曲がりくねった山道、美しい景色。バイカーを取りまく日本の環境に魅了され、これまでの11年間で47都道府県のうち46の地域を体験。長期ツーリングは年に2回。数日間のツーリングは年間を通じてたびたび。2007年からの愛機はヤマハFZ1 FAZER。本州の最北端、最南端、最東端、最西端のすべてをともに巡り、サーキットレースも、ドラッグレースも、台風の日も、雪の日も、ともに走ってきた。これまでの冒険の軌跡は「Touge Express」に。ここで毎年恒例となっているツーリングイベント「Coast to Coast Twistybutt」や「Tokyo Toy Run」のルートマスター。ツーリングのリーダーを務めることもある。

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