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Yamaha Journey Vol.18

ヤマハ XTZ125に乗る日本人男性ライダー、堀 むあんのミャンマーのツーリング体験談です。

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まだ見ぬ景色を求めて

堀 むあん

XTZ125

#01 ヤンゴン~タウンジー:異世界を駆け抜ける興奮
アジア最後のフロンティアに挑む

ヤンゴン ー タウンジー

謎のベールに包まれた国ミャンマーを日本人ライダーの堀むあん(無庵)が縦横無尽に疾走する。また見ぬ景色を求めてXTZ125と共に旅立った先に待ち受けていたのは、大自然と古の建造物が織りなす幻想的な異世界だった・・・。

ミャンマー第2の都市マンダレーはバイクの中心地。

マンダレー

イギリス植民地時代に建てられた洋館が残るピンウーリンは、ミャンマーらしくない街だ。

ピンウーリン

無数の仏塔が林立するバガンの上を、日の出とともに観光用の気球が飛ぶ。

バガン

タウンジーの夜空に向けて巨大な熱気球がふわりと上がる。

タウンジー

アジア最後のフロンティア

ラオス、タイ、中国、バングラデシュ、インドといった多くの国々と接していながら、近年まで半鎖国状態にあったミャンマー。これまでアジアの国々をツーリングしてきたが、「アジア最後のフロンティア」として神秘的な魅力を放つミャンマーには思いを馳せ続けてきた。熱帯気候の中、バイクに乗って風を肌で感じながら、謎のベールに包まれたミャンマーの景色に出会う。まだ見ぬ世界がある-旅に出る理由はそれだけで十分だった。ミャンマーの気候は暑季、雨季、乾季の3つの季節に分かれている。11月から2月までの乾季は、気温が落ち着き、雨が降らないため、ツーリングには絶好のシーズンだ。この乾季と、5月までの夏季にミャンマー国内を巡り、これまで誰も踏み入れたことのないエリアを制覇するのが今回のツーリングの目的だ。

バイク選び、テスト走行をへて、いよいよ出発へ!

2006年まで首都だった最大都市のヤンゴンでは中心部へのバイクの乗り入れが禁止されている。そのためか、バイク屋はミャンマー中部に位置する第2の都市マンダレーに集まっている。ミャンマーには国内移動の自由が制限されている地域があるほか、高額なバイクを購入して旅をするようなツーリング文化が根付いていない。
大型バイクを見かけることはなく、高速道路も整備されていない状況だ。ましてやレンタルバイクという概念さえないに等しかった。そこで今回のツーリングのパートナーとして現地購入することにしたのが、軽量なボディで扱いやすいオフロードのXTZ125だった。中古とはいえ、黒色のボディに疾走感あふれる赤色のペイントが施されたバイクに頼もしさを覚えた。何といっても足つきがいい。頻繁に停発車を繰り返すことになる細い路地や悪路の多いミャンマーでは、足つきの良さによる安定性が欠かせない。はやる気持ちを抑えながら、まずはテスト走行を兼ね、マンダレーから70キロ東に位置するピンウーリンを目指す。植民地時代にミャンマーの暑さに耐えかねたイギリス人が避暑地として開拓したこの街には、今でも洒落た別荘が林間に並んでいて、まるで軽井沢の街並みを思わせる。みずみずしい緑が広がる高原。眼前に続く道の遠方では、鮮烈に生い茂った緑の地平線が大きく膨らんだ白雲とぶつかりあう。そのコントラストが空をより一層、天高く伸びやかに演出する。のどかな空気の中を走行すると心地よい薫風が頬をなでる。ミャンマーの路面状態はお世辞にも良好とはいえず、わだちやひび割れは日常茶飯事だが、小回りの利くXTZ125のコンパクトな車体は見事に軽快な走りを見せてくれた。さあ、これで準備は万全。小気味良いエンジン音に呼応するかのように、待ち受ける旅へ向けて胸が高鳴る。

