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アルミ研究から生まれたDiASilシリンダー

ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。

従来型の鉄スリーブ採用シリンダー(左)とダイアジルシリンダー。オールアルミ製なので軽量で放熱性に優れる

アルミニウムの比重は2.7。たとえば鉄(7.8)と比較すると約3分の1の軽さです。また、加工やリサイクルがしやすく、錆びにも強いといった利点があることから、アルミはモーターサイクルや船外機の部品にも多用される素材です。このアルミの可能性にヤマハは早くから着目し、さまざまな研究を重ねてきました。
高温で溶かしたアルミの溶湯を金型の中に流し込む鋳造には、重力鋳造と高圧ダイキャストという二つの方法があります。重力鋳造が文字通り重力を使って溶湯を流し込むのに対し、高圧ダイキャストは圧力をかけて高速で流し込む方法です。ヤマハは1960年代からこの方法を用いてきましたが、一方で高圧ダイキャストは気泡が入りやすく強度の低下を招く可能性があることや、薄く大きな部品の成形には不向きという側面がありました。
これらの問題を解決したのが、2002年に実用化した「CF(コントロール・フィリング)アルミダイキャスト」技術です。溶湯が固まる際の温度を制御するとともに、気泡が組織に入り込まないよう金型内を真空に近い状態にし(50hPa以下)、流し込む速度を高い精度で調整する――。こうした独自のレシピを完成させることにより、鋳物内の気泡ガス混入量はそれまでと較べて80%減り、含有気泡をほぼなくすことに成功したのです。CFアルミダイキャスト技術の実用化は、薄く高強度で大きな部品、複雑な曲面をもつ部品、また部分ごとに肉厚を変えた部品などの成形を可能とし、その用途を大きく広げました。2003年の「YZF-R6」のリアアームを皮切りに、現在ではさまざまなモーターサイクルの主要部品にもCFアルミダイキャストによる部品が多数用いられています。
CFアルミダイキャスト技術は、エンジンの要とも言えるシリンダーにも革命をもたらしました。従来のシリンダーにはピストンとの摩擦を避ける鉄製のスリーブが圧入されていましたが、この構造は、熱を外に逃しにくいという弱点がありました。また、鉄スリーブの代わりにアルミライナーやメッキ処理をする方法では、製造行程の複雑化やコストアップの要因になっていたのです。
こうした中、2004年、ヤマハはダイキャスト製造によるオールアルミ製の「DiASil(ダイアジル)シリンダー」の量産化に世界で初めて成功しました。それまで技術的にハードルが高いとされていたシリコンを20%含有させたアルミ材を使い、アルミの原材料、製造技術、環境対応をバランスさせ、当時の最高レベルの冷却性能とコストダウンを同時に実現。真空ダイキャストとシリコンを20%含有させたアルミでスタートしたDiASilシリンダーは、以後進化を遂げながら現在は250ccスクーター「Majesty」のほか、ASEAN市場向けのコミューターや「YZF-R25」(#1、#2)「YZF-R3」「MT-25」(#3)などに用いられています。

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