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LMWが描く近未来

ヤマハ発動機の技術ストーリーをご紹介します。

2014年の「TRICITY 125」発売により、多くの人が触れられるようになったLMWテクノロジー。その翌年の東京モーターショーで、スポーツ走行におけるコーナリングを再定義する「Cornering Master(コーナリングの達人)」をコンセプトに、LMWテクノロジーを導入したスポーツモビリティ「MWT-9(試作車)」(#1)を参考出品しました。そして2016年9月には、走りと燃費性能を両立する155ccの“BLUE CORE”エンジンや新設計フレームなどを採用した「TRICITY 155」(#2)を欧州から順に発売。高速道路の走行も可能なので、更にライダーにとっての選択肢が拡がります。

※LMW=Leaning Multi Wheel。モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称、商標登録第5646157号。

LMWテクノロジーの歩み
1976年 前二輪ビークルに関する数々の特許を出願
2007年 東京モーターショーで四輪コンセプトモデル「Tesseract」を展示
2008年 「Tesseract」を具現化する試作車「OR2T」で研究開発を継続
リーマンショックの影響によりLMWテクノロジーの研究開発を中止
2010年 次世代モビリティを検討する期間限定プロジェクトを実施
LMWテクノロジーを使った前二輪ビークルの製品化着手を決定
2011年 LMW市販モデルの開発プロジェクトを本格スタート
2014年 「TRICITY 125」を4月にタイ、9月に日本で販売開始
2015年 東京モーターショーで「MWT-9(試作車)」を参考出品
4月に日本市場に「TRICITY 125」のABS仕様を追加
2016年 9月の欧州を皮切りに世界各国で「トリシティ155」を販売

《 LMW開発者インタビュー 》産業用ロボット開発からLMW開発の道へ

海江田隆:PF車両開発統括部 LMW開発部長
高野和久:PF車両開発統括部 LMW開発部グループリーダー(#3)

「入社してから20年以上、産業用ロボットの開発に携わってきたことから、LMWを担当するというのは、事実上の転職みたいなものでした。それまで築き上げたノウハウや人脈が、ほとんど使えない状態での出発でした」

LMWの開発当初から一貫して、ビジネス戦略を取りまとめ、開発部長を務めた海江田隆は、2011年の市販プロジェクトスタート時をこう振り返ります。

“オートバイのF1”MotoGPマシン制作一筋の高野が初の市販車開発に挑戦

「世界一速いバイクをつくるという夢は、ファクトリーレーサーの開発に携わり、MotoGPマシンの車体開発責任者を担当することで達成できたので、そろそろ次のステップに進むべきかも・・・・・・。というときに、ちょうどいただいた話でした」
「TRICITY 125」のプロジェクトリーダーを務めた高野和久にとっても、前二輪どころか市販バイクそのものが“未知の世界”だったことに変わりはありません。まとめ役として、市販二輪車開発に精通しているグループリーダーの久保裕も加わったものの、初期の専任開発メンバーはわずか3名。異色かつコンパクトなチーム編成により、LMWの開発ははじまりました。
しかし、コアメンバーを選んだ三輪邦彦は、自身もレース部門にいたことから、高野がアイディアマンで、機構開発に関して抜群の能力を持っていることを知っていました。 「ゼロからつくらないといけない状態でしたから、最初の1年はかなりの速度でトライ&エラーを繰り返しました。ずっと携わっていた世界最高峰二輪レースの現場でも、短時間であれほどトライできたことはなかったかもしれません」と高野。しかしその様子を見ていた海江田は、「高野はクリアなイメージの持ち主。大筋で迷いがなく、トライ&エラーと言うわりにはスムーズな開発でした」と言います。
「走らせられる機会が限られるレーサーでは、完成した段階でかなりのレベルでないと勝負になりませんから・・・・・・。そういう点で評価するなら、『TRICITY 125』の開発はたしかに順調だったかもしれません。片持ちテレスコピック+パラレログラムリンクという仕様に関して、自分なりの設定値が十分に成立した状態だったので、『これなら走りはいいはず』と自信を持っていました」

「予測どおり、安定して走る。これが乗り物で一番大切です」

実際、「TRICITY 125」の試作車は初期の段階からある一定レベルの走行性能をクリアしていて、安定感のある乗り味を持っていました。
「意外かもしれませんが、じつはレーサーでも、もっとも重要なのは『安定して走れること』なんです。安定性が高いレベルにあって初めて、優れた運動性能を追求できます。ライダーの予測を裏切らない走り。これが一番大切なんです。『TRICITY 125』では、リーンしながら旋回するというバイクの醍醐味を、多くの人に味わってもらえることを目指して設計しましたが、そこにはコミューターとは真逆の存在でもあるレーサーの開発で培った経験も活きています」
斬新な機構を持つ最先端のLMWビークルには、高野が築いてきたバイクという乗り物に対する確固たる信念が根づいているのです。

「LMWには無限の可能性があると思います」

しかしそのLMWテクノロジーは、まだその第一歩を踏みだしたにすぎません。海江田は、将来の夢をこのように語ります。
「2014年に第一弾として市場に送り込んだ『TRICITY』シリーズは、あくまでもスタンダードなシティコミューターとして、これまでバイクに乗ることを諦めていた方々でも気軽に乗ることができるよう、今後も熟成を続けていきます。
一方でLMWテクノロジーとしては、これからが本当の勝負。2015年東京モーターショーに参考出品したMWT-9は、おかげさまで非常に大きな反響をいただきましたが、あのようなスポーツ系に限らず、LMWの活用にはすでにさまざまなアイディアがあります。リーンする乗り物の裾野を広げ、その楽しさをひとりでも多くの人に味わってもらえるよう、僕らの夢をひとつずつカタチにしていきたいと思います」
LMWの開発者たちは、LMWが持つ無限の可能性に、今日もワクワクし続けています。

めざせ、ころばないバイク!

LMWテクノロジーが究極的なゴールとしてめざすのは、「ころばないバイク」です。バイクはリーンすることで爽快感を得る乗り物である以上、「ころばないバイク」の実現はたやすいことではありません。
そしてその夢に近づくためには、刻々と変化する走行環境やライダーごとに異なるライディングスキルを、マシンがどこまでアシストできるかというのが、重要だと考えています。
これは、「人機一体感の中に生まれる悦びや興奮、快感を技術的に定量化して官能性能として織り込む」ことを意味する、ヤマハ開発思想の「人機官能」にもつながります。
LMWテクノロジーは、新しい挑戦であり、もうひとつの進化の道なのです。

関連リンク
Yamaha LMWs: Forty Years in the Making
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