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「ナノ膜コーティング」とシャボン玉の関係

ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。

「MT-09」や「MT-09 TRACER」のマフラー(#1)の輝きには独特な深みがありますが、これはヤマハ独自の「SixONy(シクソニー)」ナノ膜コーティング技術の織り込みによるものです。ナノ膜と呼ぶとおり、その厚さは20~150ナノメートル。概ね1万分の1ミリという超極薄ですが、耐熱性・耐食性に優れ、宝石のような輝きを放ちます。しかも製造プロセスで分子配分を調整すれば、深みのある色々な色彩を表現できる技術です。

バイクのマフラーには主にステンレスが使われ、一般に表面は防錆処理が施されています。しかし空気中で400℃以上の高温にさらされると酸化が促進して変色、また錆を誘発することもあります。カバーをして変色を見えなくしたり、温度を下げるためにマフラーを多重構造にする実例はありますが、重量的には芳しいことではありません。シンプルで輝きのあるマフラーは、バイクファンにとっての長年の夢。そこで私たちは、耐熱性に優れかつ熱変色のない綺麗なマフラーを求め、新しいハードルへ挑みました。
水晶、ルビー、サファイア、エメラルドなど宝石の構成物質を解析する一方で、耐食性・耐熱性に優れたセラミックスに可能性を求めたのです。セラミックスは通常は結晶構造をもちますが、溶かした状態から急激に冷やすと結晶にならずに固まり、”アモルファス”と呼ぶ非均衡な状態になります。アモルファス状態は、例えばガラスもそうであるように光を通し、熱を溜めにくい。この特性に着眼点をおきました。
そしてこの”アモルファスのセラミックス”をマフラーの表面に堆積する加工プログラムを、原子構造解析と検証を経て確立。加工室にマフラーなどの母材をおき、真空のプラズマ状態とすることでシリコン(ケイ素)、酸素、窒素のイオンが結びつきやすくなり、母材の表面に”アモルファスのセラミックス”の極薄膜を形成、優れた耐熱、耐食、耐摩耗性を可能としたのです。しかも無色透明から多彩な色の表現が可能なのです。
光には波長があり、山と山が重なると波長は倍に、谷と山が重なると波は相殺されます。この2つの光の重なりが”干渉色”です。太陽光や可視光はこのナノ膜の表面で反射し、膜と母材との間で再び反射した光と重なりあって干渉色となります。シャボン玉は風に吹かれて石鹸水の膜厚さが変わることにより、色々な色を放つことで虹色に見えますが、それと同じ原理です(#2)。ナノ膜コーティング技術「SixONy」は、膜厚を調整したり、酸素と窒素の最適比率で光の屈折をコントロールしながら、透明膜や多彩な発色を可能としているのです。

2007年に「FZ1/FZ1 FAZER」で実用化して以来(#3)、「SR400」(※2010年型以降)、「MT-09」などに採用されているナノ膜コーティングですが、その技術はキッチン用品売り場でも目にすることができます。2015年9月には新宿の大手デパートの売り場に、ゴールド発色のカクテルシェーカーが登場(#4)、「ナノ膜コーティング」商品として紹介されました。その他、食器・キッチン関係から自動車用外装パーツまで、「SixONy」ナノ膜コーティング技術はさまざまな発展性を秘めているのです。

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