仏塔と大地が織りなす異世界

2016年11月。テスト走行を終え、いよいよツーリングの旅が始まる。南西に向かって目指すはバガン。見渡す限りに乾燥した赤土が広がり、小さな藪と藪の間に数千もの仏塔が林立する。仏塔が次々と現れては視界を颯爽と過ぎ去っていく。まるで時空を超えて異次元に迷い込んだかのような感覚になる。寺院やパゴダの多くはレンガで作られており、1000年以上前に建造されたものも多く残っている。「さて、どの道を行こうか・・・」。ここでは道に迷うほど、思いがけない仏塔に遭遇する楽しさがある。偶然に身を任せるのもツーリングの醍醐味だということを再認識させてくれる。XTZ125のトレールタイヤが駆け抜けるたびに、大地が訪問者を歓迎するかのように高々と土埃を舞い上げる。どこか懐かしい匂いがにわかに広がる。これが地球の芳香なのだ。古の迷宮をひとしきり堪能したあと、バガンで一夜を過ごすことにした。次の日の早朝、まだ暗いうちに遺跡群へと再び迷い込む。熱帯気候とはいえ、この時期のミャンマーは最低気温が20℃を下回ることもある。夜の間に冷やされた空気が肌をつつみこみ、澄み渡った草木の香りが漂う。やがて東の空が赤く染まり、南国の強烈な日差しが閃光のように放たれた瞬間、日の出を空から見ようと観光客を乗せた熱気球が地平線から次々と飛び立った。凛とした雰囲気の漂う大地の夜明けにたたずむ仏塔と熱気球。得も言われぬ興奮が背筋をつたわる。この不思議な光景は世界でもここだけしか見られないだろう。来たかいがあった。

熱気球の幻想的な光景と冷めやらぬ興奮

バガンをあとにし、東へ約340kmの場所に位置するシャン州の州都タウンジーに急ぐ。この街で毎年10月末から11月ごろにミャンマー最大の熱気球祭りが行われるからだ。淡い青空の下、あたり一面にのどかな田園風景が広がる。シャン州に入ると地形がゆるやかに起伏を始めた。山岳地帯だ。遥かなる尾根の向こう側から雲が姿をのぞかせる。上り勾配が次第にきつくなっていき、山間の地形にしたがって細い道が左右にうねりだす。カーブに差し掛かるたびにXTZ125の小回りの良さを実感しつつ、上昇を続けていると、建物が徐々に視界へ飛び込んできた。悠々とした道路が広がる眼前の光景に街の気配の感じずにはいられない。さあ、タウンジーに到着だ。早速、熱気球祭りの会場へ向かうと、すでにパンダや馬などさまざまな形をした小さな気球が空へと上がっていた。しかし、これは単なる前座に過ぎなかった。日が暮れてあたりが暗くなった夜7時。熱帯に位置するとはいえ、11月のミャンマーで朝夕を過ごすときには長袖が必要になる。しかし、この日は大勢の人で埋め尽くされた会場に昼間とは違う沸々とした熱気が漂っていた。会場の真ん中に用意されていたのはひときわ大きな熱気球。火のついた巨大なたいまつが入れられると、みるみるうちに膨らんでいく。地上に抑えつけられたまま、今にも張り裂けそうなほど膨れ上がり、もうこれ以上は無理だという限界に達したときに解き放たれる。ゆっくりと夜空に向かい飛び立っていく。気球のデザインは実にさまざま。中には無数の花火を吊るして、上空から地上に向かって発射する気球すらあった。その花火から逃げ惑う観客の表情は活き活きとしていてなんだか楽しそうだ。約1時間に1個のペースで熱気球が空へと舞い上がり、日付が変わっても祭りは続く。興奮しすぎて疲れたころには、最終バスの時間はとっくに過ぎていた。バイクで帰路についたはいいが、今夜はきっと宿に着いてもすぐには寝付けないだろう。引き続き夜空へと解き放たれる熱気球を眺めながら、火照った意識の中、そう感じていた。11月の冷たい夜風の中を駆け抜けるXTZ125のエンジンは、まるでその興奮を代弁しているかのようだ。

数日後、街を離れるときがやってきた。タウンジーから南に下っていくとカヤー州の州都ロイコーに通じる。この州は付近に首長族が暮らしていることで知られている。この道は2015年まで外国人が陸路で移動することは禁止されていたそうだ。そんな話を耳にしてしまうと、なおさら行ってみたくなるのがライダーの性。インレー湖周辺を経由して大回りするルートを選んだ。湖畔を横目に走行したのは50キロ以上も続くダートコース。幹線道路から外れているのですれ違う車は極端に少ない。舗装されていない路面でこそ進化を発揮するのがオフロードだ。容赦なく起伏する1.5車線にも満たないこの道では、対向車のたびに路肩へと退避することになったが、XTZ125の足つきの良さと安定したバランスに助けられ、悪路も難なく走破することができた。解禁された道を走り抜けたあとには、一体どんな世界が待ち受けているのだろうか。延々と続く道の先を見つめながら、期待に胸を膨らませていた。


堀 むあん(無庵)

30年以上にわたりアジアを撮影してきた写真家。学生時代から国内をバイクで撮影旅行してきたが、アジア各国でもこのスタイルでツーリングを楽しもうと計画。1か国目にミャンマーを選び、全管区全州を7か月間にわたり走破した。

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